召喚
真っ白の光に包まれたかと思い、目を開けば、周囲にはたくさんの人がいる。
「何、ここ」
豪華なシャンデリアに赤い絨毯が引かれている、城の広間のようなこの場所。
辺りを見渡せば、年齢が近そうな少女が2人。
呆気に取られながらも、目を輝かせている様子の2人に、何やら気が重くなるような嫌な予感。
悲しいことに、自分のこういう時の勘は嫌というほど当たる。
◇◇◇
一人暮らしの部屋に、小さく響くタイピングの音
「何が楽しくて家にまで仕事持ち帰ってるんだろう」
ようやく残業が終わるというタイミングで上司が持ち込んできた追加の業務。
にこやかな顔で、渡してきたと思ったら、もう会社閉めるから、家で進めてもらってもいいかの一言。
眠たい目に力を入れつつ、なんとか手を動かしているが、頭は全く働いていない。
明日の12時が締め切りの仕事をどうして前日の残業後に持ってくるのか。頭がおかしいんじゃないかと思うが、このブラック企業に入社してしまった自分の落ち度だ。
家に帰ってきてかれこれ5時間。ようやく終わりが見えてきた。
「これで、終わりか、。」
出来上がった資料を上司宛のメールに添付してなんとか仕事終了。
Enterを押すと同時に、何やら当たりが眩いくらいに明るくなる。
「え、なに」
あぁ、もうだめだ。意味がわからない。
◇◇◇
(一旦、寝てもいいだろうか。気絶したい)
残業続きで寝ることができていない私の頭はもう何も働いていない。
「召喚の儀が成功したと聞いた!!」
大きな物音を立てて入ってきたのは何やら偉そうな黒髪の男性。
「そなたらが聖女か!」
(聖女?何それ。ゲームか何かですか??)
目の前の人間はどこか頭がおかしいのだろうか。
聖女なんて、アニメやゲームでしか聞かない単語である。
「私たちが、聖女!?」
二つの声が重なった方に目を向けてみれば、先ほど目にした2人の女の子。
よくよくみれば、顔がそっくりだ。
(双子なのかな)
「そちらの御仁も、召喚された聖女殿だろう。皆様、こちらへどうぞ。城内を案内いたします。」
(え、いらない。帰らせて)
聖女やら召喚やら、何が何だか分かってはいないが、ありえないくらい面倒な香りがぷんぷんする。
極力関わりたくない。だが、今ここで勝手な真似をするのも得策じゃない気がする。
「はあ。では、お願いいたします。」
面倒なのが隠しきれずに、ため息が漏れてしまうが、もう仕方ない。
案内された城内は思っていた三倍広かった。
大広間だけでなく、いくつかの広間が用意されており、客室、応接室、執務室、さらには図書館に食堂まで。
多すぎて正直全く覚えきれない。でも、私の活動気力は全くないため、客室と図書室だけ覚えておけば正直なんとかなるだろうと思っている。
「ここで、案内は以上だ。夜の晩餐会まで、自由に過ごしてくれて構わない。」
私たちに当てられた部屋の前まで送っていただき、私たちは一時解散。
ちなみに、今回案内してくれた彼は、この国の第一王子らしい。
城内を案内していただいている間に、この国のことも多少聞いた。
この国は、グレルソン帝国。
この世界にある三つの大陸の中で、一番大きな帝国であり、主に人族と獣人が住んでいるという。
さらに驚いたのは、この世界には魔法があり、さらには妖精も住んでいると言うことだ。
(まあ、私には関係ない。もう眠い)
部屋に戻った私は、考えるよりも先に備え付けのベッドに横たわり、夢の中に落ちていった。




