#17話 ~夜③~
③
「師匠、ありがとうございます。とても深い話を聞けました」
「そっか、なら良かった」
師匠から言われたことを脳内で反芻する
意味がわからない
師匠は僕を仲間とも思ってない?
『力』の意味って?
師匠は自らの『力』の意味を知らない?
「ごめんなさい、話が難しくてあんま理解できませんでした」
「まぁ、無理もないよ。突拍子も無いし、内容も私が勝手に思ってることをがむしゃらに語っただけ。理解は、できないと思う・・・」
「でも・・・」
「でも、知っていて欲しい。貴方がこの話を聞いても私を師と仰ぐなら、私と一緒に来るって言うなら、知っていて欲しい」
「・・・。」
静寂
師匠はそれから言葉を発することはなかった
まるで、僕の判断を待っているようだった
「・・・、お風呂に入ってきます」
「ん?あぁごめん、私だけ勝手に寝るつもりでいたね。うん、行ってらっしゃい」
「はい・・・」
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抱きしめていたハルを解放しその背中を見送る
足取りは重く覇気もない
「そうだよね、いきなりこんな話されたって意味わかんないよね」
手を首の後ろで組み天井を見上げる
俗に言う考えるポーズ
「仲間とも思ってないは言い過ぎたかな・・・」
自分の本心のほぼ全てを語った
力についても、旅の意味も、ハルについても
これを聞いてどう態度を改めるかはハル次第
私を宿から追い出してもいい
そうされたらされたでまた適当にこの世界を見て周るだけ
「寝よ、もう頭働かないや・・・」
身体的疲労は感じない
ほぼ常に身体は『強化』で能力を高めてある
疲れたのは心と身体
「あぁ、抱くものがないから寝付けない・・・。こんなんでこの旅大丈夫かなぁ・・・お母さん元気にしてるかな・・・」
あれ?
ていうかなんで私こんな旅してるの?
「お母さん、お父さん・・・力、誰?なんか思い出せそう・・・お父さん、起きて・・・」
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手のひらを見つめる
これは自分の癖だ
ここにあの時守れなかった皆の無念が宿っている気がする
ここを見つめると勇気を貰える
前に進む勇気を
ここを見つめると覚悟を貰える
復讐のためには手段を選ばないという覚悟を
ここを見つめると思い出す
コヨリ師匠が差し伸べてくれた手を
「師匠、僕は貴方に着いて行きますよ。僕には力を求める意味も奮う意味もある、この意味をいつか見せてみせます・・・」
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「師匠、ただ今戻りました・・・」
寝てる
本当に早寝だ
「師匠、僕の方の布団の毛布返して下さい・・・一応まだ夜は冷えるんですから・・・!」
起こさないように慎重に毛布を引っ張っていく
寝ている間は『強化』の力は使っていないのだろうか
あの怪力は感じず少しずつ毛布が抜けていく
「よし、いいぞ。師匠は何か抱いてないと寝れないって言ってたけど、寝付けばもう大丈夫だろう・・・」
スルン
「抜けた・・・これで僕も寝られる」
でも、眠くない
それもそうだ、夜は始まったばかり
いつも自分が寝ている時間にまだ及ばない
「師匠の話ももう少し考えていたいし、素振りでもしていよう」
剣を手に取り基本動作の確認
いざという時に剣筋がブレないようにひたすらに剣を振る
決して鞘から抜かず、剣とも呼べない鉄の塊を
振り続ける
「僕もできることはやり続けよう、復讐の成就のために・・・」
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「ん~、あの人良かったな~。【コヨリ】さんだっけ?この仕事始めてから色んな人冒険家にしてきたけど、単純な魔力でボスに匹敵するような人は初めて見たなぁ」
昼間に書いてもらった申請書に目を通ず
・コヨリ
・17
・砂漠の家
・お金が欲しい
・強化
・料理、洗濯
・危険じゃないもの、簡単なもの
・初級
「歳は17、若いっていいなぁ。出自が気になるけどそれは追々でいっか。一応ボスに報告しておこっと、こんな人が仲間になってくれた私たちの悲願すぐ達成できそう・・・」
「幸い田舎者だ、適当に依頼を紹介しながら信頼されてって徐々に引き込もう・・・あっはっはっは!!!」
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ー残り732日ー
おやすみ




