第五話
ようやく書き上げれました。
登録が済んでから四日ほど経った。俺は簡単な物ばかりだが、一人で幾つかのクエストをこなした。今日も一人でクエストをこなすため、オルマの森に入った。
ここ最近、俺は前から気になっていたことを確認していた。それは忍のスキル発動のさせ方だった。パッシブスキルはこの世界に来た時から発動していたみたいだが、アクティブスキルの方は発動のさせ方が分からなかった。理由は分からないが賢者の方は簡単にスキルを発動できたのに、忍の方はそういうわけにはいかなかったみたいだ。
ゲームの中なら基本的には頭に使用したスキルを思い浮かべて、スキル毎に決められた構えをすれば発動し、システムが動作補助をしてくれていた。しかし、この世界ではいくら構えを取ったところで、発動しなかった。
最初の二日は発動しないスキルと発動するスキルがあるのだろうかと思いすべてのスキルを試していたのだが、見事に的外れな予想だった。昨日は昨日で、賢者の方のスキルを一通り確認するだけで終わっていた。
「餓狼斬!」
今日は早速、スキル名を言いながら構えをとってみることをしてみたが発動することなく、ただ恥ずかしい奴になってしまっただけだった。当然一つだけ行っただけで、他のスキルを試すことはしなかった。
「む」
俺の声に気付いて寄ってきたのか、ゴブリン達が近づいて来ていた。
「邪魔しないでくれよな、ったく……」
右手をゴブリンの方に突き出し、掌を上にして軽く上に振り上げる。それだけで地面から多くの棘が飛び出し、ゴブリン達を一匹残らず串刺しにする。
「ふむ」
これは賢者のスキルの一つで、『マッドニードル』という中級攻撃魔法だ。また、賢者のパッシブスキルにある『マナ操作』と『無詠唱』によって、先程みたいにモーションだけで発動が出来るようになる。
『マナ操作』というのは、自身が持っている魔力を使って魔法を放つのではなく、『マナ』という自然界に漂う魔力を使用することが出来るスキルなのだ。これによって自身の魔力消費を抑えられるのだが、『マナ操作』によって生じた魔法というのは威力や効力が、四割程落ちてしまうのだ。
「でも、ゴブリンは一撃で倒せる程度の威力はあるな」
さすがにレベルがカンストしていれば、ゴブリンなら『マナ操作』でも余裕で一撃だ。
「賢者の方は全く問題ないのになー……」
ゴブリン達が残したアイテムを回収し、腰のアイテム袋に収納。このアイテム袋は某ロボットよろしく四次元ポケットになっている。これもギルドカードのように冒険者必須アイテムの一つで、聞いた話では普通に一般家庭にも普及しているらしい。なので、テオ達は俺を見た時、俺が既に冒険者として活動しているのだと思ったようだ。
俺はこの世界に来た当初からアイテム袋を所持しており、最初に確認したインベントリはこの袋の中身を表示していたようだ。テオ達に聞いてみたのだが、中身を確認する時は他の人もリストが目の前に表示されるそうなのだ。そのリストの中からアイテム名を頭に思い浮かべると、取り出せるようになっているとも言っていた。ここら辺の情報を手に入れる度に、この世界の元がゲームという事を思い出すのだ。
まぁ、今はそんなことよりスキルの発動条件を見つけることに集中しなければな。
「さてと、次は……」
俺は昨日の夜に思いついた方法を試すことにした。
頭の中に思い浮かべるのは、自身が最も使用していた『瞬影』というスキル。そして、動作補助によってどのような動きをしていたかを、思い起こす。
『瞬影』というのは忍の初期スキルの一つであり、敵との距離を一気に縮めるというものだ。発動条件として、自身の利き足で踏み切りを行うという簡単なもの。
その発動条件通りに右足を軽く引き、地面を蹴る。それと同時に。
「瞬影」
と言った瞬間。
周囲の風景が一気に引き伸ばされた。目の前の木や茂み等の障害物を避けて移動し続け、『瞬影』の限界距離である15メートルに達した所で引き伸ばされた風景が元に戻った。
「おっし、成功した!」
俺は小さくガッツポーズを取り、喜びの声を上げた。
これでこの世界でのスキル発動の方法が分かった。スキル名を言い、スキルによって生み出される動作を行えば良いようだ。
俺がスキル発動に成功したことを喜んでいると、後ろの方で慌てた声がした。
「ややや、やばいです、見失っちゃいました、どどどどうしよう」
