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第九話

短いですがどうぞ。



 



 早朝。俺は宿に一週間程依頼でいなくなることを伝え、東門へと集合していた。

 テオとノアはまだ眠そうな顔をしていた。


「おはようございます。依頼を引き受けてくださった方々ですね?」

「はい、よろしくお願いしますね」

「いえいえ、こちらこそ」


 今はキリカと依頼者の商人であるカシャンさんと挨拶を交わしているところだ。

 カシャンさんは中年太りという言葉がぴったりなふくよかな体型をしていて、適度に装飾されたブレスレットを身につけていた。どうやら話を聞いていると、カシャンさんはアクセサリーを主に売っているようだ。


「それでは、皆様には一人私と共に御者台の方に来てください。それ以外の方は馬車の中にどうぞ」

「わかりました。じゃあ、御者台の方は交代制にして、三時間ごとに交代でいいかな?」


 キリカの提案に反対する者はいなかった。


「じゃあ、まずは私が御者台に行くよ。皆は馬車の中で後方に注意しててね」

「わかった」


 こうして、俺達を乗せた馬車はアリシアに向けて出発した。

 馬車の中にはアリシアの露天で出品されるであろうアクセサリーが数多く置かれていた。


「しかし、随分と信用されてんだな」

「どゆこと?」


 馬車に乗ってしばらくするとテオとノアは寝てしまったが、ヴェルは起きていたため俺の独り言に反応した。


「いやなに、商売道具がこんなにたくさんあるところに、冒険者を乗せるのが不思議でな」

「んー、つまりユリィは冒険者をこんなところに乗せたら、盗みを働く奴が出てくるってことをいってるのかな?」

「まー、そうだな」


 こんだけたくさんあるんだ。一つぐらいくすねてもわからない、なんて考える奴もいるんじゃないか?


「うーん、それはないかな。だって商人達って、商品の数をどういうわけか完璧に把握してるし、一つでもなくなってたら護衛をしてくれた冒険者が盗んだのはすぐわかるでしょ?」

「そういうもんか?」

「そういうもんだよ。それにそんなことが起きれば、その冒険者はギルド側から罰が下されて、もう冒険者稼業を一生出来ないようになるし」

「へー」

「目先の小さな利益に目が眩んで、一生冒険者稼業が出来なくなるのがどれだけ手痛いことかは馬鹿でもわかるよ」

「ちなみに、いままでにそんな冒険者っていたのか?」

「いたみたいだよ?随分と昔のことみたいだけど」

「なるほどなー」


 雑談しながらも、俺とヴェルは馬車の外にちゃんと注意を向けていた。仕事もしっかりしないとな。


「ところでさ、ユリィって極東の人なんでしょ?」

「ん?まぁそうなるな」


 唐突になんだ?


