第39話:完璧な彼女の終着点。――愛という名の永遠の檻(最終回)
大学の卒業式も、就職活動も、すべては私の描いたプロット通りに進行した。
悠真は、私の実家である近衛グループの関連企業へ、私の秘書という立場で入社することが決まった。
住まい、仕事、未来の家族計画。彼の人生から「不確定要素」は一掃され、すべてが私の管理する清潔なトレイの上に並べられている。
「……ふぅ。これで、準備はすべて整ったわね」
式の前夜。私は新居となるマンションのリビングで、シャンパングラスを傾けていた。
左手の薬指には、あのバレンタインの夜に誓い合った銀の輪。
And、彼の左胸には、私が刻んだ消えない刻印。
私たちはもう、法律、肉体、そして魂のレベルで、分かち難く結合している。
「……ほむら、何してるんだ? 明日は早いんだろ」
寝室から、パジャマ姿の悠真が顔を出した。
彼は以前よりも少しだけ落ち着き、 shadow、どこか、意志を私に預けきったような、穏やかな空気を纏っている。
「ええ。私たちの『入籍報告パーティー』の最終確認をしていたの。……ねえ、悠真。あなたは今、幸せ?」
私が問いかけると、悠真は少しだけ苦笑いして、私の隣に座った。
「幸せか、って……。お前に全部決められて、逃げ場もなくて、毎日お前の顔色を伺って生きてるんだ。……普通の奴から見れば、地獄だろうな」
彼は私の手を握り、その指に愛おしそうに口づけをした。
「でも……俺には、この地獄が一番心地いいんだ。……お前の執念がない世界なんて、もう寒くて生きていけないよ」
(……ああ。合格よ、悠真。その言葉が聞きたかったの)
その頃、マンションの屋上。
「……はい、ハッピーエンド。お兄ちゃんのOS、完全にほむら姉さま仕様に『上書き』完了だね」
あおばが、最新のドローンカメラで室内の様子を確認し、みもりと最後の通信を繋ぐ。
「……素晴らしいわね。ほむらの『完璧』が、ついに一人の人間を完全に作り替えた。……あおば、私たちの任務もこれで一旦終了よ。……これからは、『近衛家の親族』として、この檻を外側から補強する仕事が始まるわ」
みもりは『デリデリ』の特製ウェディングバーガー(試作)を飲み込み、ノートの全ページに『完』と力強く記した。
「作戦名:『エターナル・ラブ・ロックダウン』。……さあ、あおば。明日からは、新しい『執念』の物語を、親戚の特等席で見物しましょう」
「……さあ、行きましょうか。私たちの、終わらない日常へ」
翌朝、真っ白なドレスに身を包んだ私は、悠真の腕にしっかりと自分の腕を絡めた。
教会の鐘の音も、祝福の声も、私にとってはただの背景音楽に過ぎない。
私が手に入れたのは、単なる「結婚」ではない。
悠真という名の、世界でたった一つの宝物を、私だけの箱に閉じ込め、鍵を飲み込み、永遠に独占し続ける権利。
完璧な彼女。
それは、愛する人の自由を奪うことで、彼を世界で一番の幸福者へと変える、残酷で献身的な独裁者。
(……愛しているわ、悠真。死が二人を分かつまで……いいえ、死んでもなお、あなたは私だけのものよ)
私の微笑みは、今日も、そしてこれからも。
世界で一番、完璧で、重たい。
後書き枠
全39話、完結です!
完璧な美少女・ほむらの執念が、一人の少年を「救済という名の監禁」へと導く物語。最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。




