#14話 ~宿へ~
「あっ、お疲れ様です。師匠。どうでした?」
「別に、なんか変わったって感じはしないかな」
「えっ?本当ですか?何か見えませんか?ホラ、僕の周りに」
「えーーー・・・?」
目を細めて見ようとすると・・・
何かが見えて・・・
「あっ」
「見えました?」
「うん、赤いのが見える」
ハルの周りに赤いモヤのようなものが見える
何かの魔法か?
「さっきまでは見えて無かったから、冒険家に登録したからかな。あの本に手を置くのがトリガーになる魔法とか」
「まぁ、多分何かの魔法ってことは間違いじゃないと思うんですけど、これを我々にかける利点がよくわからないんですよね」
「あくまでもこれは僕の仮説なんですけど、これはシルバーの王都で冒険家に登録した人にかけられる魔法なんじゃないかと思ってます」
「確かに、見える人と見えない人が居る」
「この国出身の冒険家か否かを判断するためのものですかね、少し不気味ですがまぁこの国なんで変なことはないと思うんですけど・・・」
「ふーん、とりあえず覚えておく。私も調べてみる」
「お願いします」
「あー!コヨリさーん!早速依頼、受けてみませんか?楽そうな中級依頼持って来ました!」
「あっ、さっきの人」
窓口の人だ、手を振りながら駆け寄ってくる
依頼まで持って来てくれるなんてなんと優しい人だろう
「師匠中級に合格したんですか!?」
「う、うんまあね。ご厚意で」
「すごいじゃないですか!いきなり中級なんて聞いたことないですよ!」
「ははは、私としてはあんまり嬉しくないんだけどねぇ・・・」
「内容は暴れてる魔獣の討伐、沈静になります!対象によっては結構危険なんですけど、コヨリさんなら大丈夫かなーって!」
(あれ?私申請書にその内容と真逆のこと書いてなかったっけ?)
「そんないきなり依頼って言われてもなぁ・・・。私これからやりたいこともあるし」
(そっか)
「すみません、その依頼俺にも見せてくれないですか?内容を確認したいので」
「コヨリさんのお連れの方ですか?どうぞ~」
「すみません、ありがとうございます」
渋る私に助け船を出すように女性の対応をするハル
依頼書の内容を確認し、必要な事項を簡単に説明してくれる
「師匠、まずこれは見た感じ結構時間のかかる依頼になりそうです。場所もこの王都から少し離れているし、足の無い今の我々では移動だけでかなりかかります。それに途中で必要な食糧やアイテムもまだ揃っていないので、無事に帰って来れるかどうか」
なんと頼もしい
この少ない情報からそこまで考えられるなんて
「そうでした、これはごめんなさい。冒険家になったばかりでまだ何も準備できてないですもんね、私としたことが失礼しました!」
「あー大丈夫です!ほんと、色々ありがとうございました」
「また来て下さいね♪良さそうな依頼集めておきます!それでは!」
「うん、じゃあね」
またー!
