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第24話:氷解。――夜の公園でぶつかり合う本音

「……どこに行っていたの?」


玄関先で私を待っていたのは、暗闇よりも深い絶望と、焼き付くような嫉妬だった。


街灯に照らされた悠真の顔は、驚きと、そして……後ろめたさに満ちていた。

その表情が、何よりも私の心を切り裂く。


「ほむら、どうしてここに……。寒かっただろ、中に入れよ」


「答えて。エリカさんと会っていたんでしょ? 私に嘘をついてまで、何を話していたの?」


私は彼の腕を掴んだ。指先が白くなるほど強く。


完璧な彼女? そんなものはもう、冬の風に吹き飛ばされて消えてしまった。

今ここにいるのは、ただ一人の男を失うことに怯え、狂いそうになっている「近衛ほむら」という一人の女だけ。


「……ああ、会ってたよ。でも、変な意味じゃない。ただ、中学の頃の話をしてただけなんだ」


「『だけ』? その『だけ』のために、私に嘘をついたの? ……ねえ、悠真。私の愛は、あなたにとってそんなに価値のないものだったの?」


その頃、藤原家のリビング。


「……まずい。お兄ちゃんの部屋の集音マイク、玄関まで拾いきれてないけど……外、相当ヤバい空気だよ」


あおばが窓の隙間から外を伺い、みもりと緊急通信(LINE通話)を繋ぐ。


「……ほむらが壊れたね。でも、これは必要な破壊よ。あおば、今は手を出さないで。二人がお互いの『汚い部分』を見せ合わない限り、この関係はいつか窒息するわ」


みもりは『デリデリ』のコーヒーを飲み干し、静かに告げた。


「作戦名:『()()()()()()()()()()()()』。……完璧な仮面を割って、中にあるドロドロの愛をぶちまけなさい。……お兄ちゃん、逃げたら承知しないからね」


「重いんだよ、ほむら!」


悠真の叫びが、静寂を切り裂いた。


私は息を止める。初めて向けられた、彼の怒鳴り声。


「お前はいつも完璧で、いつも正解を押し付けてくる。俺が他の奴と話せば嫉妬して、俺の過去まで自分のものにしようとする。……俺、お前の理想通りの人間にならなきゃいけないのが、時々……すごく苦しいんだ!」


腕を掴んでいた私の手が、力なく滑り落ちる。


ああ、そうだったのね。私の愛は、あなたを幸せにするどころか、あなたの首を絞めていたのね。


「……そう。……ごめんなさい。私、……あなたを愛しすぎ、壊しちゃってたのね」


私は力なく笑い、一歩後ろに下がった。

暗闇の中、私の瞳から大粒の涙が溢れ出す。


完璧じゃない。全然、完璧なんかじゃないわ、私。


「……じゃあ、もういいわ。そんなに苦しいなら……私から解放してあげる」


私が背を向けて走り出そうとした、その瞬間。


背後から、強い力で抱きしめられた。


「……バカ。……最後まで聞けよ」


悠真の体温。震える声。


「苦しいけど……それでも、俺をこんなに狂おしく想ってくれるのは、世界中でほむら、お前だけなんだ。……エリカといた時は楽だった。でも、胸が熱くなるのは、お前といる時だけなんだよ!」


彼は私の肩に顔を埋め、絞り出すように言った。


「重くてもいい。怖くてもいい。……俺を、一生離さないでくれ。……俺も、もうお前なしじゃ生きていけないんだ」


冬の夜空の下、私たちは互いの醜い本音を晒し合い、泥沼のような愛を再確認した。


完璧な恋人ごっこは、ここで終わり。


ここから始まるのは、もっと深く、もっと重く、二度と離れられない「真実の(しゅうねん)」という名の執縛(ケージ)だった。


(次回予告)

次は第25話、「最後の一戦。エリカが突きつける究極の選択」

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