第三話
書き溜めがここで尽きるので、次の投稿はしばらくかかります。
東門に着いて五分ほど待っていると、一人の女性が俺たちに話しかけてきた。
「君たちが新規登録の人達だね?」
「あ、はい」
「今回は三人とは、多いね。あ、私はキリカ」
「俺はユリィです。今日はよろしくお願いしますね」
「私はテオで、こっちがノア」
「よ、よろしくお願いします……」
またしてもテオの後ろに隠れているノア。重度の人見知りか。
「んじゃ、早速行きましょう。ゴブリン討伐だっけ」
「そうですね」
「じゃあ、オルマの森だね」
オルマの森とは東門から出て、十分程歩いた場所にある森林のことのようだ。
道中、キリカから今回の目標等の説明を聞いた。
「今回は三人いるから、チームワークという点も見させてもらうね。ところで三人共前から組んでたりするのかな?」
「いえ、俺は今日初めてこの二人に会いましたね。二人は前から組んでるみたいでしたけど」
「そうかー、りょーかい。それとユリィちゃん。敬語じゃなくてもいいよ?歳は私の一個上だし」
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうかな。というか、ユリィちゃん?」
「うん。美人さんだし、ちゃん付けは不味かったかな?」
どうやらキリカも俺を女だと思ったらしい。
「そういう問題じゃないぞ!俺は男だ!」
「え、うそ、ほんとに?」
「本当だ」
「あらら、ごめんごめん。男には見えなか……ごめんって」
男に見えなくて悪かったな!
鋭い視線を向けるとキリカは途中で言葉を切って謝ってきた。そして、急いで話題を変えた。
「し、しかし、ユリィ君の髪とか目の色ってここら辺ではあんまり見ないね。出身は極東とか?」
「ま、まぁそうなるかな」
正直、極東とか言われてもわからないが、適当にごまかしておけばいいか。
四人で話をしながら歩いていると、すぐにオルマの森に着いた。
「さ、ここからは気を引き締めて行こうね」
先ほどまでの和気藹々とした雰囲気を払拭するかの如く、キリカは真面目な顔つきになった。
「さっきも言ったけど、今回は個人の戦闘能力だけじゃなくて、チームワークという点も見させてもらうからね」
「了解」
「うん!」
「が、頑張ります!」
三者三様に頷き、気を引き締めた。
「さて、じゃあテオが前衛、ノアが後衛でいいか?俺は状況に合わせて、前衛か後衛か決めるつもりだが」
「うん、私たちはそれでいいよ」
「私もそれでいいですよ」
「よし」
そして俺達はオルマの森に入っていった。
入ってから五分ほどした頃だろうか。俺たちに何かが近寄って来る気配がした。
「早速お出ましか」
「え?」
俺の呟きが聞こえたのか、テオが聞き返してくる。
「魔物が来るぞ。数は六匹か」
俺が二人に注意を促したと同時に、茂みからゴブリンが6匹姿を現した。
「おぉ、ほんとに六匹だ」
「ほら、さっさと武器を構えろ」
俺の予測が的中したことに感心していたテオを注意し、自身も忍び刀を抜いた。
テオもすぐに腰からロングソードを抜いて両手で持ち構えた。その様子を見たゴブリン達はこちらに向かって飛びかかってきた。
「ゴアァァ!!」
「はぁぁ!」
二匹ほど飛びかかってきたのを、テオが一歩踏み込みロングソードを横に大きく一閃した。二匹ともその一閃で絶命し、アイテムを残し消滅した。
大振りの攻撃を放って隙の出来たテオに、攻撃を加えようとしていたゴブリンに向かってノアが魔法を放った。
「アクアショット!」
その一撃でゴブリンは消滅した。
俺はノアが魔法を放つと同時に左手に魔力を溜めながら駆け出し、残り三匹の中でも最も近くに居たゴブリンを袈裟斬りで斬り伏せ、左手の魔力を「形成」「固定」により錐状にし、左から右へ左腕を振りぬきながら投擲し、それぞれをゴブリンの眉間に命中させた。さすが忍の投擲スキルだな、狙った場所に飛んでくれる。
忍び刀で斬り伏せたゴブリンは消滅したが、投擲によって攻撃されたゴブリン達は死んではいなかった。む、やはり魔力の「形成」「固定」だけだと攻撃力が低いのが欠点だな。
「燃えろ」
