表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/35

13 マジですかっ!?

 

 戦争。

 それは有史以来、人類が犯してきた最大の過ち。許されざる行為である……。 

 


 だが、あえて言おう! 私は戦争中であると!

 


 揺れる豚車の中。



「なめんな、オラアッ!」



「あらっ、顔だけじゃなくパンチもブスですわね!」



「う、うるせえ! ゴラアッ!」



 二人っきりになった俺と聖女は、全力で戦っていた。



 俺は拳を連打し、蹴りをお見舞いし、頭突きまで食らわせた。



「吼えろ、俺の左腕!」



「えいっ!」



「うぎゃあ!」



 まあ、俺の攻撃すべてもふもふで女子にすらほぼノーダメージ。

 それに対して相手の往復ビンタ容赦ないけどな……。


 



 ところで。

 なんでこうなったかと言うと、およそ一時間前に遡る。



 聖女とご対面した後、知り合いらしいユフィーと彼女の会話が続いていた。

 そこへ五人いた騎士たちが集まって来てなにやら相談をし始めた。

 そして、アルバートが切り出したのだった。



「ユフィー殿、もしよろしければラミスの王都まで聖女様護衛を手伝って頂けませんか」



「護衛を、ですか」



「はい。お見受けしたところ聖女様とも旧知のようで身元も確かなようですし。それにお強い。お恥ずかしい話、もしまた先ほどのような襲撃があったら、聖女様を守り切れるかどうか……」



「この先もまだ襲われると?」



「ラミスの王都まではまだ距離があります故」



 アルバートの言葉に騎士全員が頷く。

 なんだろう、この人たち。「聖女様は俺たちが死んでも守る!」みたいな気概とかプライドとかないのか。



 俺はもちろん首を横に振ったよ。


 ラミス神聖王国って、地図でいうと女神の頭部分で、腹部分にある黒竜山脈とは方向真逆だし。いろいろこの世界を見て回るにしても人間の姿に戻ってからでしょう。


 けどユフィーは、顎に手を当てて考え込んでしまった。



 なんで?



「それは良い考えですわ」



 そこへチューバッカ──聖女アナスタシアも乗っかってきやがった。



「正直申しまして、現在私はガーネット王よりお預かりした貴重な魔道具を、ラミスの王都にあるラミス教本部へ届ける役目の最中ですの。これは教団のみならずラミス神聖王国とガーネット王国、両国にとっての重要案件ですので、死んでも果たさなければなりません」



 国が絡んでるから騎士が護衛なのね。 

 まあ、そう言われてもね……、ぶっちゃけうちらには関係ないし。 



「ユフィーさん、お願い出来ませんか?」



「……」



 ああ、ユフィー俺の顔窺いだしたよ。どうしようか悩んでるよ。



 よし、ここは人の良い彼女に代わって俺がはっきりきっぱりと物申してやろう。




「無理!」



「なにっ!?」 



「人語を理解できるのか!?」



 さっきの俺を見ていなかったアルバート以外の騎士が、違う意味でびっくりしてるけど知らん。 



「俺たちは黒竜山脈に用があるんだ。だいたいそんな大事な物運んでるならもっと護衛増やしとけよ」



「あなた……おブスな上におバカなのですか?」



「ああ?」



「これは極秘任務なのですわよ。そんな大勢で行列をなして行動なんてできませんわよ」



「いや……そんなの知らないし」



「無知なのですわね」



 ……話がかみ合わんぞこの聖女。

 アホなのか。



「極秘任務というものは、公にはせず密かに遂行するものですわ」



 アホなんだな。他人の俺に【極秘任務】って堂々と何度も言っちゃってるし。

 ユフィーがいくら知り合いでも国絡みの【極秘】ならやっぱ相手が引き受けてから話すよね。



「それに通常の盗賊にあんな大規模なものはないのだ。いたとしても、そんな規模であれば近隣の街や村に必ず情報は出ているはずだが何もなかった」



 お前もかアルバート。聖女への突っ込みはなしか。

 騎士も脳筋なのか?



「そうですわ。これは不測の事態なのですわ」



「なら、これから増やせば? もう極秘じゃないじゃん」



「身元の保証もないものを聖女様の護衛には雇えぬのだ。確認している時間もない」



「そういうことなのです。ユフィーさん」



 アルバートとアナスタシアが畳みかけてくるよ。なんなのこの人たち。

 しかも最後は俺を無視してユフィーに問いかけてる。

 


 なぬ!? マジかユフィー……。



「……ノゾミ」



 完全に手伝っちゃダメかな? みたいな目で俺を見てるよ、これ。



 ダメだよ、こいつらアホの集団だよ?

