第十一話
少々説明とか理由とかこじつけっぽいですが、お許しを。これが限界やったんや……!
では第十一話目、どうぞ。
あの後、目を覚ましたヴェルを引き連れて俺は露店祭を楽しんだ。
それはヴェルも同じようで、終始ニコニコしていた。
「さてと、そろそろ帰るか」
「そうだねー」
現在の時刻は夕方。露店祭は終わりを迎えていた。
既に幾つかの店は片付けを済ませ撤収しており、昼間の賑わいが嘘のように静かになっていた。
「楽しかったな。来月も来たいくらいだ」
「僕もまた来たいな。屋台巡りもいいかもね」
「そうだな。次はアイツ等とも回ってみるのもいいかもな」
アイツ等とは当然、キリカ達のことである。
「そうだねー。それはそれで楽しそうだね」
と、そんな話をしながら歩いていると、怒号が聞こえてきた。どうやら噴水広場の方からのようだ。
「行ってみるか?」
「そうだね。さっき聞いてた話に関係してるかも」
ウォムのことはヴェルにも伝えてある。
噴水広場に近づくにつれ、何を言っているのかがはっきりと聞こえるようになった。
「てめぇ!それでも職人か!?」
「間違わないで欲しいですね、僕は商人です。貴方達みたいな職人じゃありません」
「喧嘩売ってんのか!」
「それはこちらのセリフなんですが」
「いい加減にしろよ、こっちも我慢の限界があんだよ!」
どうやら、俺達の予想は当たっていたようで、件の人物に筋骨隆々の男が詰め寄っていた。
「毎回毎回盗品を売り飛ばしやがって、てめぇのやってることは俺達職人の努力を踏みにじる行為なんだぞ!?」
「知りませんよ、そんなこと。そもそも盗品って何の証拠があって言ってるんですか。銘がない以上、ただの偶然でしょう?」
「てめぇがわざわざ消してんだろうが!」
「そんな手間がかかることしませんよ」
「こんの……!」
と、ゴリマッチョは拳を振り上げた。
いくら白々しい態度にムカついたといえ、流石に殴りつけるのはまずいだろう。これでは正論を言っていたとしても、ゴリマッチョが悪くなってしまうのではないのだろうか。
「止めるか」
「え?ちょ!」
ヴェルが何か言おうとしていたが、構わずゴリマッチョに向かって飛び出した。
「んな!」
「!」
すぐさま二人の間に割り込み、ゴリマッチョの拳を受け止める。
「流石に殴るのはまずいですよ。落ち着いてください」
「お、おう」
関係のない俺を殴ったことで、少し冷静さを取り戻したのか。ゴリマッチョは拳を下げた。
「誰だか知りませんが、助かりました。もう少しで理不尽な暴力を振るわれるところでしたから」
「てめぇ……」
「まぁまぁ、落ち着いてください」
「分かっている!」
しかしまぁ、白々しい態度にムカつくのもわからなくない。
「それで?どうしたんですか。仲裁した以上、これでおさらばというわけにはいきませんし」
「こいつが毎回毎回盗品を売り飛ばしてるから、それをやめるように言っているだけだ」
「ですから、盗品と言われても私には全く身に覚えがないのですが」
「じゃあ、あなたが売っている商品は自分で作っているんですか?」
俺の問いにウォムは首を横に振った。これには驚いた。
「先程もこの方に言いましたが、私は職人ではありません。商人なんです」
「?」
違いがよく分からないんだが。
すると、俺の表情を見て察したのか、ウォムは話し始めた。
「貴方の様子を見る限り、職人と商人は同じだと思ってるようですね」
「そうじゃないのか?」
「まぁ、一般的にはそう思われてますよ。ただ、私はそうじゃないんですよ」
「どういうことだ?」
「職人は自身で商品を作れる者で、商人は他人から商品を仕入れる者と私は思っています」
なんとも紛らわしい。
「なるほど。じゃあ、あなたが商人であるということは、あなたは他人から商品を仕入れているということですか?」
「そうなります。そして、これらの商品は半年程前から新たに見つけた仕入先から仕入れたものです。おかげで半年前から私は露店祭でも、そこそこ有名になれましてね」
「ん?半年前に初めて露店祭に参加したんじゃないのか?」
カシャンさん達はそう言っていたが。
