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第十話

 遅くなりました。

 では第十話、どうぞ。




 


 翌日、俺達は昨日取った宿屋の一階にて朝食を採っていた。テオとノアはぐっすり寝れたようで、昨日の疲れは残っていないようだった。キリカとヴェル、俺はそもそもそんなに疲れが溜まっていなかったため、いつも通りの体調である。

 それにもかかわらず、ヴェル一人だけが沈んだ顔をしていた。理由はなんとなくわかる。


「ヴェル?わかっているな?」

「わかってるよ……くそぅ」


 昨日、この宿を取った時受付にいたのはいわゆる看板娘というやつで、美しいというよりは可愛いという言葉がしっくり来るような女性だった。

 当然、そんな女性を前に黙っているヴェルじゃなかった。


「嗚呼!なんて可愛らしいお嬢さんだ!よろしければ、お名前を伺っても?」

「え?えっと、マリです」


 流れるように、マリの手を握り名前を聞くヴェル。まぁ、手を握るくらいなら、制裁を加える必要もないだろう。そう思って何もしなかった。

 するとどういう流れでそうなったのか分からなかったが、こともあろうに出会ったばかりのマリのお尻を触ろうと手を伸ばしていることに気がついた。


「ヴェル?」

「ひぃっ!」


 俺はすぐさまヴェルの頭を掴み、マリから引き剥がした。


「すいませんね、マリさん。こいつが困らしてしまって」

「い、いえ……」


 と若干頬を赤らめながら満更でもない様子を見せるマリ。まぁ、お尻を触ろうとしたことに気づいていないみたいだし、ヴェルは容姿だけはイケメンだからな。そんなヴェルから可愛いと言われたのだ、悪い気はしていないようだった。

 もちろん、あとでヴェルには制裁を加えておいた。宿にいた人はその日、ヴェルの叫び声を聞くこととなった。まったく、近所迷惑でしょうが。

 そして、その後も何度かマリへのセクハラを行おうとしていたヴェルだが、尽く俺とキリカに阻止されていた。そのせいで、現在ヴェルの表情は若干だが暗い。さっきもマリが近くにいたので、注意を促した。


「じゃあ今日は自由行動としましょうか」


 キリカはヴェルの方をチラリと見ただけで、特に反応を見せず話しだした。まぁ、自業自得だしな。


「じゃあ、ノア!私と一緒に回ろ!」

「うん!」


 テオとノアは露店祭が楽しみなのか、ヴェルの様子には全く気が付いていない。


「キリカはどうするんだ?」

「私は適当に回るつもりだよ」

「一人でか?」

「うん、そのつもりだよ」

「そうか、わかった」


 キリカは一人で回るつもりらしい。これで俺も一人で回るとなると、ヴェルの監視が出来ないな。まぁ、キリカは今までヴェルの尻拭いを一人でしてきたみたいだし、俺がヴェルと一緒にいればいいか。


