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揺らぎ


「そうですか…」


「…ありがとうございました」


セレストは軽く頭を下げる。


遠くで、機械の駆動音が低く響いていた。

街中に張り巡らされたパイプからは白い煙が立ち上り、

無機質な建物の間を、作業用のロボットが絶え間なく行き交う。


都市の中心から少し外れた一角。

セレストは、何人目かの通行人から話を聞き終えたところだった。


(この街の人達はあまり”信仰”を必要としていない)


(“教え”のおかげで秩序がある)


(“教会”の治療で救われている人がいるのも……事実)


壁に背を預け、小さく息をつく。


(私の事も言ってたけど)


ふと、思い出す。


「黒髪の聖女、すごかったよ」


「言葉は少ないけど、本物だな」


(……ソレイ)


自然と、頬が緩む。


(褒められると……やっぱり、嬉しい)


(ーーでも)


(アレは効いたな…)


「私は診てもらったけど、

弟は診てもらえなかった!」


「聖女様?あー教会の”広告塔”だろ」


「富裕層や立場ある人間は優先されてるようだぜ」


断片的な声が、頭の中で重なる。

消えては、浮かび上がる。

疑いは、静かに根を張っていく。


ーーふと我に返る


(……いけない)


(待ち合わせ、過ぎてる)


さっき通った細い路地に入り急ぐ。


とその目の前に若い男が二人道を塞ぐように現る。


「彼女~さっきから色んな人になんか聞いてんじゃん」


「俺たちにも聞いてくれてもいいんだぜ」


胸元を大きく開けた、肌の白い男と、肌の焼けた男。


構っていられない、わずかに眉をひそめる。


「すみません、急いでいますので通してもらえますか」


セレストは睨みつける。


「あは~恐い~そんな恐い顔しないで」


「俺たちとメシでも食いに行こうや」


「時間もちょうど夕方だし~」


軽薄な笑い。


遠回りになるが踵を返そうとした時。


「おーいチンピラども、その子に近寄るんじゃね」


男たちの背後から声がした。


運び屋とその後ろに、ぴったり張り付くようにリリア。


(……リリア隠れてるつもりなんだろうか)


「…んだオッサン」


「俺たちがどの子に声かけようが勝手だろ」


男たちが怒鳴る。


「リリアちゃん足掴まないで」


運び屋は小声でリリアに言う。


「ナンパするならもっと相手を選べよ」


「高望みしすぎだろ」


運び屋は向き直る。


「はぁ~望んでね~し」


「むしろ釣り合ってるし」


顔を真っ赤にして反論する。


「うるせぇオッサンだな、のしちまってもいいんだぜ」


男は勝ち誇ったように言う。


「…お好きにどうぞ」


運び屋は肩をすくめる。


「ぬかせ!」


男たちが突っ込んでくる。


「リリアちゃん、横にずれて」


運び屋はリリアに促す。


最初の男の拳が運び屋に迫る。


運び屋の顔に間一髪で掠めると同時に


男の足を引っかけて転倒させる。


続く男の拳も上体を大きく下げて避ける


男は対象を無くすとバランスを崩す


と同時に運び屋は上体を素早く上げて


身体全体で男の身体を上へと突き上げる。


男は重力がなくなったかの様に


一回転して最初に転んだ男の元に落ちる。


「ぐっ……!」


騒動を聞きつけ野次馬が集まりだす。


「くそ、やってられるか」


後に落ちた男がヨタヨタと去る。


下敷きになった男も後に続き。


離れたところで


「高望みしてのナンパだろうがー!」


捨てセリフを置いていった。


と、男たちが転がっていた場所に


一つの小さな容器が落ちていた。


「おーい忘れもんだぞー」


運び屋は遠くに声をかけるが返事はない。


野次馬も興味を無くし散り散りになる。


そこにセレストが近づく。


「ありがとうございました、日向さん」


「いや余計なお世話だったかな」


「ヤルジャン、ヒュウガクン」


「まーあれくらいね」


運び屋は先ほどの容器をしまい。


(あとでリリアちゃんに聞こ)


両手をポケットにつっこんだ。


「あっ!リリア綺麗になったね」


「ソウデショ!ヒュウガクン


ワタシノ,カラダニ,ムチュウナノ」


リリアは嬉しそうだ。


セレストの表情が、わずかに曇る。


「……楽しそうで、なによりです」


少しだけ、棘のある声。


「んーまあねっ、とりあえず宿に戻ろっか」


運び屋は気にした様子もなく言う。

空はすっかり暗くなり始めていた。


機械都市の灯りが、

じわじわと浮かび上がる。


三人は並んで、帰路についた。



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