ハリス、真相を知る!?
久しぶりのハリス視点。
タイトルでオチをばらす作品を目指します!
「お嬢様、今ならもう真相を話しても、大丈夫なのでは無いでしょうか・・・?」
その日はシトラのこの一言から始まった。
いつもなら賑やかな会話飛び交う朝食。
しかし、この日の朝食は、空気がはっきり言って不穏だった。
原因はミリー。
いつもなら快活に話す彼女が、今日に限って沈黙していた。
そんな中、最近ようやく一緒に座って食事をしてくれるようになった侍女のシトラが冒頭の発言をした。
それに激しく反応したのがミリーだった。
「・・・そうね、何時までも隠し通せるとは限らないわけだし、ね・・・」
いつもと違う彼女の様子に、私の心には不安の渦が巻き始めていた。
「ハリス・・・、あなたに伝えないといけないことがあるの。正直、言うべきかどうか悩んでいたけれど・・・、今をおいて他に機会は無いと思うから、話すわね」
そう言ったミリーはお腹に手を当てて、しっかりとした目で私の目を見つめてきた。
これはもしかして・・・、子供を授かった!?
「ハリス、実はね、私はアレクサンドリア本人なの」
・・・え?
「この紅茶、深紅紅茶は知っているわよね? ドロア公爵家の特産品の」
「あ、ああ。他の地域の紅茶に比べて、飲んだときの味わい深さやリラックス効果は格段に高いからな」
あ、えっと、・・・?
ちょっと予想と違いすぎて、動揺が全く隠せない。
子供を授かったとかじゃなかったのか・・・。
い、いや、そもそも、この紅茶が一体どうしたというのだろう?
それ以前に、彼女はこの紅茶が嫌いと言うことで今の今まで購入したことは無かったはずなのに、なぜここに?
「ねぇ、この紅茶はね、ドロア公爵家に縁のある人間が飲むと、偶にこういう現象が起きるのよ・・・」
そう言いながらミリーが紅茶を一口すすった瞬間、彼女の髪が一瞬で鮮やかで深い赤色に変化した。
それは、その色は、まさにアレクサンドリアの特徴とも言える髪色で・・・
「ま、まさか・・・!?」
「そう、そのまさかなの」
そう言いながら少し目線を下げた彼女の表情は、少し憑きものが落ちたような感じがして、
「この特質を生かして、そしてシトラが私の影武者であったことを利用して、私たちはあなたを騙していたの・・・。どうしても、どうしても私はあなたと共に居たかったの・・・」
懺悔するような口調で、彼女は真相を話し始めた。
その内容は、これまでの出来事に説得を与える物だった。
私は彼女と共に居たくて努力し続けてきた。
そして、彼女も同じだったのだ。
だが、私の加護がそれを引き裂こうとした。
愚かにも私は気づけなかったが、彼女は本当の加護に気づき、私を助けた上でなお共に居ようとしてくれたのだった。
そしてそんな彼女を命を賭してまで支え続けたシトラ。
私は、彼女の告白を聞きながら、涙をこらえることが出来なかった。
「・・・以上が真相よ。・・・私はあなたが言ってくれたような、信じてくれたような、優しい人では無いの。周りを利用して、大事な半身のシトラまで犠牲にしてまで、自分の我が儘を押し通すような、人間なの・・・」
そう締めくくったミリーは、目を閉じて、私からの審判を待つかのようにうつむいてしまった。
いつの間にかミリーのとなりに侍っていたシトラも目を閉じ、じっと主からの罰を待つかのように佇んでいた。
そんな彼女たちに言う言葉など、独白を聞き始めた最初から決めていた。
彼女たちの希望とは違うかもしれないが、私はこの言葉こそ最善だと思うのだ。
「真相を話してくれてありがとう」
だから私は彼女たちに、私のこの想いを伝えよう。
「まずはこの国から手に入れよう! 何、この国から出るどころか表立って活動するのは不可能だが、私の加護を餌にすれば他国の間者を釣れるだろう!」
そう、私のために彼女を失った物を、私が与え直してあげるのだ!
