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第37話:19歳の誓約。――成人式の夜と、署名済みの婚姻届

1月、成人の日。


高校を卒業して初めて迎えるこの日は、かつての「20歳」から引き下げられた新制度によって、私たち世代にとっても公的な「自立」を意味するものとなった。


振袖に身を包んだ私は、鏡の前で自分を点検する。完璧な着付け、完璧な髪型。


大学に入ってから、私の執念はさらに純度を増していた。隣室を確保し、生活のすべてを管理下に置いた今、次に必要なのは「法的な予約」だ。


「……悠真。おめでとう。これで私たちは、親の同意なしに婚姻届を出せる『大人』になったのね」


成人式後の夕暮れ。スーツ姿で少し気恥ずかしそうに立つ悠真を、私はアパートの私の部屋へ招き入れた。


「……ほむら、これ、何だ?」


ココアを差し出す私の手元から、悠真は机の上に置かれた「緑色の紙」を見つけた。


『婚姻届』。


氏名、生年月日、本籍地。私の欄は、すべての項目が淀みない達筆で埋められている。


「……私の覚悟よ。19歳になる私たちの、最初の共同作業。……もちろん、すぐに提出しようなんて野蛮なことは言わないわ。大学を卒業するまでの、これは『仮契約』」


「仮契約って……。お前、本当に用意してたのかよ」


「当たり前でしょう? 悠真、あなたの19年間の人生は、私がすべて把握している。……これからの80年も、私の管理下に置く。そのための予約票(コントラクト)よ。……今ここで、署名して?」


私は、ペンを手渡し、彼の逃げ道を塞ぐように至近距離で見つめた。


その頃、藤原家のあおばの部屋。


「……きたよ、18歳成人制度をフル活用した『リーガル・バインド(法的拘束)』。ほむら姉さま、もうお祝いっていう概念が『契約締結』に置き換わってるね」


あおばが、隠しカメラ(設置済み)の映像をみもりに转送する。


「……完璧ね。法改正はほむらのためにあったようなものよ。あおば、証人欄の署名は、後で私たちがやってあげるから、しっかり回収しておきなさい」


みもりは『デリデリ』の冬限定ホットパイを齧りながら、冷徹に笑った。


「作戦名:『()()()()()()()()()()()()()()()()()』。……これで悠真は、戸籍という名の鎖でほむらに繋がれたわ。……残るは、この執念を永遠にするための『物理的な刻印』だけね」


「……書いたよ。……これで満足か?」


悠真は震える手で、自分の名前を書き込んだ。


彼はもう、抗うことをやめている。私の重すぎる愛が、彼にとっての「酸素」になっていることを、彼は本能で理解しているのだ。


「ええ。満足よ。……でも、忘れないでね、悠真。成人したということは、自分の行動に責任を持つということ。……もし浮気なんてしたら、民事でも刑事でも、私が地獄の果てまで追い詰めるから」


私は署名済みの紙を大切にフォルダに収め、彼の首筋に深く、自分の歯型を残すように顔を寄せた。


成人。それは自由の始まりではない。


私という絶対的な支配者に、自分自身の全権利を譲渡する儀式(セレモニー)


「……おめでとう、悠真。……あなたは今日、正式に『私の夫(予定)』になったのよ」


冬の月が、窓の外で冷たく光る。

私たちの契約は、カカオの香りさえしない、インクと執念の匂いの中で完成した。


(次回予告)

次は第38話、「永遠の標。――逃げられない刻印と、狂おしいほどの独占欲」

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