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第12話 最後の試練


サルガタナスは、金の杖を取り出し、振った。


振ると、軌跡から、赤い布が現れた。


バサバサと、その赤い布を左右に振る。


ソレを見たミノタウロスは、みるみる目が血走っていく。


傷だらけの体から、赤い液体が吹き出す。


瞬間、超速で突撃する。一直線に。


サルガタナスの体ではなく、その赤い布に。


「闘牛?」


「そう、さっき、赤い花びらが舞ってたでしょう?それで、きっと、行けると思ったのよ。」


ひらりと赤い布をひるがえし、ミノタウロスの突進を躱す。


再びミノタウロスは突進してくる。


サルガタナスは赤い布を振り、挑発をする。


ミノタウロスは理性を失ったように、再びまっすぐ布に向かって突撃。


サルガタナスはそれをかわす。


すると、ミノタウロスは、そのまま溝に落ちていった。


「クソーーーーーーーー!」


というミノタウロスの叫びが下から響く。


・・・

・・・

・・・


しばらくして、ドンと言う音がした。


相当深いのであろう。


ものすごい長い時間落下していた。


「はぁ・・・終わったな・・・」


サルガタナスがそう言うと、私は気づくと地面に居た。


上を見上げると、サルガタナス(大)が黒い霧となって消えていく。


その中から、すとん、とサルガタナス(小)が降りてきた。


外見上は傷一つ付いていないが、


「疲れた。」


そう一言だけ漏らした。


四辺を囲う溝、その一辺から、四角い橋が伸びていく。どうやら試練を突破した扱いのようだ。


「さあ、行くわよ。お宝が待ってるわ。」


私たちは、体中の痛みで、奇妙な歩き方で、橋へと向かった。



あと少しで、橋に、という所で、違和感を感じた。


・・・なにか、揺れてる?


地震・・・?いや、まさか。


私はサルガタナスの方を見る。


サルガタナスは答える。


「ミノタウロスが、地の底で、この床を破壊しようとしてるな。」


揺れが次第に大きくなっていく、左右から、上下に。


「走るわよ!」


橋に向かって、走る。


地面は四角の柱状になっており、下の方で削り続ければ、横に倒れるかもしれない。


倒れたとして、壁にぶつかり、斜めになるだけかも知れないが、上に乗ってる私たちは下に落とされてしまう。


橋を渡れば、少なくともしばらくは大丈夫だろう。


私は先に橋をわたった。


溝を超えた橋の先は、階段になっており、少し登ったところに、なにかがあった。下からでは良く見えない。


振り向くとサルガタナスが走ってくる。外見上に傷は無いが、やはり疲労しているのか、力のない走りだ。


「早く!」


「ああ。」


サルガタナスが橋を渡る。


揺れが激しくなり、橋にもヒビが入っている。


あと一歩で橋をわたる。


という所で、サルガタナスの体が、ぐらりと沈んだ。


橋が割れたのだ。


私は手を伸ばした。


「サルガタナス!」


サルガタナスも手を伸ばした。


しかし、サルガタナスは叫んだ。


「やめろ!触るな!!」


サルガタナスは、咄嗟に、右手を伸ばしてしまった。


触れたもの全てを歪める呪われた手。


伸ばした右手を引っ込める。もちろんそれでは落ちていくだけだ。


しかし、そのほうがマシだと思った。


サルガタナスの見る景色は、一瞬で、橋が、壁がせり上がっていく。


落ちていく。


その時、ガクンと右腕に衝撃が走る。


景色は止まる。


サルガタナスが上を見ると、クロードルカが、右手を、両手で掴んでいる。


「やめろ!離せ!」


「そんな事言う暇があったら、登ってきてよ・・・!」


サルガタナスは、左手で崩れた橋の突起を掴み、


崩れた崖の上に登った。


そして、クロードルカが倒れているのを見た。


すでに両腕が真っ黒になっており、声も出さない。息をしているかも分からない。


表情も虚ろで、何も作動していない機械のようだった。


サルガタナスは後悔した。自分自身の呪いを。右手を伸ばしてしまったことを。


サルガタナスは、今はそれを考えている場合じゃない、と気づいた。


クロードルカを左手で掴み、肩に担ぎ、階段を登る。


助けるんだ。この人間の女を。


ボロボロの体に鞭打ち、一気に階段を駆け上がる。


頂上に到達すると、そこには一振りの剣が置いてあった。


真っ白な刃の剣。石灰岩のような真っ白い光沢のない刃。


そこにダイダロスが現れる。


「お前は試練を超えた。この剣に相応しい存在と認める。受け取るが良い。


この剣は、一度しか振るえぬ。浄化出来るのは一度だけだ。良く考えて使うが良い。」


それを告げると、ダイダロスは消えた。


言ってる意味はわかった。


この女を救うのであれば、自分自身の呪いは消えない。というのだ。


だが、サルガタナスはどうするか、もう決めていた。


それは、これまでの試練で、クロードルカから学んだことだった。


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