表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/40

第25話:最後の一戦。――エリカが突きつける究極の選択

昨夜、冷たい雨の降る公園で、私たちは互いの醜さを晒し合った。


「重い」と言われ、突き放され、それでも「お前なしじゃ生きていけない」と抱きしめられた。


私の独占欲は、もはや「完璧」という綺麗な器には収まりきらない。けれど、悠真はその溢れ出したドロドロの愛を、逃げずに受け止めてくれたのだ。


しかし、物語はまだ終わらない。


翌朝、登校した私たちの前に、神崎エリカが立ちはだかった。その瞳には、今までのような余裕はなく、苛立ちと焦燥が混じっていた。


「……悠真、昨日の夜、あの子と会ったんでしょ? 酷い顔してる」


エリカが私の横を通り抜け、悠真の頬に手を伸ばしようとする。私は無言で、その手を叩き落とした。


「触らないで。……彼は昨日、私のすべてを受け入れると誓ってくれたわ。あなたの入る隙間なんて、もう()()()()()も残っていない」


私の言葉に、エリカは自嘲気味に笑った。


「……へぇ。でも、悠真はまだ『約束』を果たしてない。……ねえ、悠真。今日、放課後のグラウンドで私と勝負して。私が勝ったら、あんたの『一番』を返してもらう。……あんたが勝ったら、私は二度とあんたたちの前に現れない」


「……エリカ。そんな勝負、意味がないよ」


悠真が困惑して答えるが、エリカは譲らない。


「意味はあるわ! 私は海外でどれだけあんたを支えに走ってきたか、あんたにだけは見せる権利があるはずよ!」


その頃、いつもの『デリデリ(Deli-Deli)』。


「……きたよ、スポ根の皮を被った『最終決戦』。エリカさん、やっぱり最後は自分の土俵に引きずり込んできたね」


あおばが、新作の『()()()()()()()()()()()()()』を噛み締めながら、戦況を予測する。


「……あおば、これ、悠真が勝っても負けても、ほむらの心が試されるわ。悠真が『過去』を振り切る瞬間を、ほむらがどう見守るか。……それがこの物語の本当のゴールよ」


みもりは、いつになく真剣な表情で窓の外を見つめた。


「作戦名:『ラスト・ラン・ラスト・ラバー』。……あおば、記録の準備はいい? 二人の恋路を邪魔した女が、どう散っていくのか。……そして、ほむらがどう『正妻』として君臨するのか。一秒も見逃さないわよ」


放課後。夕闇が迫るグラウンド。


陸上部のウェアに着替えたエリカと、制服のままの悠真がスタートラインに立つ。

私はその光景を、ゴール地点でじっと見つめていた。


「悠真! 忘れないで、あんたを一番近くで支えてたのは、私だったんだから!」


エリカの叫びと共に、二人が走り出す。


エリカの走りは速かった。執念を燃料に、風を切り裂いて進む。

けれど、悠真の走りは、彼女のそれとは違っていた。


必死に、泥臭く、何かを振り払うように。


(……走りなさい、悠真。私のために。……過去の幽霊(ロスト・メモリー)を、その足で踏み潰して!)


私は拳を握りしめ、心の中で祈った。


エリカの「過去」と、私の「現在」。

二人の女の情念を背負って走る悠真が、ついに私の待つゴールへと飛び込んできた。


僅かな差で、悠真の身体がテープを切り、勢い余って私を抱きしめる。


「……勝ったぞ、ほむら。……俺の『一番』は、今も、これからも、お前だけだ」


息を切らし、私の肩で笑う悠真。


その背後で、エリカがその場に膝をつき、激しく肩を揺らしていた。


勝利の女神(パーフェクト・ガール)は、完璧な彼女――私に微笑んだのだ。


(次回予告)

次は第26話、「別れと門出。エリカが残した最後の言葉」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