第41話 非存在証明
てんやわんやの夜も明けて、日曜日。
学生にとって休日の今日、蒼汰は二体の核神を伴って外出していた。
というのも、昨日蒼汰が見舞われた現象の実地調査を行う為に、その現場に訪れたのだ、が。
「ここで世界が静止した、というのですか?」
昨日とは服装の違うレクシアが、隣に立つ蒼汰に問う。
ちなみに、核神として行使権限を使うとき以外、普通の人間にも見えてしまうレクシアは、普通の人間の洋服を着ている。
今日はところどころフリルの装飾が施された純白のロングワンピースで、どうやら清廉なお嬢様風の衣服を好むらしい。
「そう、ここだ」
「今日は止まっていないようですね」
一方、風に揺れる髪にそう呟いたアイソドシンクはというと、いつも通りの材質不明の外装を纏っていた。
「やっぱり、昨日の女の子が止めてたのかな……。だとしたら、探すしかないのか。大変そうだな……」
何処にいるとも知れない誰かを探すという、途方もないことを今からするのかと思うと、蒼汰の肩は無意識にその位置を下げていた。
しかしそんな蒼汰に、冷静なトーンでレクシアが告げる。
「いえ、その少女は干渉者でしょうから、でしたらそんなに難しくはないと思います」
「ん、どういうこと?」
「干渉者の傍には必ず核神が居るのですから、感覚領域でその核神を探せばいいんですよ」
「いや、簡単に言うけど……その女の子が本当に干渉者かは分からないし……」
「いえ、絶対に干渉者です」
力強くそう言い切るレクシアに対し、蒼汰は怪訝な表情になる。
それを見たレクシアは、
「世界を停止せしめる人間、そうでなくとも停止している世界で動ける人間となれば、それはもう干渉者でしかあり得ません」
蒼汰の内心の疑問にそう答えた。
「なんで、そんなこと言い切れるんだ?」
「なんでもなにも、それが出来る干渉者以外の人間の存在を、他でもない私が許可していないからです」
これほど説得力のある言葉を、蒼汰は生まれて初めて聞いたのだった。
確かに《存在》そのものであるレクシアが把握していない存在など、この世には居ないはずだ。
「理解いただけたようですね。それでは、早速感覚領域を展開します」
蒼汰とアイソドシンクが黙って見守る中で、レクシアは静かに目を閉じた。
すると突如緩やかな風がレクシアの周囲に巻き起こり、その艶やかな黒髪を揺らした。
蒼汰の目には何も見えないが、レクシアの感覚としては半径五キロの空間にレーダーを働かせている。
そしてそのレーダーは、間近のアイソドシンクに真っ先に反応し、それから少し置いて――。
「見つけました。北の方角に二体、核神の反応があります」
その言葉と共に、レクシアを取り巻く風はピタリと収まった。
「それでは、行きましょう」
蒼汰とアイソドシンクは頷くと、真っ先に駆け出したレクシアの後に続いていく。
その時丁度、ポツリポツリと、雨粒が道路を濡らし始めた――。