「まぁ、半年前までは全く目立たない店でしたからね。半年前初めて参加したと思われても仕方ありませんが、一応もっと前から参加はしていました」
「ふむ」
「ですが、その新しい仕入先から仕入れた商品は尽く、そこの方のように幾人かの職人の方から文句を付けられましてね」
そこでウォムは仕入先を疑い、一度自身で調べたようだ。しかし、目の前で実際に作られた商品がいちゃもんを付けられたため、偶然であると思うようになったらしい。
「実際に調べたのです。ですから、その仕入先は信頼できますので、決して盗品を売っていることはありません」
「うーむ」
その仕入先で作った物がいちゃもんつけられたのは、盗品を真似て作ったという可能性がある。にも関わらず、ウォムは信用しきっている。少々疑うということを知らないのではないだろうかと思ってしまう。
まぁ、ウォムが話すことを全て信じるなら、ウォムが全て悪いというわけでもなさそうだ。
ひとまず、この場はゴリマッチョに我慢してもらうしかなさそうだ。
さて、ゴリマッチョになんて言って納得させるか、と悩んでいると意外なことにゴリマッチョの方から引いていった。どうやら、先程のウォムの話した内容を聞いて、ウォムに詰め寄っても無駄だと理解したようだった。
「名乗るのが遅くなりました。私はウォムといいます。お名前を伺っても?」
「ああ、ユリィだ」
「ユリィさんですね。本当に助かりましたよ、殴られそうになった時は内心ドキドキしていたんです」
「そんな風には見えなかったですよ。っとそれより、待たせている奴がいるので、これで」
ヴェルが噴水広場の入口で待っていたので、俺はそちらに駆け寄っていった。
「で?どうだったの?」
開口一番、ヴェルはウォムのことを聞いてきた。
「うーむ、ウォム自身は悪い奴じゃないんだろうが、如何せん商人としては人を疑うことを知らないように思えるな」
「つまり?」
「ウォムの仕入先が、アリシア周辺の盗賊と繋がっているみたいだぞ」
「なるほど……だから、ウォムと盗賊の間の繋がりが見えてこないんだね」
「そうなるな」
そしてウォムから聞いた話をヴェルに伝えながら、俺達は宿に戻っていった。
†
次の日の朝。
俺達は昨日と同じく、宿の一階に集まっていた。
「じゃあ、帰りの護衛は気をつけた方がいいね」
「ああ、そうしてくれ。あと、クレアも一緒に帰るそうだな」
「そうらしいね。クレアさんはクレアさんの馬車があるけど、護衛は雇ってないみたいだよ」
「それは初耳だな」
俺は昨日あったことをキリカ達に伝え、注意を促していた。
しかし、クレアが護衛を雇っていないとは、余程自分の力に自信があるのか?と思っていると、キリカが説明してくれた。
「ただ単に雇うお金がもったいないって思ってるだけだよ」
「なんじゃそりゃ」
「クレアさんは魔法が使えるからねー、無駄なことにはお金使いたくないんだって。というよりは無駄にお金を使えないというか」
「どういうことだ?」
「いや、ユリィ君も見たでしょ?クレアさんの店」
「ああ。なんというか、趣味全開って感じの店だったが」
大きなバスターソード然り、大鎌に鎖鎌、やけに重たいトンファー、極細のレイピアといった感じのラインナップで、訪れる客もそれを見て楽しむことがメインという感じだ。もはや店というよりは展覧会であった。
「あれのせいで、お金が無くなって行ってるんだよ」
「なんとまぁ……」
「でも、真面目に作ったらすごいんだよね、クレアさんって」
「へー」
「ま、そういうことで、護衛は基本的に雇わないんだって」
なるほどな。趣味に金を注ぎ込んでるから、護衛を雇えないと。……馬鹿なんだろうか。
「だから、一緒に帰るんだったら、一人か二人位はクレアさんの方にも気をかけておいた方がいいんじゃないかなって。もちろん、依頼主のカシャンさんが優先だけど」
「ま、それくらいならいいんじゃないか?」
ということで、クレアの護衛も視野に入れておくことにした。
そして約束の昼。俺達は西門に集合していた。クレアとカシャンさんがそこに合流し、グランに向け出発した。
クレアの馬車とカシャンさんの馬車はどちらも一般的な大きさの馬車であるが、並走できるほど道幅も広くないため、カシャンさんの馬車を先頭にしてその後ろにクレアの馬車が来るようにしている。
