第一話
前作「Lv0異世界トリップ」の書き直しです。
前作とは大きく異なっていますので、前作を読まなくても大丈夫です。
2053年。技術大国日本では、VRシステムが開発された。それはゲーム業界に新たな風を吹き込むことになった。
それから三十年経った2083年。VRシステムは誰でも手に出来るようになっていた。
俺、御剣由利は十五歳を迎えていた。月のお小遣いやお年玉を貯めて、友人と共にVRシステムで遊ぶための必須アイテム、ヘッドギアを購入した。それと同時に今大人気のVRMMORPG「ジュールオンライン」略して「JO」を購入。
購入した次の日から、俺はJOの世界に入ることに。
キャラクターメイキングをするのが面倒くさかった俺は、名前だけ入力し後はランダム設定にした。しかし、それが間違いだったのだ。
JOの世界に入った俺がまず降り立ったのは、「始まりの街」という名前の街だった。
俺と友人は「始まりの街」の噴水広場で待ち合わせをしていた。噴水広場まで行くと、俺の方が先だったのか、友人の姿(というより名前といった方が正解)が見当たらなかった。
しばらく待っていると、俺の視界の端に「ダイスケ」という友人の名前が映った。俺は近くに駆け寄り、声をかけた。
「ようダイスケ。遅かったな」
「……ユリ、お前なんだそのキャラ?」
「ん?変か?」
「はぁ……キャラぐらいちゃんと作れよ」
ダイスケはアイテムボックスの中に初期配布されている「手鏡」を確認しろとだけ言った。そこで、初めて俺は自分の恰好がどうなっているのかを知った。
髪は長く、顔つきも中性的、というよりはやや女性より。髪の長さも相まって、もはや女性にしか見えなかった。
「んな!?なんだこれ?」
「どうせメイキング、ランダム設定にしたんだろ?」
「そ、そうだが」
ダイスケの説明によると、ランダム設定をすると現実の顔つきに似るのだそうだ。
「まんま由利だったから驚いたぜ?」
「おい、髪はこんな長くねぇだろ!てか、キャラ作り直せないのか?」
「まぁ無理だな。諦めろ」
幸先良いスタートとは、とてもじゃないが言えなかった。
その後二人でチュートリアルをクリアし、ジョブ設定に移った。
「ジョブどうするよ?」
「そうだなー。ダイスケはもちろん前衛だろ?」
「あったりめーよ!」
ダイスケとは別のゲームでも遊んでいたので分かるが、ダイスケは火力重視のステータスが好きなのである。
「んー、となると、ダイスケはメインが『剣士』か?」
「おう!んでサブが『格闘家』だな」
「またしても火力特化だな」
「お前なー、火力は重要なんだぞ?」
ダイスケの講釈は聞き流す。これ基本。
JOのジョブ設定にはメインとサブの二つがあり、戦闘中に切り替え可能なのである。この二つを数あるジョブから設定することで自身の戦闘スタイルを確立させるのだ。
なので、ダイスケのように火力特化させるも良し、バランス型にするも良し、ということなのである。
ダイスケは予想通り、火力特化。
「んじゃ、俺はメインを『魔術師』で、サブを『盗賊』とするか」
俺はやや後衛よりのバランス型にすることにした。やや後衛よりというのも、盗賊には『投擲』というスキルがあるそうだからだ。投擲と魔術でダイスケの補助をするという形にするつもりなのだ。
「お、決まったな。よし、早速やってくか!」
「おう!」
こうして、俺とダイスケはJOの世界に入り浸っていった。
✛
あれから七年が経った。JOは未だ根強い人気を誇っていた。
大学生となり、お互い別の県に移り住んだ後も俺とダイスケはJOでたまにだが会っていた。
このJOにはストーリークエストというものがあり、ストーリークエストをクリアすることで話を進めることが出来、最終的には邪神を倒して封印。世界に平和をもたらす。といった筋書きになっている。
そして最終ストーリークエストをクリアした後は、クリア特典として新規クエストが数多く解放され、最終ストーリークエストのクリア前まで戻ることになっているのだ。
俺とダイスケは一年ほど前にストーリークエストを完走しきった。そして最近は、その後の新規クエストをこなしていた。
そんなことをしていたら、半年ほど前に俺達はレベルが100となりカンストした。
JOではカンストプレイヤーというのは珍しくなく、むしろJOはカンストしてからが本番とさえ言われているのだ。
何故かというと、クリア特典のクエストはレベルがカンストしていても苦戦するようなクエストが大半だからなのである。
俺とダイスケも最初にクリア特典のクエストをした時は、敵の強さに驚いたものだ。
そんな俺達のジョブは今現在、ダイスケはメインが「二刀流」、サブが「空手家」と、相も変らぬ火力特化。俺はメインが「忍」、サブが「賢者」となっている。
今日は一週間ぶりにダイスケと一緒にクエストをやる約束をしていた日だった。
俺はダイスケより一足先にログインし、「最果ての街」の「アルス武具店」というプレイヤーが経営する店に入った。
俺とダイスケがJOをやり始めて一年半ほどした頃、新システムとして、ジョブの中に生産職が追加された。追加された当初、生産職は不人気だった。しかし、生産職で頑張っていた人達の作った装備の方が性能が良く、生産職の人達が開く店を利用する人が増えたことにより、今では生産職はJOプレイヤーにとっては無くてはならないものとなっていた。
俺も生産職のプレイヤー「アルス」とたまたま仲良くなったため、よく利用している。
「よう、いらっしゃい」
この筋肉隆々の男こそ、アルスである。非常にむさ苦しい。
しかし彼の腕は非常に良く俺も気に入ってるため、俺の装備の殆どがアルスが作ったものである。
「前頼んでた奴、出来てる?」
「おう、出来てるぜ!」
そう言って差し出されたのは、非常にシンプルな忍者刀である。
手に取ってみると、ずっしりとした感触が手に伝わった。
「うん、いいね」
「そりゃよかったよ」
俺はその短刀を早速装備した。代金は既に払っておいた。
俺はアルスに改めて礼を言いアルス武具店を後にした。時計を確認すると、そろそろ待ち合わせの時間だった。
俺が広場に着いた時は、既にダイスケはログインして待っていたようだ。
「よう、久しぶり」
「おう。んじゃ今日もいっちょやりますか」
合流した俺達はいくつかのクエストをこなした。
その後三時間ほどした時、ダイスケは「晩飯の時間だ」と言ってログアウトすることになった。
「んじゃ、またな」
「じゃあな。またやろうぜ」
ダイスケのログアウト後、すぐ俺もログアウトし、晩飯を買いに行くことにした。
そして、俺はそこで交通事故に遭い、あっさりと死んでしまったのだった。




