表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

第2話:放課後デリデリ・シンドローム

完璧な美少女、近衛ほむら。

彼女の心臓を止めるには、一言あれば十分だった。


迫りくるライバル(?)の影に、壊滅的な悠真の点数。

最悪のピンチは、彼女にとっての「最高のご褒美」へと変わる。


策士たちが仕掛ける罠。舞台は、逃げ場のない放課後のファミレスへ。

ほむらの暴走する独占欲が、ついに「1mm」の境界線へと手をかけ始めます。

挿絵(By みてみん)


駅前のファミリーレストラン『デリデリ(Deli-Deli)』。

放課後の店内は、近隣の高校生たちの喧騒と、甘いシロップの香りに満ちている。


「……で、結局お兄ちゃん、何て言ったと思う?」


藤原あおばが、期間限定の『いちごマウンテン・パンケーキ』の頂上にあるホイップクリームをフォークで突きながら、呆れたように言った。

向かいに座る佐伯みもりは、ドリンクバーのメロンソーダをストローでかき回しながら身を乗り出す。


「まさか、あのマネージャーの告白、OKしちゃったとか?」


「まさか。お兄ちゃん、なんて言ったと思う? 『部室の鍵、返し忘れてごめん』って。マネージャーが潤んだ瞳で自分を見つめてるのに、それだけ言って逃げるように帰ってきたんだって」


「……あはは! 期待を裏切らないヘタレっぷりだね、悠真も」


みもりはポップな笑声を上げ、自分のスマホを取り出した。

画面には、ほむら、あおば、みもりの三人で撮った写真が待ち受けに設定されている。


「ほむらもほむらだよ。さっきLINEしたらさ、『今日は読書に集中したいから、連絡は控えてください』だって。絶対に部室で『呪』って書いてるって、あの様子じゃ。……まあ、あの子が書くのは呪いじゃなくて、重すぎる愛のポエムだろうけど」


「だよねー。あの二人、放っておいたら卒業までどころか、老後まで『ただの幼馴染み』で終わりそう。お兄ちゃんは鈍感すぎるし、ほむら姉さまはプライドが高すぎて素直になれないし」


あおばはパンケーキを口に放り込み、もぐもぐと咀嚼しながら真剣な目つきになった。


「ねえ、みもりさん。そろそろ『プランB』、行かない?」


「プランB……お勉強会作戦(ハニートラップ)、だね?」


二人の視線が空中で交差し、不敵な火花が散った。


---


翌日。学校の渡り廊下。

私は、昨日の動揺を1ミリも引きずっていない(はずの)完璧な微笑み(鉄の仮面)を貼り付けて、悠真を待ち伏せていた。


「あら、悠真。顔色が悪いわね。昨日の『密談』(おんなのしわざ)で、魂でも抜かれたのかしら?」


「ほ、ほむら……。いや、それよりさ……。俺、終わった」


悠真が力なく差し出してきたのは、数学の小テストの結果だった。

『12点』。

その衝撃的な数字に、私の完璧な思考回路が一瞬フリーズする。


「……これは、芸術的な点数ね」


「笑えよ……。顧問に『次の定期考査で平均点以下なら、遠征メンバーから外す』って言われたんだ」


悠真の肩が目に見えて落ちる。


《チャンス!!!》


私の内なる執念が、ガッツポーズを決めた。


「仕方ないわね。……私が、教えてあげましょうか?」


「えっ、いいのか!? ほむら、忙しいだろ」


「いいのよ。幼馴染みのあなたが赤点で部活を干されるなんて、私のプライド(どくせんよく)が許さないわ。場所は……そうね。私の家は母が仕事で騒がしいから、あなたの家でどう?」


「助かる! ほむら、お前マジで『女神』!」


悠真の大きな手が、私の頭をぽん、と叩いた。

たったそれだけ。子供の頃から何度もあったはずの接触。なのに、頭頂部から火花が出るような熱さが全身に駆け巡る。


(女神……。いま、女神って言った……!)


《 悠真の部屋っ!! 二人きり……! 勉強どころじゃない!》


()()()()()()()()()


(どんな服を着ていけば「偶然エロい」演出ができる!? 部屋にある彼の私物をどうやって自然に回収すれば――!)


「……それじゃ、今日の放課後、お邪魔するわね」


私は優雅に背を向け、悠真の視界から消えた瞬間に全力で壁に手をついた。心臓がうるさすぎる。


その様子を、校舎の3階の窓から眺めている二人の影(プロデューサー)があった。


「よし、【ターゲット確保】完了。お兄ちゃんの部屋への誘導、成功だね」


あおばがスマホのカメラを収める。


「みもりさん、あざといマネージャーへの『偽の呼び出し』、お疲れ様でした。お兄ちゃん、本気で怒られてると思ってビビってましたよ」


「いいってことよ。さあ、デリデリ行こ。あおば、今日はドリンクバー奢りね」


二人は軽やかに踵を返し、夕暮れに染まる街へと消えていく。

その先で、一人の少女の暴走する執念が、静かな部屋で爆発しようとしていることも知らずに。


(第2話・完)

第2話をお読みいただきありがとうございます。


完璧な美少女、ほむらの脳内が今日も忙しいです。「女神」という一言で沸騰してしまうあたり、彼女の「パーフェクト」は悠真の前では砂上の楼閣のよう。


そして暗躍する策士コンビ、あおばとみもり。

(イラストの左側のショートカットの子がみもりで、右側のポニーテールの子があおばです)

彼女たちの友情の根底には「大切な人の本当の笑顔が見たい」という意外と純粋な願いがあったりなかったり……。


次回、第3話はいよいよ密室!

「悠真の部屋でお勉強(でも集中できない)」をお届けします。

1mmの距離が、ほむらの理性を焼き切るのか。


ぜひブックマークや評価で、彼女の暴走を応援してください!


ファミレス『デリデリ』のイメージソングはこちら:https://suno.com/s/LzHVGRPb6XOfm4V8

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
12点 ワシか(^^;
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