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番外編1:モニターの裏側。――策士たちの休息と、もう一つの執念

「……ふぅ。今日もいい記録データが取れたね、みもりさん」


藤原家のあおばの自室。あおばは、いくつものディスプレイに囲まれたゲーミングチェアに深く身体を沈め、大きく伸びをした。


画面には、寄り添って歩く悠真とほむらの後ろ姿が、定点カメラの映像として映し出されている。


「ええ。ほむらの執念は、もはや芸術の域に達しているわ。……さて、定時報告はここまで。ここからは私たちの『オフタイム』よ」


通信の向こう側で、みもりもまた、いつもの『デリデリ(Deli-Deli)』の指定席を立ち、プライベートなモードに切り替えたようだった。


一時間後。二人は駅前にある、知る人ぞ知る隠れ家風のコンセプトカフェにいた。


ここは監視カメラもなく、プライバシーが完全に守られた「策士たちの聖域」。


「……で、あおば。お兄ちゃんたちの監視で忙しいのは分かるけど、あなたの『計画』の方はどうなってるの?」


みもりが、フリルのついた豪華なパフェを優雅に突きながら、あおばを上目遣いで見た。


「私の計画? ……ああ、例の『幼馴染完全飼育シミュレーション』のこと?」


あおばは、スマホのプライベートフォルダを開き、一人の少年の写真を見せた。


「今のところ、順調だよ。ほむら姉さまの手法を参考にして、彼の登下校ルートの自販機、全部彼好みのラインナップに差し替えさせておいたから。……もうすぐ、彼にとっての『運命の飲み物』は、私が選んだものだけになる」


「……ふふ、相変わらず手際がいいわね。私は、気になる准教授の論文をすべてゴーストライターとして添削中よ。彼が私の思考なしでは一歩も前に進めなくなるまで、あと数ヶ月かしら」


「……あはは! 私たち、本当にほむら姉さまのこと言えないね」


あおばがコロコロと笑い、ストロベリーシェイクを吸い込む。


「作戦名:『策士の休暇タクティシャンズ・ホリデー』。……でもさ、みもりさん。私たちがこうして暗躍してるのも、結局はお兄ちゃんたちが『幸せな檻』の中で笑っててほしいからだよね」


「……そうね。秩序のない自由なんて、ただの混沌よ。……愛という名の重力で誰かを縛り付ける快楽を、私たちは知ってしまった。……さあ、あおば。デザートを食べ終えたら、明日の『新婚生活・遠隔サポート計画』のブリーフィングをしましょうか」


「……了解! ……あ、そういえばみもりさん。さっき、私たちの背後の席に、私のターゲットの彼が座ったよ」


あおばが鏡越しにニヤリと笑う。


「……計算通りね。彼が今日ここに来るように、クーポン付きのスパムメール……じゃなくて、招待状を送っておいたもの」


モニターの裏側。そこには、ほむらに負けず劣らずの「執念」を燃やす、若き策士たちの日常があった。


彼女たちが監視を続けるのは、他人のためだけではない。

いつか自分たちが作り上げる「完璧な箱庭」(テリトリー)のための、壮大な予行演習なのだ。


「……完璧な彼女。……それは、私たち()()のこと、だね」


二人の少女は、冷たい飲み物で乾杯し、夜の街へと溶けていった。


明日もまた、モニターの中では幸せな監禁劇が続き、モニターの外では、新たな執念の芽が静かに育っていく。


後書き枠

番外編1、お読みいただきありがとうございました!

モニターの裏側で暗躍していたあおばとみもり。彼女たちの視線の先にある、もう一つの「完璧な計画」のお話でした。

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