その言葉で錐状の魔力が爆発するように炎を上げた。それにより止めがさされたゴブリン達はノアの魔法で倒されたゴブリンと共に消滅した。
「ふぅ」
俺は一息つき忍び刀をしまった。すると、俺以外の三人が驚いた顔を俺に向けていた。
「ん?」
「す、凄い速かったんだけど……」
「凄いです……」
「最後の二匹とか、突然顔面が燃えてたんだけど。ユリィ君よ、何をしたんだい?」
驚きと感想、それと質問が飛んできた。
「何をしたって、魔法だけど」
「ほうほう。でも、ノアちゃんみたいに炎が飛んでいったわけでもないし」
「ま、そこら辺は企業秘密ってことで」
というか説明するのが面倒臭い。
「ま、いいや。さぁ、次々行こう!」
キリカの声に俺達は再び探索に戻った。
✛
それから二時間ほど経って、ようやく討伐数が目標に達した。
「お疲れ様。じゃあ、グランに戻ろうか」
グランというのは先ほどの街の名前のようだ。
その後俺達はグランに戻り、ギルドまで一緒に行った。
「お疲れ様です、キリカさん」
「お疲れ様ー。こっちの三人なんだけど、登録には問題ないと判断したよー」
「了解しました」
どうやら、問題なく冒険者の本登録へと移ることが出来たようだ。
「やった!」
テオは喜びの声を上げ、ノアは嬉しそうに小さくガッツポーズをした。
俺は特にリアクションを取らず、その場に立っていた。
「三人共、こっちこっち」
キリカに呼ばれ、カウンターから離れた場所に移動した。
「じゃあ、正式登録になるから、この紙を持って」
差し出された紙は五センチ角の正方形の紙だった。
「これは?」
「レベル判定の紙だよ」
「レベル判定?」
「そう。これでギルド側は現在のレベルを把握しておくの。手に持ったら意識をその紙に集中してみて」
どうやらこの紙は、1~10レベルは白、11~30レベルは青、31~50レベルは緑、51~60レベルは黄、61~70レベルは赤、71~80レベルは黒、81~90レベルは銀、91~100レベルは金という風に表示されるそうなのだ。
この話を聞いた時、内心俺は焦った。俺のレベルは既に100となっているため、この紙を受け取れば金色になるだろう。そうなると、一気に注目の的となってしまうのは簡単に想像できる。俺自身そんなに目立ちたくないため、正直この紙を受け取るのを躊躇った。
しかし、そんな俺の心の中を知らないキリカは、俺に押し付けるように紙を渡してきた。
俺は観念して、その紙を受け取り意識を集中させた。すると。
「っ!」
突然右手に熱を感じ、その紙を手放した。その紙が手から離れた瞬間、炎を出して消えた。
「え……!?」
その場にいた全員が動きを止めた。実際には一瞬だったのだろうが、俺にはしばらくその状態が続いたように思えた。
「あ、あのー……これはどういう……」
ついにこらえきれず、俺から沈黙を破って尋ねた。すると、今まで動きを止めていたキリカが、ようやく動き出した。
「いや、これは、なんだろう……正直初めて見るからね、判定紙が燃えるなんて」
試しにもう一度、判定紙を使ったが同じようになった。
「うーん……これはどうすればいいんだろ……」
なんでもこの判定紙で出た色がギルドカードにも反映されるようで、俺の場合色が分からないということになるのだそうだ。
「……燃えたから赤?」
「それはどう考えてもおかしいだろ」
キリカの結論(?)に突っ込みを入れたのは、いつの間にか近くに居たゴリマッチョだった。
「あ、マスター」
ま、マスターだと?ギルドマスターのことか?
「報告を受けて来たんだが、確かに判定紙が燃えるなんて見たことも聞いたこともないな」
「そうなんですよ。どうします?」
「まぁ、燃えてしまったものは仕方ない。ここは、白という判定にしておこう」
白ということは1~10レベルって事か。低。
「ここで下手に赤とか黄とかの判定しても、こいつが危なくなるだけだからな。一時的に白ということにして、他の支部や本部のギルドマスター達と話し合って決めるとしよう」
「じゃあ、ユリィ君は白ってことでいい?」
「はぁ、まぁ別にいいですけど」
「んじゃ、決まりだね」
こうして、本登録が済み、俺は無事(?)冒険者になることが出来たのだった。
ご指摘があれば、遠慮なくしてください。




