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召喚された少女は何もしたくない。  作者: シルクティー


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2/4

晩餐会

とても暖かい。

こんなに暖かい気持ちで眠るのは一体いつぶりだろう。


いつもは、家に帰ってきて、ほぼ気絶するようにベッドに沈んでいるからこそ、気持ちよく感じる。


「・・・じょ様・・・」


遠くで何やら声が聞こえるが、この気持ちよさには抗えない。


「まだ寝る・・・」


「いけません!!起きてくださいませ、聖女様!!」


突然のはっきりとした声に驚いて一気に覚醒する。


「え、誰?ここどこ?」

「とてもお疲れのようですね。聖女様。まもなく、晩餐会が始まりますので、準備をいたしましょうか。」


(ああ、思い出した。めんどくさい。寝ていたい。)


だが、寝ているわけにもいかない。今夜の晩餐会では何やらこの国の皇帝にお目通するらしく、欠席はおそらく許されない。


「あまり気乗りしていないご様子ですね。何か気掛かりなことでもございますか?」

「あ、いえ、そう見えますか?」

「はい、先ほどから小さなため息が」


笑顔で指摘されてしまった。流石に気を抜きすぎてるか。

皇帝の前でため息なんて許されないからこそ、今から気をつけなければ。


その後も、着々と準備は進められ、あっという間に私はおめかしされていた。


「すごい・・・。私じゃないみたい」

「聖女様のお肌はとても綺麗でしたし、目鼻立ちもしっかりしているため、薄化粧でもとても映えますね。」


元々肌は荒れにくいし、おばあちゃんが外国人だった影響がいいように作用していたらしい。


今までは、最低限の眉を描いて血色リップを塗っただけの手抜きメイクで出社していたおかげで、しっかりメイクをした自分の顔を見るのは学生以来。

これでも、学生時代はオシャレに精を出していたんだけどな。見る影も無くなってしまった。


「ありがとうございます。久しぶりに、しっかりメイクをしました。」

「それでは、これからはメイクも楽しみましょうか。」


ああ、ここでは、意外にしっかりメイクをされる予感がする。めんどくさいな。


「聖女様、晩餐会のお時間になりましたので、お迎えにあがりました。」


3回のノックの後、聞こえた声はおそらく、護衛騎士の方だろう。一人一人につけられていた気がする。


「かしこまりました。すぐ行きます。」


重い腰を持ち上げ、騎士様の案内のもと、晩餐会の会場に向かう。


後ろには準備を手伝ってくれたメイドさんもついてきてくれている。


(あ、名前聞くの忘れた。)


「そういえば、名乗ってませんでしたね。私、千葉遥っていいます。遥って呼んでください。」

「あら、失礼いたしました。私は、メイリと申します。ハルカ様の専属の世話係に任命されております。」


様はやめてと言っても、きっと彼女はやめてくれないだろう。

こちらは聖女として召喚されてしまったわけだし。


「つきましたよ。皆様、すでにお待ちのようです。まいりましょうか」


まじか。まさか一番最後につくことになるとは。以後気をつけよう。


ドアマンが開けた扉の先には、大きなテーブルにたくさんの料理がずらりと並べられていた。


座っている面々に目をやると、一緒に召喚された女の子二人と、案内役の第一皇子、そのほかには、とても綺麗な女性が二人に、少し若めの男性が二人、上座にはおそらく皇帝と思われる貫禄のあるイケオジ。


「遅くなってしまい、申し訳ございません。」

「いや、私たちが早く来すぎてしまっただけなのだ。気にしないでほしい。」


イケオジにそう言われてしまえば、何もいえなくなってしまうため、ありがたく席につかせてもらう。


「それでは、食事を始める前に、自己紹介と行こうか。」


にこやかな顔でそう告げるイケオジ。


「私が、ここグレルソン帝国で皇帝をしている、アルフレッド・グレルソンだ。」

「妻の、セイヴェル・グレルソンです。聖女様方、よろしくお願いいたします。」


やっぱり皇帝だったか。その横に座っているのは皇后様でしたか。


「こちら、息子たちですわ。」

「私が、第一皇子の、アレクセイ・グレルソンだ。改めて、よろしく頼む。こっちは、婚約者のレイチェル・グレイクだ。」

「よろしくお願いいたしますわ。聖女様方」


案内役の第一皇子様の隣にいたのは婚約者様でしたか。と言うことは、次期皇后か。絶対に粗相はできない。気をつけよう。


「どうもー。僕は第二皇子、アルフォード・グレルソン。聖女様たちみんな綺麗だね。」

「第三皇子、アルバート・グレルソンだ。よろしく」


この二人は、これまた顔がそっくり。双子率高すぎない?