「じゃあ、早速行ってくる!」


 テオ達は朝食を既に食べ終えていたみたいで、二人は露天祭に向かった。


「じゃ、私も行くかなー」

「おう」


 そして、キリカはヴェルには見えないように、ジェスチャーで俺に謝ってきた。それに俺は軽く手を挙げ答えた。


「さてと、ヴェル。俺達も行くか?」

「そうだね……」

「ったく、ほら行くぞ」


 俺はヴェルの手を引っ張り、席を離れた。


「ヴェルは露店祭に来た事あるのか?」

「うーん、あるけどそんなに詳しくないよ」

「そうか……なら」


 俺はヴェルを引き連れマリの近くまで行き、話しかけた。


「マリさん、ちょっといいかな」

「は、はい、なんでしょうか」


 マリはヴェルを見て頬を赤らめている。どうやら昨日のヴェルの賛辞がまだ効いているようだ。


「いや、こいつと露店祭を回ろうと思っているんだけど、俺達どっちも詳しくなくてね。何か面白い情報がないかなと思って」

「な、なるほど。そうですね、ここから北の方にある噴水広場周辺には露店祭の古参の方々が多くいますので、そこではかなりいい品物が売られているそうですよ」

「へー、噴水広場か。そこ行ってみるか?」

「そうだね。ちなみにどんな物売ってるか分かるかい?」


 段々と普段の調子に戻りつつあるヴェルは、マリに尋ねた。


「うーん、古参の多くの方は基本的に武具類を売っているそうなので、おそらく武具類がメインになるかと」

「武具か、うんいいね。いってみようかユリィ」

「なんだ?やけに武具に反応してるが」

「まぁね。武具類って作り手の性格が結構出るから、見てると楽しいんだよね」

「ふーん」


 まぁ確かに芸術系ってその人の性格出るし、見てて楽しいのはなんとなくわかる。


「あのー」


 そうしているとマリが言いにくそうに、俺達に話しかけていた。


「お二人って、その、お付き合いされているのですか?」

「はぁ!?」

「へっ!?」


 マリの発言に俺とヴェルは同時に素っ頓狂な声を上げた。


「い、いえ、その、部屋割りとか、露店祭を二人で回られるみたいですし……って、失礼なことをお聞きしました、忘れてください」

「いやいやいや!ちょっと待て!冗談じゃない!俺は男だぞ!?」

「そうだよ!最初は僕も信じれなかったけど、ユリィは間違いなく男だよ!?」

「へっ!?」


 今度はマリが素っ頓狂な声を上げる番だった。その後、茹で蛸のように顔を真っ赤にしたマリに、何度も謝られたのは言うまでもない。





   †





「まったく、まぁいい。とりあえず、噴水広場に行くか」

「そうだね」


 途中色々な店を見ながら噴水広場まで向かうことにした。

 露店祭なんて言うから、アクセサリーとか武具類ばっかりだと思っていたが、屋台も多く出ていたのには驚いた。食べたばかりであったが、いくつかの食べ物をついつい買ってしまった。


