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第57話:新ルールー2

 魔獣や神獣の武装は、手放せば死体に戻るためオレ以外は使えない。

だけど魔族は違う。

“社会を持つ怪物”だからか。

わからない。


俺は、仮面を見つめた。


「……付けてみるか」


「やめときなよ!」


ソーが即答で止める。


「だってそれ、ワーズだよ? ワーズの顔面だよ? やめなよ!」


「顔面じゃなくて仮面だ」


「同じだよ!」


……正論すぎて腹立つ。


でも、俺の手の中の仮面は、やけに静かだった。

魔剣みたいな禍々しい自己主張がない。

ただ、何かを待っている感じがする。


(……使い方、分かる気がする)


そう思った瞬間――


仮面から情報が流れ込んできた。


言葉じゃない。

説明でもない。


“手順”だ。


どうやって被るか。

どうやって変えるか。

何を代償にするか。


「変身対象は、想像で決まる」

「ただし、想像が揺らげば、形も揺らぐ」


心がブレたら、姿が崩れる。

幻術みたいに、精神の強さに比例する。


(……ヴラーナが持ってたら地獄だな)


『うん、それ最悪』


ラナが同意するのも珍しい。


俺は仮面を掲げて、ソーの方へ向けた。


「なぁ、ソー」


「やだ」


「いいから」


「やーだ!」


「頼む。確認しないと、次の戦いで死ぬ」


その一言で、ソーの表情が変わった。

軽口の奥の“本気”を、あいつはちゃんと拾う。


「……わかったよ。つければいいんでしょ。つければ」


ソーは渋々近づいてくる。


俺は仮面を差し出した。


「つけてみてくれ」


「……絶対なんかあるじゃん」


「うん、絶対なんかあるよ」


ソーは深呼吸して――


「……つけたよ!」


仮面が、ソーの顔に吸い付くみたいに収まった。


一瞬、仮面の目の赤が灯る。


ソーの肩がびくりと揺れた。


「……うわ、なにこれ。頭の中に――」


「使用方法が流れ込むだろ」


「……来てる来てる。気持ち悪っ」


ソーは両手を広げて、空気を掴むみたいに指を動かす。


「えーと……“なりたいもの”を想像……?」


「そう。なりたいものを想像してみてくれ」


ソーは目を閉じた。


その瞬間――


空気が、ぺらりとめくれたみたいに揺れる。


ソーの輪郭が、溶ける。

骨格が再配置される。

筋肉が“別の形”に詰め替えられる。


バキ、バキ、と嫌な音がしたのに、ソーは痛がらない。

変形そのものが能力で処理されてる。


そして――


そこに立っていたのは。


ローディオだった。


「……おい」


俺は言葉を失って、変な声が漏れた。


「おお、すげ」


ローディオ(ソー)が、俺の方を向く。


「…………ぼく、今、ローディオ殿なんだけど?」


声まで変わっている。

喋り方の癖まで、少しだけ寄ってる。


「すごいな。変身能力だ」


「うれしくないよ!? なんでローディオ殿!?」


「ソーの理想像がローディオだったんだろ」


「なるほど」


ソーは慌てて自分の腕を見る。

ローディオの腕。

体格。

身長。

足運び。


「え、これ……動き方まで……?」


ソーが一歩踏み出す。


……踏み出し方が違う。


重心がしっかりと地面に吸い付いて、次の瞬間の爆発を想起させる。

剣を持ってなくても、近接の圧が出る。


(やべぇ、これ……)


俺はソーを見据えた。


「ソー、戻せるか」


ローディオ(ソー)が唸る。


「……戻す、戻す……戻す……!」


仮面の赤がもう一度灯って、ソーの輪郭が再び揺れた。


数秒後。


ソーは元の姿に戻って、膝に手をついて息を吐いた。


「はぁ……はぁ……。しんど……」


「負担はあるな」


「あるに決まってるでしょ……。これ、魔力じゃなくて……なんか、精神力削られる感じ」


俺は仮面を受け取り、布で包んだ。


「……よし。使える。でも、常用は危険」


ソーが苦い顔で言う。


「ねぇ、それ……国に報告するの?」


「するわけないだろ」


即答した。


「こんなもん報告したら、いくらウルシア王国と言えど、悪用を考える奴らが現れる。さらに疑心暗鬼に陥り、最悪内部から瓦解する」


ソーは黙って頷いた。

ウルシアは平和的で合理的だ。

だからこそ、“危険な兵器”を抱え込もうとする。


そして、俺はもう――“兵器側”の人間だ。


「おーーい!」


遠くから聞き慣れた声がした。

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