俺は振り返り、この四日間のことを思い返していた。
違和感に気付いたのは、ギルド登録が終わった次の日だった。ギルドに入った時、誰かから視線を向けられた。俺はちらりと視線を感じたほうに目を向けた。そこにはフードを深く被った奴がいた。その時は気にしなかった。しかし、クエストを受けてギルドを出た後、そのフードは俺の後をつけ始めたのだ。流石におかしいと思ったのだが、特に敵意も感じなかったので放っておいた。
すると、フードは今日までの四日間、ずっと俺をつけまわしていたのだ。いい加減、何のために俺をつけまわしているのか知りたかったため、『瞬影』を使って逃げたのだ。
「相当慌ててるみたいだなー」
未だに「どうしようどうしよう」と言い続けているのが聞こえてくる。
俺はフードに問い詰めるため、来た道を引き返した。
✛
来た道を引き返したところ、フードはその場に蹲りブツブツと何かを呟いていた。
「おい、そこのフード」
「は、はい!?」
突然声をかけられたことに驚いたのか、フードは甲高い声を出し飛びあがるようにして立ち上がった。そして、俺を見るや否や。
「って、うわああああああ!?」
のけぞりながら絶叫した。うるさい。
「みみみ見つかってしまいましたぁぁ……!!どうしようどうしようどうしようどうしよう」
今度は俯きブツブツと「どうしよう」を繰り返し始めた。忙しい奴だ。
「ちょっと聞きたいんだが、俺をずっとつけまわしているのはなんでだ?」
「はぅ!?気付かれてた!?」
どうやら気付かれていないと思っていたようだ。正直、フードの尾行はお世辞にも上手いとは言えなかったんだが。
「少し落ち着け。で?理由は?」
「いやあの、言わなければいけませんか……?」
「あぁ、いい加減気になってたからな」
「はぅ……どうしよう……」
そしてフードは再び俯き、ブツブツとつぶやき始めた。
「……でも他の人には言っちゃダメって言われましたし……いやでも……」
「……」
待つこと五分。ようやく決まったのか、顔を上げた。
「あの、その、ぼ、僕はですね、あなたの尾行を頼まれまして……」
「誰に?」
「……………………ギルド長です」
「ギルド長?何でまた?」
「……………………………………あなたの観察を頼まれまして」
「観察ぅ?」
なんで俺の観察なんてする必要があるんだ?
「俺を観察する理由は聞かされたか?」
「い、いや、聞かされてません……ただ、観察しろって言われただけで……」
「ふーん」
「しし、信じてませんね?」
どうやらフードにはそのように見えたみたいだ。
「いや、信じてないわけじゃないさ。ま、理由は直接聞くか」
「あのあの、そそれは止めていただけると、非常に助かるんですが……」
「?」
「その、ギルド長から直接依頼を受けたのに、し、失敗してしまいましたし……そのー、僕としては、ギルド長から怒られたくはありませんし……」
なるほど、バレたくないと。
「よし、じゃあギルド長に会いに行くか」
「僕の話、聞いてました!?」
「あぁ、聞いてた。まぁ、見つかってしまったものは仕方ないだろう?諦めて怒られなさい」
「そ、そんなぁ……」
フードは項垂れ、今にもその場に崩れ落ちそうになった。
「ところで、お前。名前は?」
「………フィルです」
「というか、いい加減フード外したらどうだ?もう俺に見つかってしまったわけだし、隠す必要もないだろ」
「そうですね……」
もうどうとでもなれ、という雰囲気に包まれたフィルはフードを外した。フードの下から現れたのは、短い赤髪の男だった。年はテオ達と同じくらいか。
「男だったのか」
声的に女の子だと思ってたんだが。
「……どうせ僕は女っぽいですよ」
俺の一言で完全に拗ねてしまったようだ。やべ、地雷ふんじゃった。
「あー、とりあえずだ。フィルも一緒に行くぞ」
「……どこにですか?」
「ギルド長のとこ」
「い、いや、僕はその、心の準備が出来てからでいいですよ」
「フィルがいる方が、ギルド長への説明が簡単になる」
俺はそれだけ言うとフードを掴み、フィルを強制連行することにした。
「そ、そんな、待ってくだ、あの、聞いてます?ねぇ、聞いてます?」
「聞いてる聞いてる」
フィルの言葉に適当に返事しながら、オルマの森を後にした。
この話での展開があまりなかった気がしますが、それはきっと気のせい。
次話の更新は出来るだけ早めにしようと思います。