「む、これもうまいな」

「うんうん、これも美味しいね!」


 今食べているのは串焼きのような物で薄く塩で味付けがされているだけなのだが、素材がいいのか旨味たっぷりであった。


「前来た時は、武具類の店を見てただけだったけど、屋台もいいね」

「さっき朝を食べたばっかりなのに、食が進む」

「うーん、これは食べ過ぎてしまいそうだね」

「気を付けようじゃないか」

「うん、そうしよう」


 俺とヴェルは笑いながら、通りを北に向けて歩いた。途中いくつかの武具店を見たが、ヴェル曰くダメダメらしい。


「うーん、どれも数を揃えるのに躍起になったって感じがするねー」

「へー、よくわかるな」

「まぁね。それだけ武具店を見て回ってるからねー。それにいい武具店に巡り合ったら、そことの繋がりを持つチャンスだし」

「ふむ、確かにそれはいいな」

「でしょ?」


 そうこう言っている間に噴水広場についた。

 そこは多くの人で賑わっていた。ほとんどが冒険者である。まぁ当たり前か。


「へー、どこもすごいね」

「ん?」

「ほら、あそこなんてすごいよ?」


 ヴェルが指さした方向には黒山の人だかりが出来ていた。


「よっぽどいい武具店なんだろうね」

「行くか?」

「うーん、如何せん人が多すぎて行く気にならないねー」

「同感だ」


 いくつかの店を見て回ったが、やはり古参というだけあって品質はかなり良いみたいだ。


「うーん、あの人だかりのところ以外は一通り見たね」

「そうみたいだな」

「じゃあ別の場所に行こうか」

「そうだな」


 未だに人だかりが出来ていたため、俺達は別の場所に移動した。

 噴水広場から少し外れた通りに出ると、噴水広場ほど賑わってはいなかった。


「やっぱりあの広場がダントツで賑わってたんだな」

「うん、みたいだね」


 その通りを歩いていると、カシャンさんのアクセサリー店が見えてきた。


「カシャンさんじゃないですか」

「おお、ユリィさんにヴェルさんですか。先程までキリカさんがいらっしゃてたんですがね」

「あらら、入れ違いになったか」

「お、アンタ等がキリカちゃんが言ってたメンバーか」


 と、カシャンさんの横に店を構えていた女性から声をかけられた。


「で、でかい……!」

「あぁ、でかいな」


 どうやら彼女の店は武具店のようで、商品の中でも一際目立つ大きなバスターブレードがあった。長い刀身に長い柄。なかなかにバランスが取れている一品だ。


「ユリィもやっぱり男の子だね!あのでかいのに反応するって」

「まぁな」


 馬鹿でかい武器を振り回して敵をなぎ倒すってのは、一種のロマンだろうからな。


「一種の凶器だよね、あれは!」

「……ん?」


 そんな分かりきってることだろうに。

 と思ってヴェルの視線を追うと、そこには女性のたわわに実った二つのメロンがあった。


「……」


 ここで俺はヴェルとの食い違いを理解し、腹パンでヴェルを沈めた。


「り、理不尽だ……」

「バカ野郎、俺はあのバスターブレードのことを言ってたんだ」

「ははは!キリカちゃんの言う通り面白いね、君達!」


 この女性、名前はクレアというそうで、カシャンさんと同じ師匠の下で修行した身のようだ。そして、キリカとは知り合いだそうで、キリカから俺とヴェル、テオ達二人のことを聞いたようだ。


「クレアさん、さっきはヴェルがすいませんでした」

「いやいやいいよ、気にしなくて。それと、クレアって呼び捨てにしていいよ。敬語もなくてよし」

「そうか、じゃあそうさせてもらおうかな」

「それよりさ、ユリィ君。君って本当に男の子なの?」

「俺は男だ」

「ごめんごめん、そう不貞腐れた顔しないで」


 どうやら、気付かないうちに不貞腐れた顔をしていたようだ。


「いやー、ホント女の私が羨む位、綺麗な顔立ちだしね」

「そう言われても嬉しくない」

「あはは、ごめんよ。で、その子はほっといてもいいの?」


 クレアは倒れているヴェルを指差している。


「あー、気にしなくていい。そのうち復活するだろ」

「ふーん、じゃあいいや」


 随分とドライな対応であった。


「ふむふむ」


 すると、突然クレアは俺の体を上から下まで何度も眺め始めた。


「な、なんだ?」

「いやね。なかなか面白い装備だなって思ってね」

「どういうことだ?」

「その防具、というよりは服かな。一見普通の服だけど、よく見ると特殊な方法で作られてるみたいだねー」

「見ただけで分かるのか?」

「まーね。これでも目は肥えてるからね」


 そう言って眺めるのをやめたクレア。


「特殊な方法で作られてるから、そんじょそこらの防具より随分と性能はいいみたいだね。特に速さを重視している人向けの防具ってところかな」

「すごいな、そこまで分かるのか」

「クレアさんはすごいですよ。正直噴水広場のウォムよりも数倍腕はいいですよ」

「カシャンさん、褒めすぎだってば」


 話を聞いていたカシャンさんが横からクレアのことを褒めた。


「ウォムって誰だ?」

「あら、今結構有名人なんだけど知らないのね」

「あー、まぁな。そっち方面には詳しくないんでな」

「じゃあ、噴水広場は見てきた?」

「ああ、見てきたぞ」

「そこでさ、一際賑わってた店分かる?」

「あー、あれか。人が多すぎて見るつもりは起きなかったな」

「そうそう、そこで露天開いてるのがウォムって言ってね。様々な種類の武具、防具、アクセサリーまでを取り揃えてる店なんだよ」

「ほう、それはすごいな」

「ねー。しかも派手な装飾の物もあれば、性能重視の物まであると」

「古参揃いの噴水広場であれほど賑わうってのは、余程凄いんだろうな。ウォムって奴は」


 と俺が納得していると、クレアとカシャンさんが声を潜めながら言った。


「しかしですな、彼は露店祭の古参ではないのです」

「は?」

「そうですね……大体半年程前から参加し始めた新参者ですな」

「でね、ウォムには黒い噂もあるのよね」

「黒い噂?」


 ウォムの店で売ってるものは盗品であるという話であった。

 なんでも一度、彼の店に乗り込んできた奴が「盗品を売って恥ずかしくないのか!」って騒いだということがあったそうなのだ。乗り込んできた奴が言うには、露店祭の行きに盗賊に襲われ品物を失い、その次の露店祭でたまたま見かけたウォムの店に、自分が作った物が並べられており、激怒したのだそうだ。

