おまけ 花嫁さんです
数年経ちました。
早いものですね。あっという間でした。
その間に起きたことと言えば、魔族、竜族、人間の交流が盛んになったようです。最近では町の中で竜族や魔族の旅人を見ることがあります。まぁ、たびたび衝突もありますが、皆少しずつ受け入れていっているようです。
それから、私は仕事を始めました。それもお城ではなくて町でのお仕事です。内容は、ギルドの喫茶店ウェイトレスです。
頭におぼんを乗せ、低空飛行で飛びながらの配膳はなかなか人気です。最近は古竜仲間がその仕事に就くことが増えてきたようですよ。
まぁ、そんなこんなで地球にいた頃よりはのんびりですが似たような生活を始めると、あの怒涛の数か月が夢であったかのようです。まぁ、その後もちらほら魔獣退治に同行したりしましたがね。
そしてこの度、私リーリアことリーシェリアは、一児の母になります!
きゃあああ~っ! このセリフ言っちゃいましたよ! 恥ずかしぃ~!
悶えてコロコロベッドの上を転がると、きゅっと旦那様になるウィルシスに抱きしめられました。
「おはようリーシェリア」
赤い瞳が私を見下ろしてきます。
「おはようございますウィルシス」
きゅきゅきゅ~と声を出してすり寄ります。
実をいうと、私の旦那様候補に、騎士の皆様方や竜族からも数人あがった時期があったのです。
理由は、私が古竜の中でも王様の位にあるらしいということ(だからと言って何かできるわけではない)、魔王の一人娘であるということが挙げられました。
逆ハーレムきた!
と思ったのですが、グレン、国王、ウィルシスの連携によって、復活祭という名の滅びと再生の日の記念日に開いたパーティーで、ウィルシスが私の婚約者であると発表されました。
ちょっとがっくりきたのは内緒です。
カムバック逆ハーレム…
それからはあれよあれよと怒涛の攻撃を受けてまさかの婚前妊娠発覚!
ウィルシス対クロちゃんプラス義弟ラス君による戦いが繰り広げられ、今も一部続いております。
ですが、今日はそれらのごたごたを横に置いての結婚式です!
パンパカパ~ンッ♪
「キュキュキュ」
「ご機嫌だねぇ」
優しく頭を撫でられ、笑う私は起き上がり、すぐに朝の支度を始めます。
つわり等は古竜姿だと全く起きないので問題無しに朝食作り。これが完全和食だったりして、最初はおかしな顔をされましたが、今では和食もギルドの喫茶店から発信されて世の中に浸透しつつあります。
それでもまだまだ作れないレパートリーも多いですね。調味料がもっと増えるといいのですが。
今日の朝食はおにぎりと御味噌汁です。
専属のシェフさんもメイドさんもいるウィルシスのお屋敷ですが(貴族街で購入したお屋敷です)、今日は式の後に広いお庭でガーデンパーティーですからね、その準備で大忙しなのです。ですから朝食は私が作る軽食にいたしました。
「食べたら着替えて大聖堂だね」
「緊張します」
国王陛下主催の結婚式となりましたので、かなり盛大なのだそうです。招待したのもよく知っている身内とはいえ、魔王に竜王ですからね、ヘタな式は挙げられないというのが国王のご意見です。
そんなわけで式場は町にある大聖堂でのロイヤル結婚式ですっ。
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「いやん、よく似合うわ~」
「こ、これは…」
大聖堂の花嫁控室にて、リアーナに着せられたのは純白のドレスとベール…の古竜バージョン。
姿見に映る白一色の古竜は可愛いと言えば可愛いですが…。
「ちょっと笑えるかもです…」
鏡の前でぶふっと自分の姿に笑ってしまいました。
もちろんこのドレスは冗談です。ですが、こういうお遊びが好きな私としましては、このまま式に出ようかとちょっと悩んだのも事実です。
怒られますからしませんが。
ひとしきり古竜姿で遊んだ後、人型に変わります。
まだまだお腹は出ておりませんので問題ないですが、人型はちょっと気分が悪くなります。つわりですね。
「これで少しはもつかい?」
ほとんど効きませんが、招待客の一人である冒険者のレイナに癒しをかけてもらって持ち直し、結い上げた純白の髪の上にベールとティアラを乗っけると、クロちゃんと、義弟のラスがやってまいりました。ラスはあの時の赤ん坊で、名前はダグラスから二文字をもらってラスにしました。
「クロちゃん」
「いいんじゃないか? だが、おめでとうは言わんぞ」
チュッと頬にキスされます。それを見たラスが私の足元にぽすりと飛びつき、私を見上げてきます。
「ラスもしてくれるのですか?」
4歳(推定)のラスは頷きました。
「すゆ、おめでと」
体をかがめればお姉ちゃんっ子のラスがチュッと頬にキスしてくれます。幸せですね。
(この後屋敷のパーティーで結婚式の意味を知ったラスが嫉妬で大暴れすることになる)
しばらくは女性陣と家族のゆったりタイムを過ごし、時間とともにクロちゃんに手を引かれて式場へ。
式場では騎士の礼装に身を包んだ騎士達の剣のアーチをくぐり、真っ白の騎士の礼服に身を包んだ銀糸の髪に真紅の瞳の美丈夫な旦那様に手が渡ると、もう鼻血を堪えるのに精いっぱいでしたよ。
萌ゆる…
騎士達にも目がいったのがすぐにばれて、誓いのキスは腰砕けにされ、式の後は燃えつきました…いろんな意味で。
その後はなぜか町中を屋敷に向けてパレード!
まぁ、ウィルシスは国の英雄と呼ばれる人ですし、この国の騎士団総隊長ですからね。諦めました。
そのかわり、あれを実行しましたよ!
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「お待たせしました~」
オープンカーならぬオープン馬車に乗り込んだのは、例の純白のドレスとベールをかぶった白い竜…と、それを抱きしめる礼服の少年ラスです。
「どうしてそれで来るかな…」
「古竜ですから! あ、もっと小っちゃくなりましょうか?」
最近蠱竜姿になれるようになったんですよね。大人になったってことですかね。でも、それだとこの馬車、花婿と子供しか乗ってないように見えますね。それはそれで…ぷぷぷっ
「それはいいよ、それから、ラスもダメ」
あっ、ラスが追い出されてしまいました。ちょっと倒錯的で面白いかと思いましたのにっ。
キロリと睨まれました。
「…わかりました。それでは出発する前にここはひとつ」
おほんっと咳払いし、ぴょいっと馬車の前の道に集まる人々に向けて…
「枯れ木に花を咲かせましょ~!」
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・・・・・
お祝い事って、魔力が集まるんですね・・・・
町中と人々の頭に、花が咲き乱れました。それも大量に。
翌日、騎士兵士、町人総出で花摘みが行われ、花屋が閉店の危機に追い込まれたのはまた別の話・・・・
ここで完結になります。
番外編は鈍足更新中です!




