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第二話

  




 気が付くと、俺は一面真っ白な世界に立っていた。

 確か俺は晩飯を買いに出ていたはずだが。


「どこだここ?」


 と、辺りを見渡していると、一人の男性が俺の目の前に現れた。


「君が御剣由利だな?」

「えっと、そうですが……貴方は?」

「私は、君の世界で言う「神」という立場に居るものだよ。信じてもらえないかもしれないけどね」


 信じる信じないよりも、今俺が置かれている状況が知りたい。


「君は交通事故に遭ったのだよ」

「交通事故?」

「あぁ、元々君は交通事故に遭う運命だった。しかし、せいぜい骨折する程度の怪我で済むはずだったのだ。そうなるはずだったのだが、こちらの手違いで君を死なせてしまったのだよ」


 そう言って目の前の男性は頭を下げた。

 つまり、俺は死んだのか……?実感が湧かないが、この男性の話を信じるならそういうことになる。


「それでだね、我々の方で話し合った結果、別の世界に君を生き返らすことになったのだが」


 突然、俺の目の前にディスプレイのようなものが表示され、そこに一つの世界が映されていた。


「そこは君がやっていたオンラインゲームを元にした世界なのだ。幸いにも、君のアカウント情報を持ってこれたのでな。君に行ってもらうことになった世界は、JOの世界だ」


 理解が追いつかない。が、これだけは分かった。


 俺は交通事故で死んだ。そして、別の世界に生き返る。


「では、早速君にはJOの世界に行ってもらいたい。それと、これは私からの餞別だ」


 男性から差し出された手には、指輪がのっていた。


「これは?」

「これは『スケープリング』というものだ。死の危険から、一度だけ身代わりになってくれる」


 身代わり?


「こちらの手違いで一度、君を殺してしまったのだ。そのお詫びだと思ってくれ」


 俺はそれを受け取り、右手の中指にはめた。


「よし、それではJOの世界に生き返ってもらう。JOの世界は、ゲームの最終シナリオから100年経っている。世界に降り立ったら、まずはギルドに登録して冒険者になるといいだろう。では、君に幸運が訪れるよう願っているよ」


 その言葉を最後に俺の意識は暗転した。





   ✛





 気が付くと、俺は草原に寝そべっていた。

 寝そべったまま確認したところ、どうやら俺の恰好やインベントリ内のアイテムはJO内のキャラのままのようだ。


「まぁ、何とも実感が湧かんな……」


 JOにログインしているような感じだ。

 しかし、ゲームの世界にはなかった嗅覚や穏やかに駆け抜ける風が、この世界がゲームでないことを物語っていた。


「さてと」


 一つ深呼吸をして、体を起こした。


「ギルドとやらに向かうとしますか」


 神様の助言通りに俺は冒険者になるため、遠くに見える街へと歩き始めた。





   ✛





 その後たどり着いた街はかなり栄えていた。JOの基準でいえば王都といったところか。

 今俺が歩いている大通りは喧騒に包まれていた。というのも、大通りには数多くの商店や露店があり、呼び込みをしているからである。昼時というのもあるだろう。


「ほー、すげーな……」


 歩みを止め、街の様子を見ていた。その時、後ろから来た誰かとぶつかってしまった。


「おっと」

「きゃっ!」


 謝ろうとして振り返ると、俺より二つ三つ若く見える女の子がいた。そして、彼女の後ろにもう一人、息を切らせながら走って来る女の子が見えた。

 とりあえず、謝っておこう。


「すまんな、ぼーっとしてた」

「あ、いや。私も前見てなかったし……」

「テオちゃん、少しは待ってよ……」


 そうこうしていると、後ろから来ていた女の子が追いついた。膝に手をつき、肩で息をしている。


「ノアが遅いだけでしょ?私は疲れてないもん」

「テオちゃんと一緒にしないでよ……」


 目の前のテオと呼ばれた女の子は、装備を見る限り「剣士」と言ったところか。それに対して、ノアと呼ばれた女の子の方は、ローブに杖という見るからに「魔術師」の格好だった。

 この二人の体力差については、わざわざ言わなくても分かるだろう。確かにノアの言うことは正しかった。


「でも、早く冒険者になりたいじゃん」

「確かにそうだけど……」


 冒険者、という単語がテオから出てきた。二人は俺が居ないかの如く話しているが、俺は半ば強引にその会話に入った。


「ちょっといいか?冒険者ということは、ギルドに登録しに行くのか?」

「あ、うん。そうだよ」

「あ、あのテオちゃん……そちらは?」


 ノアはテオの後ろに隠れながら、俺のことについて説明を求めていた。


「あ、さっきぶつかっちゃって」

「あれはこっちが悪かったからな。こんなところに突っ立ってたし」

「そ、そうなんだ……」

「それでだな。一つ頼みたいんだが、ギルドまで案内してくれないか?如何せんこの街は初めてなんだ」

「あ、おねーさんもギルドに用があるの?じゃあ、私たちに着いて来てね」


 テオがそう言いながら、ノアの手を引きながら歩き出した。しかし、さっきの言葉には聞き捨てならん言葉があった。


「ちょっと待て。俺がおねーさん?」

「へ?うん、そうだけど」


 テオは疑問の声を上げながら振り返り、ノアも首を傾げてた。


「俺は男だ!」


 ついつい大声が出てしまったが、そのことを二人に伝えた時、二人は何を言ってるのか理解できなかったらしく首を傾げたが、すぐに驚愕の声を二人そろってあげた。





   ✛





 その後、俺は二人について歩き、無事ギルドに着いた。

 その道中に二人とはそこそこ仲良くなっていた。二人とも18歳になったばかりらしく、12歳の時に冒険者養成学校に通うため、自分たちが住んでいた村から出てきたそうなのだ。二人は昔からの親友だそうで、今年学校を卒業してようやく冒険者としてギルドに登録しに行くところだったのそうだ。

