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矛盾だらけのアイソドシンク ―The World of Paradox―  作者: 天崎澄
第二章 時間乱流編
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第41話 非存在証明

 てんやわんやの夜も明けて、日曜日。


 学生にとって休日の今日、蒼汰は二体の核神を伴って外出していた。


 というのも、昨日蒼汰が見舞われた現象の実地調査を行う為に、その現場に訪れたのだ、が。



「ここで世界が静止した、というのですか?」



 昨日とは服装の違うレクシアが、隣に立つ蒼汰に問う。

 ちなみに、核神(コンセプター)として行使権限(ロールアビリティ)を使うとき以外、普通の人間にも見えてしまうレクシアは、普通の人間の洋服を着ている。

 今日はところどころフリルの装飾が施された純白のロングワンピースで、どうやら清廉なお嬢様風の衣服を好むらしい。



「そう、ここだ」



「今日は止まっていないようですね」



 一方、風に揺れる髪にそう呟いたアイソドシンクはというと、いつも通りの材質不明の外装を纏っていた。



「やっぱり、昨日の女の子が止めてたのかな……。だとしたら、探すしかないのか。大変そうだな……」



 何処にいるとも知れない誰かを探すという、途方もないことを今からするのかと思うと、蒼汰の肩は無意識にその位置を下げていた。

 しかしそんな蒼汰に、冷静なトーンでレクシアが告げる。



「いえ、その少女は干渉者(エフェクター)でしょうから、でしたらそんなに難しくはないと思います」



「ん、どういうこと?」



「干渉者の傍には必ず核神が居るのですから、感覚領域(フィーリングフィールド)でその核神を探せばいいんですよ」



「いや、簡単に言うけど……その女の子が本当に干渉者かは分からないし……」



「いえ、絶対に干渉者です」



 力強くそう言い切るレクシアに対し、蒼汰は怪訝な表情になる。

 それを見たレクシアは、



「世界を停止せしめる人間、そうでなくとも停止している世界で動ける人間となれば、それはもう干渉者でしかあり得ません」



 蒼汰の内心の疑問にそう答えた。



「なんで、そんなこと言い切れるんだ?」



「なんでもなにも、それが出来る干渉者以外の人間の存在を、他でもない私が許可していないからです」


 これほど説得力のある言葉を、蒼汰は生まれて初めて聞いたのだった。

 確かに《存在》そのものであるレクシアが把握していない存在など、この世には居ないはずだ。


「理解いただけたようですね。それでは、早速感覚領域を展開します」



 蒼汰とアイソドシンクが黙って見守る中で、レクシアは静かに目を閉じた。

 すると突如緩やかな風がレクシアの周囲に巻き起こり、その艶やかな黒髪を揺らした。


 蒼汰の目には何も見えないが、レクシアの感覚としては半径五キロの空間にレーダーを働かせている。

 そしてそのレーダーは、間近のアイソドシンクに真っ先に反応し、それから少し置いて――。



「見つけました。北の方角に二体、核神の反応があります」



 その言葉と共に、レクシアを取り巻く風はピタリと収まった。



「それでは、行きましょう」



 蒼汰とアイソドシンクは頷くと、真っ先に駆け出したレクシアの後に続いていく。


 その時丁度、ポツリポツリと、雨粒が道路を濡らし始めた――。




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