第5話:雨の停電。暗闇の中で、触れ合う指先
第4話に続き、第5話の更新です。
外は激しい雨。そして、突然の停電。
策士二人が用意した最高の「お膳立て」により、二人の夜は加速します。
暗闇という魔法の中で、完璧な美少女・ほむらが選んだ「嘘」と、悠真の本音。
二人の境界線が崩れる瞬間を、どうぞ見届けてください。
窓を叩く雨音が、次第に激しさを増していく。
「……すごい雨だな。これ、帰れそうにないか?」
悠真が心配そうに窓の外を覗き込む。私は食器を片付けながら、内心で雨の神様に感謝を捧げていた。
(帰さないわよ。この雨も、この状況も、全部味方につけてやるんだから)
「……あら、ちょうどいいじゃない。もう少し、数学の復習ができるわね」
私が完璧な微笑みを向けた、その瞬間。
パツン、と視界から色が消えた。
「えっ……? 停電?」
「……みたいね」
突然の静寂と、完全な暗闇。
雨音だけが異様に大きく響き、数秒前まで広かったはずのダイニングが、急激に狭い**【密室】**へと変わる。
「ほむら、動くなよ。危ないから。……えーっと、懐中電灯……」
ガタ、と椅子が引ける音がして、悠真の気配が近づいてくる。
暗闇の中、視覚が奪われた代わりに、他の感覚が異常に鋭くなる。
バニラの香水と、彼の体温。そして、ドクドクと波打つ私の心音。
「……悠真、ここよ」
私は闇に紛れて、わざと心細そうな声を出し、彼の手を求めて指先を伸ばした。
触れたのは、悠真のTシャツの袖。そこからゆっくりと滑らせ、彼の熱い掌を握りしめる。
「……っ、ほむら。そんなに怖いのか?」
「……ええ。暗いのは、苦手なの。…… 嘘だけど」
最後の一言は、雨音に消えるような小さな声で呟いた。
嘘だ。私は暗闇が怖くない。怖いのは、このまま何も起きずに夜が明けて、また「完璧な幼馴染み」に戻ってしまうこと。
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その頃、駅前のファミレス『デリデリ(Deli-Deli)』。
「きたきたきた! 停電情報! 藤原家の一帯、ピンポイントで落ちてるよ!」
あおばがスマホの停電速報画面をみもりに突き出す。二人は今、季節外れの「激辛アラビアータ」を完食し、真っ赤な唇でニヤリと笑い合っていた。
「よっしゃ、電力会社の点検作業、意外と時間かかるはず。……みもりさん、お兄ちゃんのスマホ、もう電源切れてるよね?」
「抜かりないよ。さっき『充電器壊れてるから貸して』って嘘ついて、私が預かったまま。ほむらのスマホも、あおばがカバンから抜いたんでしょ?」
策士二人は、ドリンクバーのコーラで乾杯する。
「スマホなし、明かりなし、大人なし。……これで何も起きなかったら、あいつら一生『おままごと』してればいいよ」
「ほむら姉さまの**【執念】**なら、暗闇をチャンスに変えるはず。……あーあ、私たち、いい仕事しすぎだよね」
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「……あ、スマホ。充電、切れてる……」
悠真の困ったような声。私のバッグの中にあるはずのスマホも、なぜか見当たらない。
暗闇に溶ける二人。
握った手から、悠真の指が私の指の間に入り込み、指を絡めてくる。いわゆる**【恋人繋ぎ】**。
「……悠真」
「……ごめん。でも、こうしてると、落ち着くから」
悠真の声が、すぐ耳元で聞こえる。
暗闇は、普段なら口にできない本音を引き出す魔法だ。私は彼の手を引き、一歩、その胸に飛び込んだ。
「……完璧な私じゃなくても、あなたは、隣にいてくれる?」
「……当たり前だろ。俺は、……今の、ちょっと震えてるお前の方が、好きだよ」
『好き』。
その言葉が、私のダムを決壊させる。
私は彼の首に腕を回し、完璧に整えていたはずの髪が乱れるのも構わず、彼を強く抱きしめた。
「……離さないわよ。絶対に。……死んでも、離してあげないんだから」
暗闇の中で、私の瞳には、獲物を決して逃さない捕食者のような熱い光が灯っていた。
第5話を最後までお読みいただき、ありがとうございます。
ついに重なった指先と、暗闇に紛れたほむらの本音。
「完璧」という鎧を脱ぎ捨てた彼女の執念は、もはや誰にも止められない領域に入りつつあります。
昨日の投稿をお待たせした分、この第5話でほむらの「熱」を感じていただけたなら幸いです。
停電が直った後の二人はどうなるのか。
そして、このまま静かな朝を迎えられるのか……。
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