#6話 ~世界のこと ②~
#5の続きです
暖炉の温かさに包まれる居間
真剣な顔をする母と向き合う
「まず、アイツのことについて。アイツはコヨリの言った通り人間じゃない悪魔よ、それも始祖。強大な奇術の力を操り世界を支配する魔の象徴」
「いきなりぶっ飛んでるわね」
まずの部分から重大なことが語られ過ぎていく
「元々はこの世界の住人じゃなかったの。ある日、ワタリの秘術の力を使ってこちらの世界に来た。そして、この世界の魔力の根源である【穴】の力を支配した」
「はは、もう何が何やら・・・」
「ごめんなさい、でも今はまず全てを語らせて頂戴。その後に何でも答えてあげるから・・・」
「うん、わかった・・・」
「【穴】を支配し魔法使いたちの力を奪った彼は、この世界に敵意をむき出しにして襲い掛かってきたわ。力を持つ人、力を持たない人、全てにおいて関係なしにね」
「もちろん私たちは戦ったわ、でも相手が悪かった。アイツはこの世界に来てから恐ろしいまでのスピードで秘術、奇術の力を我が物とし応戦してきた。力を奪われたこの世界の魔法使いたちは防戦一方だった」
「大きな被害を出しながらも徐々に相手を追い詰めていき、勝利した。勝利と言っても傷を負わせて一時的な休戦に持ち込むことが精一杯だったけど」
普段なら信じられないような突拍子もない話の数々
だが、実際にアイツを前にした後だと全てを信じざるを得ない
「アイツとの戦いの後、世界は変わったわ。魔法使いでない人々が、魔法は悪だと言い出したのよ。確かにヤツがこの世界にやってきた原因はワタリの秘術にある、けど何百年も前からその恩恵に与ってきたのにいきなりそんなことを言い出したの」
「非情よね」母が笑いながら言う
「【魔力弾圧】と【魔法使い狩り】なんて風習の始まりね。力を失った魔法使いなんてただの人と同じ、沢山の魔法使いが捕らえられ殺されたわ。この家の周りに人が居ないのはそのせい、みんな捕られた後の荒廃した土地だから。身を隠すのには最適だった」
【魔力弾圧】、なんて響きの悪い言葉なのだろうか
「【ワタリの秘術】は忌々しい【ワタリの奇術】へと名を変え、魔法は廃れ、世界は荒んでいった、これが今のこの世界よ」
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「はい、ホットミルク。じゃあ次は私からの質問でいいかな?」
「ありがとう。私が答えられることなら何でも教えるわ」
「じゃあまず、悪魔について。お母さんはアイツを表す時に悪魔って言ってた、それってどんな意味なの?」
「悪魔って言うのはね、奇術の扱いに長け魔法を悪い方向に使う魔法使いの総称よ。アイツは別世界から来てるから特別な存在なんだけど、この世界の魔法使いでも圧倒的な悪意を以て人々に牙を剥くようならそう言われるわね」
「2つ目はそれ。別世界ってなに?あと【ワタリの秘術】について教えて」
「別世界はその名の通りよ、【ワタリの秘術】の力で渡った先の全くの別の世界。私たちの世界の人間は何百年も前から【ワタリの秘術】を使って別の世界へと渡り、様々な力、技術、生物、言語、沢山のものを取り入れて来たわ」
「なるほど、確かに秘術足り得る恐ろしい力ね・・・」
別世界、【ワタリ】、今夜は本当に話題に事欠かない
「それで、何年か前にアイツがこちらの世界に渡ってきて悪行の限りを尽くしたと?」
「そうね。今まで【ワタリ】の力を利用されるなんてことは無かった。アイツが攻めてきたときに秘術を使い別世界へと道を繋げたのは、私たちなの。私たちの力が及ばなかったばかりに世界をこんなことにしてしまって、本当に後悔しかないわ・・・」
母が嗚咽を漏らす
「最後の質問。それで、お母さん。私には何ができるの?私にだって力がある、なにか役に立てるはずよ!」
「・・・。戦って頂戴、この世界と。この世界の【敵】に」
まさかの母の一言に、私は驚愕する
「ダメよ、お母さん。お父さんと約束したんだから、この力は無暗に使わないって。暴力じゃないの、誰かを守るために力を使えって約束したんだから・・・」
「そう、こんなこと貴女に頼むべきじゃない。そんなのわかってる。だから私もお父さんも、貴女に秘密で少しずつアイツと話しを進め平和的解決をしようと思って頑張っていた」
「でも、こうなってしまった。もう止まれないの・・・」
「それでも!私の力は誰かを守るための力!世界を救うなんてことはできない!」
「いいえ、これは貴女のためよコヨリ」
「私の、ため・・・?」
「そう、貴女のため。この戦いの先に待つ真実はきっと貴女を救うわ。私たちの作ってしまった悲運な人生を終わらせるための真実よ」
「なに、それ?戦いの先に待つ真実ってなに?悲運な人生ってなに?私のためってなに!?」
思わずパニックになり大きな声を上げてしまう
「ごめんなさい、今それは私の口から言うことはできないの・・・。それは、貴女に見つけてもらわなきゃいけないから・・・」
「待って、待ってよお母さん・・・」
「・・・!」
急に眠気が襲ってくる
見ると母が私に向かって魔法を使っていた
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
「なんで?なんで謝るの?お母さん。わるいことしたの?いたいところでもあるの?おかあさん、おかあさん・・・」
「いつか必ず思い出す時が来るわ。それまではせめて、普通のヒトとして過ごして欲しい。仮だとして、貴方の親なのだから・・・」
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『そっか、こんなことあったなぁ。懐かしい』
『今の今まで思い出せなったのはこの時の魔法が原因なんだ』
『さて、起きなくちゃ』
『真実が待ってる』
『全てを終わらせないと、全てを知らないと』
「ねぇ、コヨリ。いつまで寝てるの?起きなよ」
『おはよう、私』
「おはよう、コヨリ。」
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ー残りXX日ー
時計の針が動き始めます




