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一人

肌寒い雨が降り注ぐ中、

今日も葬儀が行われていた。


墓地の一角で親族、親しい間柄が

身を寄せあい故人への別れを惜しむ。


――最近、この光景をよく目にする。


ソレイユは、ぼんやりとそれを眺めていた。

教会では、セレストの無事を

祈る声が増えている。


だが――あの発表以来、新しい知らせはない。

胸の奥に、説明のつかない焦燥が積もっていく。

なぜか、その場を離れる気になれなかった。


そんな折、一人の少女が彼女の前に現れる。


教会の入口、雨の降る中ソレイユを待っていたようだ。


「ソレイユ様」


少女が震える声で呼びかける。


「どうした?そんなに震えて寒かったろ」


言いながらソレイユは自分の

ローブを少女にかける。


「ありがとう…ねぇソレイユ様、聞いて」


「なんだ」


膝を折り少女と同じ目線で答える。


「私のお姉ちゃんがね」


「ここで大きな箱に入って」


「寝てたんだけど」


「まだ帰って来てないの」


「知らない?」


ソレイユの視界が歪む。


「…ごめん……わからないな」


ソレイユは絞り出す様に言う。


「そうなんだー」


少女は表情を曇らせた。


だが、すぐ元の表情に戻り。


「あ、あとねセレスト様にお礼言ってほしいの」


「私この前お姉ちゃんとおばあちゃんと、ここに来たんだ」


「その時セレスト様に診てもらったの!」


少女は少し興奮気味だ。


「凄かったの!身体の変な感じが

なくなっていったの!」


「へぇ、良かったわねセレスに会ったら伝えておくわ」


「それからねーー」


少女が何か言おうとした時。


「あぁ、ここにいたのかい」


少女の祖母だろう、が駆け寄ってくる。


そして少女を抱きしめる。


「おばあちゃん痛いよー」


「ごめんね、ごめん」


「すみません、ソレイユ様」


「孫の話に付き合わせて」


老婆は申し訳なさそうにお辞儀をする。


「いや、大丈夫だ」


「さっ、帰ろ私を”一人に”しないでおくれ」


ーー”一人”ソレイユにはそれが酷くよく聞こえた。


「そっかごめんね、おばあちゃん」


ソレイユは思わず問いかける。


「すまない二人で暮らしているのか?」


「ええ、そうです……」


老婆の目から色んな感情が読み取れた。


「じゃあね、ソレイユ様」


「ローブもありがとう」


少女は満面の笑みで返す。


ソレイユはローブを受け取り軽く手を挙げる。


「あっ!あの男の人今日も居るね」


教会を後にする少女から聞こえる


「そうだねー」


何気ない会話


ソレイユはなんとなしに男性を見た


教会に頻繁に”治療”を受けに来る男性だ。


またソレイユに重たいものが重なる。


”一人”ーー生まれた村では物心ついた頃には


家族はなく、最低限の食事のみ、


寝る場所も家畜小屋。


そして、たまたま私の法力が強かったから


家族になれた人達。


ーーでも今は一人。


また一人。





雨がだんだん強くなる


豪奢な家が立ち並ぶ区画にロス議長の家がある。


その書斎に大きな窓を背に


大きな机と豪華な椅子に腰かけるロス。


その目の前に


ドワーフの坑道で崩落の後


報告の為に戻った司祭が立っていた。


「セレスト様の行方はまだ


わかりませんか?」


「はい、申し訳ありません」


「ドワーフ王国への使者は


ことごとく門前払いを受けておりまして」


「そちらへの行方は未だつかめず…」


司祭は淡々と報告する。


「ただ一つ気になる情報が」


「なんですか?」


ロスは葉巻をふかしている。


「王国に行く途中”運び屋”が同行することになりまして」


「それらしき男に一人同行者がいたと」


司祭は少し躊躇した。


「それがなにか?」


「それがセレスト様ではないかと…」


「はっはっはっ、それは面白いですね」


「それで貴方は今からどうするつもりですか?」


ロスが司祭に葉巻をさしながら言う。


「あ、いや…」


「そんな不確かな情報でしたら貴方自身で行ってらっしゃい!」


ロスは激怒しながら言い放つ。


「は、はい!た、ただいま行ってまいります」


司祭は逃げるように書斎を後にする。


外では雷が鳴り始める。


一間置いて書斎にノックの音がする。


「失礼します、ロス様」


「お客様がお見えです」


端正な若い男が書斎に姿を現す。


「今日は都合が悪いので帰ってもらいなさい」


「はい、わかりました」


「ソレイユ様にはそのようにお伝えします」


「待ちなさい!」


ロスは大きな声を張り上げる。


「そお言う事は先に言いなさい」


「早くお通ししろ」


「そして、チャイとルドにも家に来るよう使いの者をだしなさい」


「は、かしこまりました」


若い男が去った後


ロスは口が裂けんばかりに口角をあげる。


ーー凍えるような激しい雨の中ソレイユは佇んでいた。



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