少女との邂逅
これにて短編版の内容が終わります。今日の更新はこれ以外もうありませんが、この先数話はもう大体書き終えて居るので直ぐに投稿できると思います。
波風の立たない生活。そんなものは長く続かないことを今日改めて実感した。
「やめてください! これ以上近づいたら本当に警察を呼びますよ!」
配信をしてストレス発散出来た次の日にこんなことが起きるとかどうして....?
「いいじゃねえか、少しくらい遊ぼうぜ?」
いや遊ぼうぜじゃなくて、こんな遅い時間から若い女の子誘って遊ぶとかダメだろ
今確認したが現在時刻は19時30分だ、今日は日曜だし歌の収録して編集まで粗方終わらせてたらこの時間になった。ちょっとコンビニまで飲み物とお菓子買いに出たらこんな場面とかどんな物語だよ。
「.......助けるか」
そう思うが早いか、俺は荷物を片手に歩み寄った。
「そうだ。どうせ1人だろ? ほら、周りもみんな見て見ぬ振りじゃねえか」
声がした方向に歩いて行った俺は、同い年くらいの可愛い女の子たちが3人組のチャラ男にナンパされている現場に到着した。
いや、ナンパというにはあまりに強引すぎる言い方のように感じるからもはや....いや、やめておこう。
確かに相手が美少女なら人が見ていた状況下であろうと少しでも...と考えてしまうのもかもしれないが、俺としては「コイツらバカだろ」という気持ちの方が強かった。
今の俺は夜だが収録終わりということもあって完全にオンの状態、コンタクトは付けているが前髪をあげてセットまで行い、完全に“神凪真人”になりきっている。騒ぎになって俺が知り合いに見られていたとしても気づかれない。
チャラ男に言われている通り周りの人は見て見ぬふりをしているだけで誰も助ける気配はない。だが、そうであったとしてもしつこく女の子に言い寄っているのは見ていて気分の悪くなる光景だ。
よし、行こう。神凪真人、力を貸してくれよな。
「はぁ、やっと追いついた....外で待ってるって言ってたのに先に帰らないでくれ、お前に何かあったら怒られるの俺なんだから。罰としてこれ、帰るまでお前が持ってくれよな?」
適当に言いながら俺が渡したものはさっき買ってきた菓子や飲み物が入っている袋だ。中身は普通のものだから家で遊んでいて買い足しにきた体でいても誰も不自然には思わない。我ながら買ったものの運が良いな。
急に声をかけられた女の子は一瞬警戒した様子を見せ、突然渡された袋の中身を見て俺の狙いに感づいたらしく、すぐにそれを隠して袋を受け取ってくれた。...演技上手いな。
「先に行ってしまってごめんなさい、友達から早く帰ってこいと連絡があったもので....心配かけました」
「あいつら...罰ゲームで俺らに買い行かせたんだから催促すんなよな...まぁ良いや追いつけたし。で、この人たちは?」
「あ?ただ遊びに誘ってんだよ、ガキは邪魔すんな!」
「うぐっ!」
俺の右頬にいきなり拳が飛んでくる。....急なことで反応できず、もろに食らってしまった。あまり威力は無いが衝撃が強く、吹き飛ばされそうになる。....派手に吹っ飛ばされれば誰か警察呼ぶかな。
そう思いたち、俺はわざと踏ん張らずに少し飛ばされる。受け身は取らなかったが全身で地面に当たっていけるようにしたので見た目よりダメージは無い。
「だ、大丈夫!?」
「あ、あぁ...なんとかね」
慌てて駆け寄ってきた女の子に手を借り、痛そうに立ち上がる。殴られた方の頬が今になって痛み始めたから右目だけ瞑って耐える。
「おい、何やってんだよやり過ぎだ!捕まりてぇのか!....2人ともすまなかった、こいつは少し酒が入っててな。こいつは後で締めておくからそれで勘弁してくれ」
殴られた俺が重症に見えたのか、後ろにいた仲間の1人が男に駆け寄り、俺と女の子に謝罪をして去っていった........なんとかなったか。
「.....とりあえずなんとかなったな、怪我は無い?」
俺は助けた女の子に安否を確認するが、彼女は表情を険しくして震えてしまった。....何処か怪我をさせてしまったかな
「怪我は無い?じゃ無いですよ!貴方の方が大変じゃ無いですか!!私より自分の心配を...」
今は暗いから見えにくいが、とても青い顔で心配してくれている。あ、そういえば頬痛いわ。いい感じで受け流せたけど痛くなってきた。
「いや、大袈裟にやられたフリしただけだし大丈夫だよ。俺はなんとも無い」
心配されないように隠して、笑顔で返しておく。女の子に罪悪感なんて感じさせたらいけない。
「そうだったんですね......助けて下さりありがとうございました。あの、名前を伺っても?」
「.....神崎だ」
「え.............!?」
別に知り合いでもないし大丈夫だろうと思い、本名の苗字を名乗っておく。自己紹介は目を見てするという親からの教えを守り、それを実行した瞬間彼女から声が漏れた。...なんで?