そんでもって、第二皇子は軟派すぎやしないか。第三皇子は少しお堅そうだし。似てるのは顔だけか。わかりやすくてありがたい。


婚約者が同席していないと言うことは、今はいないと考える方が妥当かな。


「藤みつるです。」

「藤みちるです。」


こっちの双子は顔もそっくり、テンション感も似ている。

見分けるポイントは髪だけか。みつるさんがロングヘアで、みちるさんがショートヘア。髪型が違くて助かった。


「あ、千葉遥です。よろしくお願いいたします。」


なんだか、最後に挨拶するの、苦手だな。


「これから、長い付き合いになるだろう。皆、よろしく頼む」


皇帝のこの一言を合図に、給仕のメイドさんたちがテーブル上にある料理を取り分けてくれる。


(わぁ、美味しそう。こんな豪華な料理、初めて食べる。)


瑞々しそうな葉野菜たっぷりのサラダに、ローストビーフ、スープはツヤツヤでとにかく美味しそう。


「ん、美味しい」


一口食べれば、たちまち笑みが溢れるほどに美味しい料理。

ブラック企業でボロボロになった心身によく染み渡る。


「ハルカ殿は幸せそうに食べるな。料理長も喜ぶよ。」


皇帝陛下にそう指摘され、恥ずかしさのあまり、赤面してしまう。

お恥ずかしながら、胃に入ればなんでもいいと思い、ここ数年は適当にカップ麺やらレンチンご飯やらばかりで過ごしていた。だから尚更、幸せを感じれると言うものだ。


「調理場の皆さんに直接お礼したいしたいくらいです」

「ですね。本当に美味しいです。」

「このレベルを食べられるのは、高級ホテルくらいですよね。」


私のコメントに賛同してくれたのは、双子の少女たちだった。

感覚的には、きっと普通の大学生くらいだろうと思っている。


「ちなみに、遥さんは学生さんですか?」


みちるさんからの素朴な疑問。

しかし、その質問に私は少し項垂れた。


「一応、24歳の社会人です」


半泣き状態で答える私に慌てるみちるさん。


「え、あ、ごめんなさい!お若く見えたので」

「気にしないでください。慣れてるので」


昔からの悩みの種の一つが、この顔と身長。

あまりにも童顔な垂れ目気味の目に、150㎝ちょいしかない身長。高校を卒業しても、全く身長が伸びず、悩んでいた。

正直、社会人には到底見えない子供顔だ。


「ということは、働いていたんですよね。どんなお仕事されてたんですか?」


これは、話さないといけないのか。あまり、ここに来てから、思い出さずに済んでいた仕事の話題。


「広告系のお仕事を・・。」


あまり深く話したくなくて、あからさまな雰囲気を出してしまった。

(ミスった)

少し空気が悪くなってしまった。


「二人は?学生さんだったの?」


空気を塗り替えるように、明るくふたりに問いかける。


「はい、大学2年生でした」


ということは、今は20歳か。キラキラしていたはずなのに、急にこんなことになって、残念に思ってないのかな。


話を聞いていると、二人は学生生活を満喫しつつ、趣味の時間に没頭することも多かったらしい。それも、乙女ゲームなるものに没頭してらしく、今時の女の子だなあと若干の歳の差を感じてしまう。


「皆様、昼間に皇城内の案内を受けたとお聞きしましたわ。気になったところはございましたか?」


気になったところか。私は本を読むのが好きだったから、図書室が気になっていたけれど、二人はどうだったのかな。


「私は、食堂ですかね。と言っても、厨房の方に興味があるだけなんですけどね。」

「私は、お庭が好きですね。たくさんの花が咲いていて、とても興味深かったです。」


みつるさんが食堂、みちるさんが庭園か。

二人の大学の話を聞いてると、みつるさんは料理に興味があって、みちるさんは植物研究に興味があると言っていた。


「私は、図書室ですかね。蔵書数が多くて、全部読んでみたいです。」


あの本の山に一度でいいから埋もれたい。


「それでは、後日、料理長や庭師、司書長に案内させましょう」

「いいんですか?」


初めて、私たちの声がハモった。

全員、自分の興味があることにはもっぱら弱いらしい。


その後も、会話は途切れることを知らず、楽しく食後のティータイムとなった。


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