第45話 空想上のスーサイド
蒼汰達が病院に突入するよりも一時間ほど前。
例によってシロームは、空にしゃがみ込んでいた。
クロちゃんが降りていってから、どれくらいの時間が経ったのだろう。
ずっとぼんやりしていたから、はっきりとは分からないけど、何日かは経った気がする。
クロちゃんが居ないと、時間の経過がよく分からない。
あれからクロちゃんは一度も空に戻って来てない。
クロちゃんは『時間を止める』って言ってた。
なにがどうなってクロちゃんにそう決意させたのか、シロには分からない。
空に引きこもっているシロには、分からない。
それは分かる。
なんで?
どうして?
理由は?
誰の為に?
本当に、それでいいの?
いいわけないよ。
シロとクロちゃんはずっと一緒だったのに、離ればなれになって、いいわけがない。
もうシロは、必要ないってこと?
そんなの、嘘だ。
これまでそれこそ、何千万年なんてものじゃない月日を一切離れることなく過ごしてきたんだ。
何億、何兆、あるいはそれ以上。
この青い惑星が生まれるよりも遥か昔から、シロとクロちゃんは一緒だった。
それが、こんな呆気なく。
そんなの。
「嘘だぁぁぁぁぁぁあああっ!」
久しぶりに聞いた気がする自分の声は、酷いものだった。
ああ、自問自答を繰り返す。
嫌だ、嫌だ嫌だ。
嫌なのに、クロちゃんを追っていけない自分が一番嫌だ。
ねぇ、シロは何?
《空間》の核神。
いわゆる神様。
それがなんだ、この様は。
空に引きこもって、しゃがみ込んで。
泣いて叫んで、苦しいのに、苦しむだけで何も解決しようとしない。
これならきっと、人間の方が余程崇高だろうな。
はーあ、情けない情けない。
もういいや、死のう。
って、生きてる人間なら思っちゃうのかもしれない。
でもシロは死ねない。
生きてないから。
在るだけだから
じゃあさ、ならいっそ、ね。
死ぬ気で、って言葉があるじゃん。
死ねないけど、死ぬ気でさ。
飛び降りてみよう。
“空”から。
そこで《空間》の核神・シロームは思考を止めた。
目を閉じる。
そして少しばかり足の爪先に力を込めると。
なんの躊躇いもなく、ただ地球の引力に任せて。
落下した。