 引き受けたら絶対後悔するよ。

 



 けど、ユフィーはみんなに背を向けると、腕の中にいる俺にだけ小声で話かけてくる。



「さっきの盗賊団なんだけどおかしいと思わない?」



「なにが?」



「服装はボロだったけど、武器は結構いいもので手入れもちゃんとされていたし、撤退もすんなりだったでしょ」



「それって普通じゃないの?」



「普通の盗賊はもっといい加減よ。寄せ集めの烏合の集団。だいち騎士が五人もいれば怖がって襲ったりなんかしてこないわ」



「そうなのか?」



 ユフィーは「なんかしっくりこないのよね」とか言いながら考えを巡らせている。

 

 なんだろう。ユフィーってもしかして正義の血が騒いじゃう人なのか。

 

 そういえば、一緒に旅に出たはいいけど、まだ知り合って数日。

 きちんと性格とか把握しきれてないのか……。



「ねえ、アナ様も心配だし、護衛引き受けちゃダメ?」



 そう言って真顔寄せられると拒否出来んぞ。

 真顔もかわいい……とか見惚れてる場合ではない。

 だって、拒否したら「じゃあ私だけ行くね」ってパターンも無きにしもあらずだからな。

 考えなくても、ユフィーが俺に付き合う義理はないからだ。

 

 悲しいが俺たちは口約束だけの間柄なのだよ……。

 金もないし、魔物とか盗賊とかいる物騒なこの世界で、俺に一人旅とか無理だし。

 


 結局俺は、



「……お、終わったらちゃんと黒竜山脈に行くんだからね」



 ツンデレっぽく? ふてくされてそう言うのが精一杯でした。



 こうして、俺たちは(ユフィーがだが)アナスタシアをラミス神聖王国の王都まで護衛することになった。



 ユフィーは、豚車の外で騎士たちと万が一の対応策を話し合いながら歩いている。

 そして揺れる豚車の中でチューバッカと二人きりにされた俺は、喧嘩中だ。


 なんで喧嘩しているかって?



 それはな……。


 この女! 聖女=美少女っていう日本男児の夢を踏みにじっただけでは飽きたらず、性格悪すぎなのだ!

 豚車に置いてかれた俺をマジマジと見て何て言いやがったと思います?



「ノゾミ……あなたってほんとうにブスですわね」



 って言いやがったんですよ!

 自分のゴリラ顔鏡で見たことあんのかコイツは!

 フゴーウゴー! とか吼えてハリソンフォードのお供でもしてろってんだ!



 そいでもって、



「あ、毒バッタですわ。お食べになる?」



 って、豚車の窓から入ってきた紫色の気持ち悪い虫捕まえて俺の口に押しつけやがった。



「食うか!」



「あら、主食は虫ではないのですか」



「あたりめえだ! しかも毒っつっただろ」



「おかしいですわね……。大抵、あなたのような変顔生物は頭が悪いので何も考えず毒虫も食べますのよ。毒のせいでブスなのですわ」



 カッチーンきたね。



 こいつ完全に俺のこと低レベル生物として見下してるよね。正直俺はブスだが、チューバッカよりはマシだからね。マシなはず。マシだよね?



 ……。まあいい。


 で、聖女の夢を壊されたこともプラスされた俺は十年ぶりにガチギレしたという訳だ。



 ん? スレイヴにもキレてた? 



 ……。細かいことは気にしたら負けだ。

 と言うわけで戦争の続き。



「必殺、目潰し──ああっ!!」



 って思ったら、飛び上がった俺の足にあろうことか、アナスタシアの短いスカートの裾が引っかかった。



 ふわり。舞い踊るスカート……。



「うわあああああっ! やめろおおおお!」



 見ちまった……。見てはいけないものを。

 


 跳ね上がったスカートの下の禁断の三角さんを……。



「きゃあっ!」



「うおえええっ!」



 カウンターの目潰しを食らった俺は、そのままアナの向かいのイスに倒れ伏した。





 チューバッカのパンツ……純白だった。しかも、ひらひらレース付き。


 ……もうイヤ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