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矛盾だらけのアイソドシンク ―The World of Paradox―  作者: 天崎澄
第一章 矛盾邂逅編
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間話:とある存在による設問

 本当にそれでいいのかい?



 おっと、また会えたようだね。


 私としてもとても嬉しい。

 嘘ではないよ。


 なんて、嘘じゃないと自分から告げると逆に嘘っぽく聞こえてしまうのだから、人間というのは本当に疑り深い生き物だと思うよ。


 いや、違う違う。


 別にあなたを悪く言ったわけじゃないんだ、気を悪くしたなら申し訳ない。



 しかし、あなたも思わないかい?



 本当にそれでいいのかい?


 って。


 彼――そう、例の彼。


 いくら可愛い妹だからって、本当は得体の知れない存在だって知って、それを簡単に受け入れていいのだろうか?


 普通の人間なら、そんな安易に決められることではない。


 だって、端的に言って、自分の肉親が化け物だったんだから。


 なのに彼は、本当にチョロい。


 妹っていうのは確かに世界一可愛い存在なのかもしれないけれど、でも本当の妹じゃない。


 矛盾しているのではなく、矛盾そのもの。


 可愛いだけでは済まされないだろう、普通はそんなもの。



 彼が馬鹿なのか、おおらか過ぎるのかは知らないが、それにしたって度を越してやいないかい?


 あなたも、可愛い妹であれば化け物だろうが何だろうが、お構いなしかな?


 そうだって言うなら、本当の妹を持ってみろって感じだ。


 まあ私も妹はいないけれどね。


 それとも、本当の妹じゃないから良いのか。


 義理の妹なんていかにも背徳的だものね。



 背徳的といえば。


 背徳感が興奮を煽るというようなことが人間の中ではままあるようだけれども、歪んでいるよね。



 道徳に背くことが精神を(たかぶ)らせるなんて、本当に歪んでる。


 でもそれは矛盾ではない。


 そう、歪んでいることは矛盾じゃない。


 なぜなら、“歪み”とは普通に在るものだからだ。


 普通に在るものが普通に在るのは、普通のことだろう。



 じゃあ何が矛盾なのか。



 ここまで彼の物語を見てきたあなたなら、もう分かっているはずだ。




 歪んでいるのに歪んでいないように見える。




 それが矛盾。


 そんな気持ちの悪いことがあるかい?



 例えば、


 姿が見えないのに居る。


 不味いのに美味しく感じる。


 近くに見えるのに一向に辿り着かない。


 吐き気がするのに楽しい。


 幸せなのに笑えない。


 死んだのに生きてる。




 以上。


 異常。



 有り得ない、おかしい、嫌悪感を覚える。


 そうだろ?


 それが矛盾に対する真っ当な人間の反応だ。



 だから彼は真っ当じゃない。


 申し訳ない。


 プロローグで彼のことを『普通の感覚を持った普通の人間』と表現したけど、あれは間違いだった。


 彼は、『おかしな感覚を持った普通の人間』だった。


 おっと、これは矛盾していないよ?



 だってそういう人間はそこそこ居るし。


 というか正直な話、『普通の感覚を持った普通の人間』の方が少ないんじゃなかろうか。


 そもそも人間における“普通の感覚”っていうのがよく分からないしね。


 人間なんて皆、少なからずおかしな感覚を持っているものさ。


 おかしいのが普通とも言えるかもしれない。


 ああ、うん。


 言葉がこんがらがっているよね、ごめんごめん。



 まあ簡単にいうと、だから歪んでいる人間は普通に居るっていうことだよ。


 こう言えば分かりやすいよね。


 ただそんな人間でも矛盾しているものを受け入れるのには抵抗があるはずなんだけど。



 自分達が生み出しているものを受け入れられないなんて、それこそ矛盾しているという気もするけれど。



 だから彼は、矛盾していないんだろうね。


 矛盾していないから矛盾を受け入れられる。 



 一見不思議なロジックに思えるかもしれないけど、実はこれはそうでもない。


 逆に言えばこういうことだ。


 矛盾している人間は、矛盾というのがどういうものなのかを知っているが故に、その存在を拒絶する。


 同族嫌悪みたいなものかな。


 可愛いよね、人間は。



 さて、最初の疑問に戻ろうか。


 彼は妹の姿をした化け物を助けて、本当に良かったと思うかい?


 いやまあ彼の人生だし、ここで是非を問うても仕方のないことではあるんだけれどね。


 答えは彼にしか分からない。


 だから私が今知りたいのは、



 あなたならどうするか。



 ということだ。



 これをよく考えてほしい。


 考えた先は考えなくていい。


 考えることが大事なんだよ。



 ただ一つ言えるのは、もし彼が矛盾を受け入れずに化け物の妹を突き放すことが出来たなら、きっと彼の物語はそこで終わっていたのだろうね。


 人生は続いても、物語は終わっていた。


 概念と繋がり続ける必要もなかったのだから。


 全てを忘れて、平穏無事な人間らしい人生を送れたことだろう。


 それが良いか悪いかは、人それぞれだろうけど。




 さあ、あなたならどうする?




 次、会える時までに考えておいてくれると嬉しいな。


 彼が選んだ未来でも、眺めながらね。



 それじゃ。




第一章最終話の後書きにて、次回の更新まで2~3週間空けると記載しましたが、急遽プロローグとこの間話を投稿させていただきました。

嘘ついてごめんなさい。


次回は本当に少し期間を空けさせていただきますので、お待ちいただけると嬉しいです。

ではまた。


2017.2.8 蒼葉綴

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