「どうかしたか?」
「あの...その目って」
聞いてみると、女の子は目について聞いて来た。別に俺の目はカラコン入ってるから不自然じゃ無いはずだが....
「!!?」
左目を触り、コンタクトが取れてしまっていることに気が付いた俺はこれ以上ないほど狼狽し、取り乱してしまう。
「別に変じゃないですよ!ただ...私の大好きな方と同じ色の目だなぁって思っただけで」
「.......珍しい目の色の人が居るんだね、俺のはコスプレでつけてるんだけど片方取れちゃったみたいだ」
女の子は必死にフォローしてくれた。....待って?好きな人と同じ?
「そうなんです!あの、神凪真人って配信者調べてみてください!私の2年前からの不動の最推しなんですよ!」
突然の悲報 ナンパから助けた女の子が俺の熱烈なファンだった件
いやいやマズい...これ身バレでは!?いや気づかれてないからセーフ?でも危ないけど2年前からの推し...ってことはこの人最古参だし...誰だ...??ちょっと気になる....って違う!
「.....そんなに愛されて相手は幸せだね。名前を聞いてみても....いや、いいか、これじゃ俺が不審者みたいだし、これで帰るよ!」
一瞬名前を聞いて誰か当ててみようと思ったが、これじゃ周りから不審者と呼ばれそうなことに気付いて辞め、俺は逃げるように走って立ち去った。
「あ、待ってください!あの!!」
女の子が慌てたように声をかけてくるが今の俺には届かない。それほどパニクっているのだ。
「買ったもの忘れてますよ........どうしよ、これ」
「最後に改めてお礼くらいさせて欲しかったな」
「はぁ...はぁ....迂闊だった、まさかよりにもよって助けた相手がリスナーとは思わなかった」
助けた女の子が自分のリスナーで、それも最古参だと理解した俺は全速力で走って家まで戻って来た。最古参だから全員の人柄はよく知っている筈で、全然厄介なファンでも無く、ただあえて嬉しい筈なのに逃げてしまった。次の配信でコメントしてくれるかな....
「.....あ、袋渡したまんまじゃん」
落ち着きを取り戻したところで、買ったものが入ったビニール袋を渡したままにしてしまうという重大なミスをしたことに気付いた。
これで俺は今日、こうして身バレ未遂をしたあと買ったものを渡して返してもらい忘れてしまうという人生最大の災難を経験したことになる。......厄日過ぎない?
だが、この時の俺はまだパニックから立ち直れておらず、気づくことが出来なかった。本当に1番大事なものを逃げる際に落としてしまっていたという事実に。
「あれ?これは....あの人の生徒証?え...,..?私が明日転入する学校と同じ?」
こうして俺、神崎直人の平穏な高校生活が崩れ始めていく.....
作者のモチベーションが向上するので
もっと見たい!
続きが気になった!
面白かった!
という方は感想や評価をお願いします。




