第30話:卒業式。――完璧な彼女と、涙の宣戦布告
ありがとうございます!第30話ですね。
高校卒業という大きな節目を、新たな「独占の始まり」として完全制圧するほむら、まさに『永久統治領』の夜明けにふさわしい圧巻のエピソードです!ボタンをすべて引きちぎって回収する狂気的なまでの演出と、みもり達による「不動産屋への根回し」という不穏な次への伏線が完璧に噛み合っています。悠真もすでに半分諦めつつ、その重さを愛として受け入れているのが最高ですね。
スマホ画面でこの卒業という名の「移送手続き」をスリリングに堪能できるよう、改行・空行を調整し、地の文の一字下げ、そして彼女の宣戦布告を際立たせるなろう用のルビと傍点を施しました。
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第30話サブタイトル
第30話:卒業式。――完璧な彼女と、涙の宣戦布告
本文
サクラの蕾が少しずつ膨らみ始めた、三月の朝。
今日、私たちはこの学び舎を去る。
けれど、私にとって卒業式は別れの儀式ではない。悠真という存在を、学校という「檻」から、私という名の「終身刑」へと移送するための手続きに過ぎない。
式典の間、私は代表として壇上に立ち、淀みない答辞を述べた。
「……私たちは、新たな世界へと羽ばたきます」
口先ではそう言いながら、私の視線は会場の隅、あおばとみもりの間に座る悠真を捉えていた。
(羽ばたく? いいえ。あなたは私の指先から、一歩も外には出さないわ)
式が終わり、喧騒に包まれる教室。
後輩たちに囲まれる悠真の姿を見つけ、私は迷わず割って入った。
「……悠真。少し、いいかしら?」
「あ、ほむら! 答辞、すごかったぞ」
「そんなことより、悠真。……制服のボタン、全部私にちょうだい」
「えっ!? 全部かよ! 普通、第二ボタンだけだろ?」
周囲がどよめく。けれど、私は冷徹に続けた。
「当たり前でしょう? あなたの高校生活の証を、他の誰かに渡すなんて許さない。……糸一本、ホコリ一つまで、あなたの三年分はすべて私が回収するわ」
私は震える手で、彼の制服のボタンを一つずつ、自らの手で引きちぎるように外していった。それはまるで、彼という存在を解体し、私のコレクションに加えるような、倒錯した愉悦を伴う儀式だった。
その頃、いつもの『デリデリ(Deli-Deli)』の窓際。
「……見た? ほむら姉さまの『ボタン全回収事件』。お兄ちゃん、今頃シャツの前がはだけて寒がってるよ」
あおばが、新作の『デリデリ・さくらラテ』をすすりながら、遠隔で撮影された画像を確認する。
「……執念の極みね。卒業という解放感を、一瞬で『独占』に塗り替えたわ。……でも、あおば。これ、まだ序の口よ。大学に入れば、親元を離れた『一人暮らし』という名の、さらに深い迷宮が待ってるんだから」
みもりは、ノートの『ほむら・永久統治領』に新たなページを書き加えた。
「作戦名:『グラデュエーション・コンプリート・ハック』。……さあ、次は大学の入学式ね。……あおば、不動産屋への根回しは終わってる?」
校門を出る時、私は空いた手で悠真の腕を強く引いた。
「……悠真。今日で『幼馴染み』という肩書きも、卒業ね」
「……ああ。そうだな。……少し、寂しい気もするけど」
「寂しがる暇なんて与えないわ。……明日からは、大学生活という名の、24時間監視体制が始まるんだから。……あなたの住むアパート、私の部屋の真隣……いえ、壁をぶち抜いて一つにしてもいいくらいよ」
「……はは、お前なら本当にやりそうで怖いよ」
悠真は困ったように笑いながらも、私の手を強く握り返した。
その指には、バレンタインに贈った銀の輪が、夕陽を反射して鋭く光っている。
完璧な彼女。
それは、彼を自由という名の不安から救い出し、愛という名の確かな束縛で満たす救世主。
卒業証書を抱えた私たちは、サクラの木の下で、誰よりも重く、誰よりも深い、未来への宣戦布告を交わした。
「……さあ、行きましょう、悠真。……私たちの『本当の生活』は、ここからよ」
(次回予告)
次は第31話、「新生活の罠。隣の部屋は完璧な彼女」




