表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/10

路地裏のジャンク屋


「兄ちゃんこれはまた年代物だな!」


機械都市の裏路地。

建物に挟まれた細い通りは、

昼だというのに薄暗い。

油と鉄の匂いが、空気にこびりついている。

その奥まった店先で、店主の男が大笑いした。


「ええ、今日はずっとたらい回しで…」


「だろうな、ちょっと待っててくれや奥を見てくる」


男は手を振り、店の奥へ消えていった。

機械の山に囲まれ、急に静かになる。

かすかに金属の擦れる音だけが響いていた。


「ルクナ君一人で大丈夫かな?」


さっきまで黙っていたリリアがぽつりと呟く。


「ん?」


運び屋は肩をすくめた。


「大丈夫でしょ」

「彼女、僕なんかより護身術が上手かったし」


――出発前のこと。


「……自分で確かめたいんです」


セレストはそう言って、

単独での聞き込みを申し出た。


「…悪いとは言わないよ、でもセレ身を守る術とかあるの?」


「立場上、護身術は教えられています」


「へぇ…」


すると突然運び屋はセレストに


向かって距離を詰める。


が、運び屋の視界は反転してー


空。


「ぐえっ……!」


背中から叩きつけられ、息が潰れる。


「ご、ごめんなさい!」


セレストの慌てた声。


「隙が多かったので……!」


「すごい!」


リリアが目を輝かせる。


「人が空に浮いてるの、初めて見た!」


「……キレイな空だ……」


運び屋は地面に寝転がったまま呟いた。


「やるじゃない」


なんとか起き上がる。

服についた埃を払う。


「一応、僕も多少心得あるんだけどなぁ……」

「……そんなに隙だらけだった?」


「……ええ……まあ……」


セレストが視線を逸らす。


運び屋はため息をひとつ。


「こんな僕が言うのもあれだけど」


「人が多すぎず、少なすぎない


ところで聞き込みしたほうがいいよ」


「あとなんとなく周りを気にしながらね」


「気にしすぎてもしょうがないから」


「!はい、わかりました」


セレストは真剣に頷いた。


「話は終わり?」


リリアが割り込む。


「一緒に行こ」


リリアが無邪気に言う。



「心配してないって言えば嘘だけどさ」


運び屋がぽつりと呟く。


「ずっと一緒ってわけにもいかないしね」

「彼女には彼女のやり方があるよ」


その時、奥から重い音がした。


「あったぜ兄ちゃん」


四肢のパーツを籠車に入れ運んでくる。


「そっちの胴の部分は板金するとして


全部合わせてこんなもんか」


店主は金額を提示する。


運び屋は金額を見て驚く


(…安い)


「えっ、あの金額間違えてないですか?」


「大丈夫だ、俺はこの型好きだが


店の肥やしにしててもしょうがねぇ」


「その型はな、もう何十年も前に


”ベルナー夫妻”が作り上げた物なんだ」


リリアがガタりと動く。


運び屋の視線も鋭くなる。


「そのベルナー夫妻とは


どの様な方々なんですか?」


「あーそうだなこの都市では、


その当時大天才の二人で」


「100年先の物を作り出せるん


じゃねーかと噂されるほどの方よ」


「でも娘さんが不治の病でな、


娘さんが亡くなってから」


「あまり人との交流は


なくなっちまったって話だな」


似たような話は道中のジャンク屋に聞いていた。


「周りは哀れだのいってるが、俺は恩義しかねー」


「俺の腕義手だろ、これの初期型を


作られたのもベルナーさんよ」


金属の指が、わずかに軋む。


「俺はガキだったから直接、お会いした事はないが」


「あの方々は”未来”に繋がる偉業を成し遂げていらっしゃる」


「俺も憧れてこの職をしているしな」


男はどこか懐かしそうに言う。


「…立派な方々なんですね」


少しの間。


運び屋が口を開く。


「一つ、いいですか」


「ん?なんだ」


「教会について印象はありますか?」


「変な事を聞くな兄ちゃん」


店主は鼻で笑う。


「俺たち機械都市の人間はだいたい」


「祈るよりボルトをしめろって!感じだからな」


「それに情報の多さなら世界一だと思うぜ」


「信憑性は置いといてな」


少し考える。


「最近じゃドワーフのところの瘴気を払ったんだろ」


「病気の子を救ってくれたとか」


「いい話も聞く」


「……ただ」


声が低くなる。


「優先順位があるとか聞くぜ」


「優先順位?」


店主は肩をすくめる。


「ああ、金や立場のあるやつを先にってやつよ」


運び屋の目が細くなる。


「あと次期教皇様の事で

ピリピリしてんじゃねーか、とかな」


「そうですか、ありがとうございました。」


「んじゃそっちのロボットを、ちょいと預かろうか」


その時ロボットの目のセンサーが赤く光る。


「…あ」


リリアには一応人前では


喋らないように頼んでいる。


問題があれば何か反応をするようにと。


「すみません、僕が直接やりたいのですが」


「道具をお借りすることはできますか?」


「…あぁ、構わねーよ」


運び屋は工具を受け取る。


「ありがとうございます、お借りします」


しゃがみ込み、ボディに触れる。


「ヒュウガクン」


リリアが言う。


「ワタシノ,カガママボディガ,キニナル?」


運び屋は一瞬手を止め、


「…そっすね、かなり官能的かと」


「……大丈夫か、兄ちゃん」


店主が呆れたように呟いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