第8話:美容談義と本音。ほむらとかれん、まさかの急接近?
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前回の第7話では、ほむらから見た「白石かれん」へのどろどろとした感情を描きましたが、今回はそんな二人がまさかの接触。
「完璧」を自負するほむらが、自分にないものを持つギャルを前にどう振る舞うのか。
銀髪の美少女が、プライドを捨ててまで手に入れようとする「可愛げ」の正体に注目してご覧ください。
放課後、私は一人、デパートの化粧品売り場にいた。
「……可愛げ、ね。あんな子に言われる筋合いはないわ」
鏡に映る自分を睨みつける。
白石かれんに言われた言葉が、トゲのように胸に刺さって抜けない。
いつもより少しだけ、ピンクの強いリップを手に取ってみる。
けれど、それを塗った自分が「悠真に媚びている」ようで、結局元の色を買い足すことしかできなかった。
「あー、やっぱり! 近衛さんもここ来るんだ?」
背後から聞こえてきた高い声。
振り向くと、そこには山のようなショッパーを抱えた白石かれんが立っていた。
「……白石さん。偶然ね」
「偶然っていうか、ここら辺で一番新作入るのここだし。何、近衛さんも『可愛げ』研究中?」
かれんがニヤニヤしながら私の手元を覗き込む。私は咄嗟にリップを隠した。
「……別に。私は今のスタイルに満足しているわ」
「嘘だ。さっき、すっごい迷ってたでしょ。……ねえ、ちょっとお茶しない? 私、近衛さんと一度ゆっくり話してみたかったんだよね」
*
駅前のいつものファミレスではない、少し落ち着いたカフェ。
「近衛さんってさ、マジで綺麗だけど、マジで損してるよね」
かれんは運ばれてきたパンケーキにたっぷりとシロップをかけながら、唐突に言った。
「……どういう意味?」
「藤原くんのこと、好きなんでしょ? 隠せてるつもりだろうけど、目が『私の悠真に触んな』って言ってるもん」
私はティーカップを落としそうになった。
完璧なポーカーフェイスが、このギャルには一切通用しない。
「……彼は幼馴染みなの。それ以上の感情なんて――」
「あー、そのテンプレートいいから。……私さ、藤原くんのこと、ちょっといいなとは思ったよ。でも、アイツの目、近衛さんしか映ってないんだよね。それがムカつくから、ちょっといじめてみただけ」
かれんはあっけらかんと笑い、ストローを咥えた。
「近衛さんは、完璧すぎて怖いんだよ。もっとエロく、……じゃなくて、隙を見せなよ。藤原くんみたいな鈍感男子には、わかりやすい『可愛さ』が必要なの」
美容の話から始まったはずの会話は、いつの間にか「男を落とすための戦略」へと変わっていた。
かれんが教えるメイクのテクニックや、男子の本音。
それは、私が文芸部で読んできたどんな文学作品よりも、生々しく、鋭いものだった。
*
その頃、いつもの『デリデリ(Deli-Deli)』。
「……えっ!? ほむら姉さまとかれんさんがカフェにいる!? しかも、仲良さそうに話してる!?」
あおばがスマホを落としそうになりながら叫んだ。
みもりは冷静にポテトをつまみながら、送られてきた隠し撮り写真を確認する。
「……まさかの急接近。ほむらが『敵』から『技』を盗もうとしてるなら、これ、面白いことになりそう」
「でもさ、みもりさん。これでお兄ちゃんが、さらにお兄ちゃんが置いてけぼりにならない?」
「いいんじゃない? 悠真は少し焦った方がいい。……よし、次の作戦は『かれんとの共同戦線』で行こうか」
二人の策士は、想定外の展開に目を輝かせ、さらなる悪巧みを練り始める。
*
「……白石さん。今日言われたこと、参考にはしておくわ」
カフェを出る際、私は小さく告げた。
「いいよ。その代わり、今度藤原くんと進展あったら、絶対私に報告すること! 応援してあげるから」
かれんは手を振って雑踏に消えていった。
私は一人、新しく買ったリップをカバンにしまう。
「……可愛げ、ね。……見てなさい、悠真。あなたが二度と、私から目を逸らせないようにしてあげるんだから」
完璧な美少女の目に、新たな決意が宿る。
それは、かれんから伝授された「小悪魔な執念」の始まりだった。
(第8話・完)
第8話をお読みいただきありがとうございました!
「敵を知り、己を知れば……」ではありませんが、ほむらの学習能力(と悠真への執念)が斜め上の方向に発揮され始めました。
かれんという強烈なキャラクターが加わったことで、ほむらの内面もさらに刺々しく、そして「小悪魔的」に研ぎ澄まされていくことになりそうです。
一方、その様子を遠くから見ているあおばとみもり。
彼女たちの「共同戦線」が、悠真をどこへ連れて行くのか……。
次回、第9話「嫉妬の限界。ほむらが仕掛ける、放課後の罠」。
ついに、ほむらが「学んだ技」を実践に移します。どうぞお楽しみに!