と手を振る彼女に別れを告げその場を離れる
ハルのおかげで何とか助かった
「ありがとね?」
「あぁさっきのですか?いえ、冒険家での少し先輩として当然の対応ですよ」
「しっかりしてるねぇ、キミは」
ハルの頭を撫でながら素直に褒める
「や、やめて下さい!子どもじゃないんですから!」
「ふふっ、いいじゃん」
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ギルドを後にし街へ
今後のことを話し合うために宿探し
ここもハルに頼らざるを得ないだろう
「宿屋なら、今僕が使っているところに来ますか?あんまり上質ではないですけど、安さには自信があります」
「まぁ、そんなにこだわりがあるってわけでもないしどこでも良いよ。そこが空いてるなら行こうかな」
「じゃあ、少し歩きましょうか」
「向かいながらで良いから色々買い物したいな、こっちで生活するための物ほとんど持ってないんだよね」
「わかりました、案内しますよ!」
王都内の探索を兼ね買い物
建物の位置だったりを覚えておかないと
途中で休憩を挟みつつ雑貨、生活必需品などを買っていく
ハルの案内も丁寧でわかりやすく手際よく進められる
「こんなとこですかね?どうですか師匠、他に周りたい所とかありますか?」
「いや、もう大丈夫。助かるなぁ、私一人だったら絶対ここまでスムーズにいかなかったと思うから」
「師匠はいつ王都に来られたんですか?」
「うん?今日だよ。今日の朝方。来た早々でなんか変なのに絡まれちゃったけど」
「なんと言うか、災難でしたね・・・。師匠の力があるなら僕が助けに入らなくても大丈夫だったのに、余計なことをして申し訳ないです」
ハルが困ったように笑う
「まぁまぁ、あそこで来てくれたってのは凄い嬉しかったよ?確かに助けなくてもどうにかなってたかもしれないけどさ、勇気を出して助けに入るって大事なことだと思うな。余計だったなんて思ってないから安心して?」
「そう言って貰えると助かります。でも、実際僕にはまだ他人を守れるほどの力はありません。もし師匠の力がなかったらあの場面はとても危険でした」
そう呟き自分の手を見つめるハル
「その手で守りたい人がいるの?」
「えっ?」
「ごめんね、急に。ちょっとしかアナタとは一緒に居られてないんだけどさ、危なっかしいというかどこか焦りってものを感じて仕方ないんだ」
初めて会った時から気になっていたことを単刀直入に聞いてみる
私がハルを放っておけない原因の1つ
「まぁ、当たりですね・・・。正確には守りたい人が居ました、今はこれだけでお願いします。決心ができたら話ます・・・、師匠には聞いて欲しいので。」
「うん、わかった。いつかね」
(ダウト、それは嘘だよハル。アナタの眼からはもっと暗いものを感じるもの)
ハルと話しながら暗くなってきた王都を歩き続ける
本当にあの家以外で夜を越すんだ
なんだか不安になって来ちゃうな
「ん?」
「あっ、見えましたね。ここですよ宿屋。どうですか?ボロいでしょ?でも内装はそうでもないので安心して下さい」
「ってあれ?師匠?」
「アナタはだぁれ?見たことない動物ね。かわいい」
建物の隙間から長い尻尾を持った動物が歩いて来る
四足歩行で耳がある、なんてしなやかな身体をしているのだろう
「もう師匠!僕独り言喋ってましたよ!急に離れるんですから!」
「ごめんね、でも見てこの子。かわいくない?」
「あれ、【猫】じゃないですか。珍しいですねこんな所で」
「【猫】?へぇ、面白い名前してるのねアナタ。触れる?」
「人懐っこいと聞いたことがあります。でもこうして野良で見るのは初めてですね、大抵は上流階級の貴族が飼っているイメージなので」
「へぇー」
【猫】と呼ばれる生き物に手を伸ばす
警戒しているようで触らせてはくれない
毛並みは整っているのでどこかの家から脱走してしまったのでろうか
「【猫】は肉とかを食べるみたいですよ」
ハルがカバンから干し肉を取り出し小さく切り目の前へ置く
匂いを嗅いでいるから興味はあるようだ
「食べないね、やっぱりまだ警戒してるのかも」
「うーん、僕もよく知らないのであんまり触れない方がいいかもしれませんね」
「そっか、じゃあね【猫】ちゃん」
身体を舐めて毛づくろいしている【猫】に手を振りお別れ
かわいかった、触りたいなぁ
「では改めて、ここが僕が使ってる宿屋です。見た目はボロいですけど内装はそうでもないので安心して下さい!」
「もう、それはさっき聞いた。早く行こ?」
「えっ、あの距離から聞こえてたんですか?耳もいいんですね」
「まぁね」
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ー残り733日ー
猫も居ます