そして、現在カシャンさんの御者台にはテオが座っており、俺はクレアの御者台に乗っていた。
「ホントに申し訳ないね。本来なら、君達にこんなことしてもらうつもりはなかったんだけど。あとで報酬はちゃんと払うからね」
「ま、気にしなくていいさ。ついでだ、ついで」
「そう?なら助かるけどさ」
最初、クレアの御者台に俺達の中から一人乗せるという話をした時、クレアはそこまでしてもらうのは悪いと言って断ってきたのだが、盗賊の事がある以上万が一の事を考えて、クレアにも護衛を付けるという話をなんとかクレアに納得させた。
だから、クレアから報酬を貰うつもりはない。こちらから護衛を出す話を無理やり通したのだから、報酬を貰ってしまうのは間違っているだろう。
その日は特に問題なく、野営に入った。半日馬車を動かしたので、アリシアからはそれなりに離れた場所まで来ることが出来た。このまま何もなく、俺の心配は杞憂に終わるかと思われた。
しかし、問題は次の日の昼に起きた。
現在、俺がカシャンさんの御者台に座っており、後方のクレアの御者台にはキリカが座っている。魔物との戦闘は既に一度あったが、それ以外問題なく進んでいたのだが、右手方向に十五メートル程離れた場所に森がある場所を通りかかった時だった。
その森から一人の女性が駆け出してきた。着ている服はボロボロで、所々怪我をしているようで血が出ていた。そして、その女性を追うように三人の男が出てきた。見るからに盗賊といった風貌だ。
「あれは……」
「ユリィさん、助けましょう!」
カシャンさんはそう言って、御者台から降りようとした。その時、俺の索敵スキルに引っかかるものがあった。それは森の方から複数の殺気立った気配である。
「ちょっと待ってください、カシャンさんはここにいてください。俺が行きますから」
「ですが……」
「依頼主を怪我させるわけにはいきませんから。それにあれくらい俺一人で十分ですよ」
「わ、分かりました。ユリィさんに任せます」
俺は馬車の中にいるヴェルに声をかけた。ヴェルは状況を把握しているようだ。
「馬車の方は任せておいて」
「ああ、それと森の方から人の気配がする。しかも殺気立ってるから気をつけておけよ」
「人の気配?」
「キリカにも気をつけるよう伝えておいてくれ」
俺はそれだけ言うと、短刀を抜きながら盗賊の方へ向かっていった。
追われていた女性は近づく俺に気づき、こちらに駆け寄ってきている。そして、彼女とすれ違う形で俺は迫ってきていた男達の中で先頭に来ていた奴の腹に短刀の柄尻をめり込ませ、動きを止めた。その間に他の二人を峰打ちで昏倒させ、最初に動きを止めた奴にも峰打ちをし、昏倒させた。
「あ、ありがとう、ございます……」
「大丈夫ですか?」
追われていた女性は、安心したのかその場に蹲ってしまった。俺はそれに近づき、傷の具合を見ようとした。
その時だった。突然女性が顔を上げたと思ったらその手には短剣が握られており、俺に向かって突き出してきた。
「おっと!」
「ちっ」
まぁ、なんとなくそんな気がしてたんだけどな。森から殺気立った気配がする時点で、彼女は護衛の数を減らす囮であることは予想がつく。
「避けられるとは思わなかったな」
女性は手にしていた短剣を捨て、昏倒している男達から長剣を二つ取った。どうやら二刀流のようだ。
「さてと、本気で行きますか!」
彼女がそう言って俺に切りかかってくるのと同時に、森からも多くの盗賊達が出てきた。ざっと見るだけでも三十人以上はいるだろう。
「大勢でご苦労なこった」
「余裕かましてるのも今の内だ!」
「ユリィ!大丈夫!?」
ヴェルが大声でこちらに声をかけてきた。
「大丈夫だ!すまんが、馬車の護衛は任せたぞ!」
「オッケー!任せといて!」
俺は斬りかかってきた女性の相手をしながら、ヴェルに答えた。
さて、いっちょやりますか!
さて次回は戦闘をメインにするつもりです。
とりあえず、今考えているのはユリィ視点とヴェル視点です。
更新は今日中に出来ればしたいと思っています。では。