「もちろん、あの父相手に一筋縄ではいかないことは、十分承知している。さらにはレオンハルトまでいるのだ! だが、周辺国の多くを巻き込んでしまえば、戦力的にこちらに譲歩せざるを得なくなるだろう!」
それは私が心の片隅で想い続けていたことだった。
「まずは何よりガネーシャ王国とコンタクトを取ることだ。もちろん、最終的に奴らからは取り立てを行うつもりだが、それまでは互いに利用しているつもりであり続けよう!」
もしミリーが、全てを捨てたアレクサンドリア本人だったとしたら。
「そこを足がかりにして、周辺国とのつながりを増やし、強化していこう。侵略行為は禁止されていても、ダンジョン攻略や魔物討伐には戦力がいくらあっても足りないからな!」
彼女の失った物を再び取り戻してあげるには、どうしたら良いのかと!
「そこに私の加護を餌にすれば、他国も黙っては居まい! 何せ、追放後については条約には何も書かれていないのだから!!!」
私の熱の入った演説に、ミリーとシトラは目をパチクリしながら聴き入ってくれていた。
その姿を見た私は益々気合いが入り、いつの間にか目をつむって握りこぶしを作っていた。
「過去のこの加護持ち達は多くが行き倒れてしまった。当然だろう、王族が急に平民の生活を一人でしろと言われても出来るはずが無いからな・・・。だが、ごく僅かだがそれでも生き延びた者たちが居た。彼らはその加護を生かし、他国との渡りを付けて大きな基盤を築いたのだ!」
「あ、シトラ。ちょっとそこのフライパンを取って」
「はい、お嬢様」
「私は彼らの行動を単純な興味本位で調べ挙げていた。もちろん、自分の子や孫に加護持ちが生まれたときの対策としてだ! そして彼らの行動を分析し、私は「せーのっ!!!」ついに」
ガーーーーーーーーーーーーーーン
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「・・・あれ? いつの間にか日が高く・・・、すまない、寝過ごしてしまったみたいだ・・・」
私にしては珍しく、寝過ごしてしまった。
こんなに明るくなるまで寝てしまうなんて、開拓地に追放された直後の頃以来だ。
「ふふふ、凄く嬉しそうに寝ていたから、起こすのを躊躇っちゃったの。今日は特に急用も無かったし、偶にはゆっくりとしても良いかなって、ね♪」
そう言いながら私をのぞき込むミリーは、とても愛おしい笑顔をしてくれていた。
そんな彼女に照れてしまった私は、バツの悪い顔をしながらも、
「ありがとう、何だか素敵な夢を見ていたみたいで寝過ごしたみたいだ・・・。内容を覚えていないのが残念だけど」
彼女に合わせることにした。
実際、何か楽しげな夢を見ていた覚えはあるのだが、内容はさっぱり思い出せないし。
「そう、覚えていないのなら仕方ないわね」
そう言いながら彼女は私の衣服を用意してくれて、小唄を口ずさみながらそっと部屋を出て行ったのだった。
なんとなく、今日は良いことがありそうだ。
そんな予感を抱きながら窓を見ると既に太陽は中天に近くまで来ており、猛反省をする私であった。
お読み頂きありがとうございます。
ミリー「ハリス、記憶を失ったみたいね・・・」
シトラ「治療がもう少し遅れたら、あの世に逝っていましたからねぇ・・・」
ミリー「・・・結果おーらい、というやつね!」
シトラ「まぁ、確かに。まさか悩んだりショックを受けたりするかと思いきや、あそこまで一瞬で暴走されるとは、予想外でした」
ミリー「ほんとにね・・・。やっぱり黙ったままにしましょう。お腹にいるこの子のためにも、平穏な日々がしばらく欲しいからね」
シトラ「確かに、そうですね」
ハリス「何故か頭の後ろが痛い気がする・・・?」