「極東ってどんなところなの?」

「どんなところって言ってもな……」


 俺は知らないんだが。下手に何か言うよりは、適当にごまかしておいたほうがいいだろう。


「俺は山の中で育ったし、よく知らないんだ」

「山の中で育った?」

「そうなんだ」


 大昔ダイスケから聞いた小説の話を参考にしよう。


「なんでも、捨て子だったみたいでな。山の中に捨てられていたみたいなんだ。んで、山に住んでた人達に拾われてから、そこで大きくなったんだ」

「そ、そうだったんだ」

「極東つっても、俺が知ってるのはその山だけなんだ。期待に添えなくてすまんな」

「いや、いいよ。突然聞いたのも悪かったし」


 それから色々と雑談をしていると、交代の時間が来たようでヴェルが先に御者台に行った。


「や、ユリィ君」

「おつかれ」

「ありがと。それにしても、ヴェルと仲良く話してたみたいだね」

「おっと、聞こえてたのか」

「ヴェルと仲良くなってくれるのは私としても嬉しいから、いいんだけどね」

「あれでセクハラがなかったら、もっと仲良くなれてたんだろうがな」

「言えてるね」


 俺の言葉に、苦笑いしながら頷くキリカ。


「ま、ヴェルと仲良くしてやってよ。あー見えて、友達が私くらいしかいない奴だからさ」

「俺でよければな」

「ちょっと、キリカ!聞こえてるよ!?友達いるからね?他にもいるからね?」


 当然の如くスルーされるヴェルの抗議。

 それから少ししてテオとノアも起き、ヴェルの担当時間が終わったところで、一度休憩を取ることになった。






   †





 今、俺は御者台でカシャンさんと並んで座っていた。時刻は夕方。辺りも暗くなってきていた。


「そろそろ、野営の準備を始めたほうが良さそうですな」

「そうですね。じゃあ、野営出来そうな場所を探しましょうか」


 野営に向いている場所を探しながら馬車を進めていると、カシャンさんが話しかけてきた。


「唐突ですが、ユリィさんでしたかな?その指輪、素晴らしいですな。アクセサリー商としては気になる逸品ですぞ」

「あ、ああ。これですか」


 俺の右手の中指に付けられている指輪。これは転生時に神様からもらった物なんだが、そのまま言えるはずもない。言ってしまえば、頭のおかしい人になってしまうだろう。


「たまたま見つけた物ですよ。自分でも掘り出し物だと思ってます」

「ほう、たまたま見つけたのですか。では、おそらくアーティファクトの一種でしょうな。その指輪から凄まじい魔力を感じますからね」

「そうみたいですね」

「そのですな、突然ですがユリィさんがよろしければ、その指輪、私に譲ってはもらえませんか?そこまでのアクセサリーは正直見たことがありません」

「すいませんが、これは誰にも譲るつもりはありませんので」


 なんてったって、一度とはいえ身代わりになってくれる指輪なのだ。手放すわけには行かない。


「そうですか……残念です」


 どうやらカシャンさんも諦めてくれたようだった。

 その後、無事野営地を見つけることができ、野営の準備に取り掛かったのだった。


「そういえば、なんで五人用の依頼にしたんです?」


 野営の準備をしながら、カシャンさんに問いかけた。


「最近アリシアの周辺で盗賊被害が相次いでいるみたいなので、最低五人は欲しかったのですよ」

「盗賊被害か」


盗賊被害ってのもやっぱりあるんだな。


「本当なら護衛にもう少し雇いたかったんですが、最近やっと自分の店を持つことができましてね。その出費のせいで五人が限界でしたので」

「なるほど」


 ん?でも、カシャンさんってアリシアの露天では常連だったよな?

 そのことを伝えると、カシャンさんは笑いながら答えてくれた。


「あぁ、そのことですか。実はですな、アリシアの露天祭は誰でも露天を開けるのです。私の師匠は、私にアクセサリー作りを教える一方で、実地で販売力を鍛えるのも大事だぞ、と仰って私をアリシアの露店祭に連れて行ってくださったのです。それがきっかけで、露店祭には毎回参加していました」

「なるほど、それで気がついたら常連になった、と」

「そうなんです。実際に自分の手で作った物が売れていくのは、非常に嬉しかったですよ」

「自分で作った物が評価されるのは、確かに嬉しいですよね」


 俺だって自分で作った物が評価してもらえたら嬉しい。


「しかしまぁ、一ヶ月ごとですからね。最初の頃は数を揃えることばかりに気を取られてしまい、一度師匠にはキツく怒られてしまいましたよ。そんな粗悪品を売るつもりか、と」


 でもそういった失敗があったからこそ今があるんですがね、と笑うカシャンさん。

 野営の準備が済んだ後も、カシャンさんとの会話を楽しんでいた。





   †





 グランを発ってから二日とちょっと。道中二、三度程、魔物との交戦があったものの、特に問題なく進むことが出来たようで予定通り、アリシアが見えてきた。


「予定通り着きましたな」

「そうですね」

「では、私は場所取りに行きますので、これで。皆さん、露店祭楽しんでくださいね」

「はい」


 アリシアに入るとすぐにカシャンさんは、明日の露天祭に向けて場所取りをしに行った。露店祭が終わった翌日は昼に西門へと集合し、アリシアを発つ予定となっている。


「さってと、私達も宿を取りましょうか」

「お尻痛いよー」

「テオちゃんっ、人前だよっ」


 ウガーっと空を仰ぎながらお尻をさすっているテオに、若干顔を赤くしながら注意を促すノア。二人共の顔には疲労の色が濃く浮かんでいた。どうやら、馬車での長時間の移動は初めてだったらしく、疲れがたまっているようだった。


「テオちゃんお尻痛いの?僕がさすってあげようか?」


 ヴェル、いい笑顔でセクハラしてんじゃねぇよ。そんなヴェルとこちらに黙って視線を向けてきたキリカからは流石というべきか、疲れは感じられなかった。

 そして、キリカよ。その視線の意味は、ゴーサインだと受け取っていいんだな?

 まるで俺の考えていることがそのまま伝わったかのように、キリカはにこやかに頷いた。

 この間僅か一秒。


「いい度胸だ、ヴェル」

「ハッ!?しまった、ユリィの存在を忘れてだぁっぁぁぁぁぁああ!!痛い痛い痛い!!」


 俺は逃げようとしたヴェルの頭を掴み、そのまま力を込めていった。


「ギブギブ!!もう許して!」


 キリカに視線を向けると、静かに首を横に振った。


「だとよ」

「ミギャアアアアアア!!」


 更に力を込めた。あれ、なんか楽しいぞ?

 後にテオとノアが語るには、この時の俺とキリカは恐ろしい程ににこやかだったらしい。




 

 前回のプロフィールについてですが、熟練度=レベルといううわけではありません。

 今はレベルの方について、明確に書くということは敢えてしないようにしようと思っています。ただ、書いていく中で必要だと感じた場合は書こうと思います。


 次話の投稿は一週間以内にできればいいなと思っております。では。

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