 ちなみに冒険者養成学校とはその名の通り、冒険者を育てる学校なのだが、別に冒険者になるためにはそこに行かなければいけないということはないらしい。なんでも自主的に通い、戦闘スキルを磨くのだそうだ。


「でも意外だったなー、ユリィが男だったなんて」

「私もかなり驚きましたよー」

「不本意だが、よく言われるよ」


 おそらく他人から見たら、俺の今の顔は不貞腐れているようにみえるだろう。

 何はともあれ、ようやくギルドに到着したのだ。これで神様の助言通り冒険者になれるというわけだ。


「じゃあ、私達は登録しに行きますか」

「そうだね」


 二人の口ぶりから察するに、どうやら二人とも俺は既に冒険者と思われているようだった。


「俺も新規登録だぞ?」

「あれ、そうなの?」

「てっきりユリィさんは別の街の冒険者なのかと思ってました」


 二人と共に、ギルドのカウンターに向かった。


「いらっしゃいませ」

「新規登録お願いします」

「新規登録ですね。では、こちらに記入をよろしくお願いします」


 差し出された紙には名前や年齢、戦闘スタイル、特技といった事項が書かれていた。書かれている文字は分からないのに、何故か理解することは出来た。神様のおかげだろうか。

 そこで、俺はこの世界の文字が書けないことに気が付いた。焦っていると、頭の中に神様の声が聞こえてきた。


『大丈夫だ、その世界の文字は書けるようにしてある』


 その声に一息つき、改めて紙に目を落とした。名前はユリィでいいとして、年齢は二十二歳でいいのかな?ま、いいや。残りの必要事項も記入し終えたので、受付の人に渡した。


「戦闘スタイルはオールラウンド、ですか……?」


 受付の人は眉を顰めながら、こちらを見た。


「一応、近接と魔法が出来るので。なにか不味かったですかね?」

「いえ、オールラウンドというのは珍しいだけで問題ありませんよ」


 その一言で安心できた。眉を顰められたときは、不味ったかと少し焦った。

 残りの二人の登録も問題なく済んだようだった。


「では皆さんの仮登録はこれで済みましたので、少しお待ちください」


 そう言って受付の人は奥に消えていった。それよりも、だ。


「仮登録?」

「うん、そうだよ。ギルドから提示されるクエストをこなして初めて本登録になるんだよ」


 俺の疑問にテオが答えてくれた。

 なんでも今から二年ほど前からこの制度が取り入れられたそうで、その前までは登録直後に無理をしてクエスト中に大怪我する者や、命を落とす者までいたようだ。この制度の目的は個人の能力を把握し、それに見合ったクエスト以外は受けさせないようにすることらしい。そして、この制度が導入されてからというもの、登録直後に怪我する者や命を落とす者というは激減したそうだ。

 簡単な説明をテオから聞いていると、奥から一枚の紙を手にした受付の人が戻ってきた。


「では、こちらが課題のクエストとなります。皆さん一緒に受けてもらっても構いません。今日皆さんの担当となる冒険者の方には連絡を入れておきましたので、東門で合流してください」


 クエストの内容が書かれた紙を受け取り、俺達はその場から離れた。


「さてさて、クエストの内容はっと」


 テオが手に持っている紙を読み始めた。


「むむ、ゴブリン二十体討伐だって。なんというか拍子抜け?」

「そうかな、私は妥当だと思うけど」

「まー妥当なところだろ」


 ゴブリンとは、RPGお馴染みの最弱モンスターと言っても過言ではないモンスターだ。基本的に5匹程度の群れで行動している。群れで行動してるため、拙いながらも連携を取って攻撃してくるという点だけ注意しておけば、まず負けることはない。


「ま、いーや。じゃあ早速東門に行こう!」


 テオが張り切って先頭に立って歩き始めた。

 ちなみに東門に行く道中に聞いた話だが、先ほど受付の人が言っていた担当となる冒険者というのはクエストを受けていないAランクの冒険者が呼び出されるのだそうだ。冒険者にはS~Fまでランクがあり、Sが一番上なのだそうだ。Aランクということはかなり上のランクになるのだが、なんでも間違っても死人が出ないように不測の事態にでも対応できるようにAランクを担当にしてるそうだ。

 そして、そのAランクの冒険者を呼び出す方法として、なんと驚いたことに登録後に渡されるギルドカードには、電話のような機能があるらしくそれで呼び出すのだそうだ。他にもギルドカードは金庫の役割もあるらしく、大金が入った時はカウンターにギルドカードと共に出すと、ギルドカードに預り金の額を更新してくれるのだそうだ。引き出す時も同様にカウンターでできるらしい。しかも詳しい原理は知らないが、他人のギルドカードから引き出すことが出来ないようにもなってるのだそうだ。


「まさにギルドカード様様だな」


 その一言に尽きるのだった。




 

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