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第6話:明かりが灯った後の、気まずくて甘い朝

第5話のラスト、暗闇での抱擁から数時間後。

明かりが灯った瞬間の「現実」と、気まずくも甘い朝の風景です。


ほむらは気づいてしまいました。

悠真もまた、自分を意識し始めていることに。


策士二人の作戦が成功し、二人の関係は「ただの幼馴染み」には戻れない場所へと足を踏み入れます。

挿絵(By みてみん)



 パツン、と視界に色が戻ったのは、深夜2時を回った頃だった。


 復旧した電気が、無慈悲なほどに部屋を明るく照らし出す。


「……あ」


 数秒前まで、暗闇の中で重なっていた私たちの影。

 指先を絡め、お互いの鼓動を感じるほど近くにいたはずの体温が、光と共に弾けるように離れた。


 悠真は慌てて目を逸らし、私は乱れた前髪を整えるふりをして、真っ赤な顔を俯かせる。


「……なおったな、電気」


「……ええ。そうね」


 たったそれだけの会話が、これまでの人生で一番ぎこちない。

 結局、私はそのまま藤原家の客間に泊めてもらうことになった。


 あおばちゃんとみもりが「雨がひどいから駅前で泊まるね!」なんて見え透いた嘘のLINEを送ってきたせいだけれど、今の私には、その策略を問い詰める余裕なんて1ミリもなかった。


---


 翌朝。カーテンの隙間から差し込む朝日が、私のまぶたを叩く。


「……ん」


 いつもなら完璧な目覚めと共にベッドから飛び出す私が、今日はいつまでもシーツの感触を味わっていた。

 借りた悠真のTシャツ。少し大きめの襟元から、昨日暗闇で感じた彼のバニラの香りが微かに漂う。


(「……俺は、今の、ちょっと震えてるお前の方が、好きだよ」)


 昨夜の悠真の言葉が、脳内でリフレインする。

**【好き】**という言葉に、彼はどんな意味を込めたんだろう。幼馴染みとしての親愛? それとも、私と同じ、逃げ場のない()()()


 階下から、トントントンという軽快な包丁の音が聞こえてきた。


 リビングへ降りると、そこには寝癖をつけたままの悠真が、昨日の残りの野菜でスープを作っていた。


「……あ、おはよう、ほむら。よく眠れたか?」


「ええ……。おはよう、悠真」


 朝の光の中で見る彼は、昨夜の熱を帯びた雰囲気とは違い、いつもの「鈍感な幼馴染み」に戻っているように見えた。


 けれど、彼が差し出したマグカップを受け取る時、指先が触れ合う。

 その瞬間、悠真の動きが止まり、耳の付け根がじわじわと赤く染まっていくのを、私は見逃さなかった。


(……ふふ。なんだ、意識してるのは私だけじゃないのね)


 昨夜の暗闇で見せた私の『弱さ』。それを彼は受け入れた。

 完璧な仮面の下で、私の**【執念】**が再び静かに首をもたげる。


「……悠真、スープ、美味しいわ」


「……そうか? なら良かった」


 不器用な優しさが、朝の空気に溶けていく。

 私たちはまだ、決定的な言葉を交わしていない。けれど、昨日までの「ただの幼馴染み」には、もう二度と戻れないことを、私たちは本能で悟っていた。


---


 その頃、駅前のファミレス『デリデリ(Deli-Deli)』のモーニングセット。


「……で、作戦はどうなったと思う?」


 みもりが、カリカリのベーコンを齧りながらあおばに聞く。


「お兄ちゃん、今朝死ぬほど不自然なテンションで『ほむらはもう帰ったよ』ってLINEしてきた。これ、絶対なんかあったよね」


 あおばはニヤニヤしながら、自分たちの『進展記録ノート』に金色のシールを貼った。


「作戦名:**【ミッドナイト・シャットダウン】**。結果:()()()。……さあ、次は学校で、あの鉄仮面ほむらがどれだけボロを出すか、観察しに行こうか」


 二人はコーヒーを飲み干し、悪魔のような足取りで学校へと向かう。


(第6話・完)


第6話を最後までお読みいただき、ありがとうございます。


夜の熱気が朝の光に溶けていく、少しむず痒いような空気感を楽しんでいただけたでしょうか。

耳を赤くする悠真を見て、ほむらの【執念】がさらに研ぎ澄まされていきます。


次回、第7話。

ついに物語をかき乱す新たな存在、白石かれんが登場します。

平穏な日常が、ほむらの独占欲によってどう変質していくのか。


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