 しかし、いくら調べてもウォムと盗賊の繋がりが見えて来ず、逆に乗り込んだ奴に罰が下されたそうだ。


「で、その男だけなら偶然で片付けられたんだけどねー」

「その口調だと、他にもいる訳だな」

「そうなんだよね。しかも被害に遭っているのはどれも、古参、もしくはそれに準ずる人達で、実力のある人達ばかりなんだよね」

「それはもう黒確定じゃないか?」

「しかしですな、大きな証拠が全く出てこないのですよ」

「証拠ねー」


 証拠は既にある。しかし、証拠としては弱いようだ。

 まず、古参、もしくはそれに準ずる実力のある人達が自分の作った商品がウォムの店に並べられているのを見ていること。しかし、銘は尽く消されているため、ウォムが偶然と言い張ればそこまでである。

 次に、アリシア周辺の盗賊被害が出始めたのが約半年前。ウォムが売れ出したのも半年前。時期が一致していること。これもウォムが偶然だと言い張ればそこまでである。


「銘が消されているのは痛いな」

「そうなんだよねー、それさえ残ってれば確実に捕まえれるんだけど」

「まぁ、盗んでから一ヶ月後の露店祭に出すってことは、一ヶ月の間は銘を消す作業をしてるんだろうな」

「でしょうなぁ」

「しかし、実力ある人達だけ狙うってことは、露店祭で下見でもしてるんじゃないか?」

「うーむ、そうかもしれませんな。被害にあった何人かはウォムが実際に自分の店に来たと言っていましたし」

「む」


 と、話をしていると何処からか視線を感じた。

 その方向を見ると、一人怪しい奴が路地裏からこちらを見ていた。フードを深く被っているせいで、顔も性別も分からなかった。

 しかし、俺が視線を向けると路地裏に消えていった。


「なんだ、あれ」

「どうかしましたかな?」

「いや、何でもない」


 もしかしたら、さっきの奴が下見をしているのだろうか。一応、帰りの護衛には気をつけておこう。


「ま、クレアも帰りは気をつけて帰れよ?」

「あ、言ってなかったね。私もグランに帰るんだよね」

「へー。そうなのか?」

「うん。ちょっと前までは依頼で素材集めに行ってたんだけど、ちょうど集まったしそろそろ帰ろうと思ってね」

「素材集めって、自分で集めてるのか?」

「そうだよ。私こう見えても強いんだから」


 そう言って力こぶを作るクレア。まぁ力こぶあんまり出来てないけどな。


「クレアさんは魔法を使うんですよ」


 力こぶが出来てない事に突っ込もうかどうか考えていると、カシャンさんが補足してくれた。


「なるほど」

「じゃあ、帰りはよろしくね。ユリィ君」

「護衛料はもらうぞ?」

「たはは、そう甘くないか」

「こっちだって仕事だからな」

「ま、大丈夫だよ。何かあったら私も戦えるしね」

「そうか。ま、危なかったら助けるよ。その時はきちんと料金貰うがな」

「わぉ、意外とユリィ君、商人に向いてるかもね」

「冗談だ」


 その後もヴェルが復活するまで、カシャンさん達と話していた。

 その時気がついたが、どうやら二人の店は知る人ぞ知る隠れた名店のようだった。



 

 最近本当に寒いですね。

 寒すぎて一度体調崩しかけました。ホント、寒いのは苦手です……。

 皆様も体調管理にはお気をつけください。


 次の更新は出来れば今日中にしたいと思います。

 出来なかったらすいません。では。




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