↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋するタイムリープ〜悲劇から始まる歪んだ恋物語〜  作者: VANRI


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/51

初めての彼女

 翌日の放課後。一人で帰り支度をしていると、宮崎さんが俺の席へ近づいてきた。


 彼女は少し照れくさそうに目を伏せながら、「一緒に帰ろ?」と声をかけてくる。断る理由もなく、「うん」と頷いて二人で教室を出た。


 廊下へ一歩踏み出した、その時だった。


 目の前から、歩いてくる花音とバタリと出くわした。ドクン、と心臓が一気に跳ね上がる。動揺を隠すように、俺は思わず視線を横へ逸らしてしまった。


 けれど、花音は足を止めることなく、すれ違いざまに明るい声を投げてきた。


「バイバーイ」


 俺に向けられたのか、それとも隣の宮崎さんに向けら れたのかは分からない。


 宮崎さんは「うん、また明日〜!」と、花音と同じように高めの声で笑って手を振り返していた。


 ――俺だけが声も出せず、ただ通り過ぎていく花音の背中を、固まったまま見送っていた。



 それから数週間、二人で一緒に帰る日々が続いた。


 学校のこと、友達や家族のこと――そんな他愛もない話をするのが、すっかり日常になっていた。


 宮崎さんは長い髪を後ろの低い位置で一つに結んでいる。話に花が咲いて大きくリアクションをとると、その長い髪も一緒にふわふわと揺れた。まるで髪の毛も含めた身体全体で感情を表現しているみたいで、見ていてどこか面白かった。


 仕草を見て「可愛いな」と思うこともあったし、一緒にいて純粋に居心地が良かった。彼女は俺の言うことを絶対に否定せず、いつも笑顔で受け入れてくれたから、話もしやすかった。


 学校にスマホは持っていけなかったけれど、家に帰ってから寝る直前までメッセージのやりやりをするのが、新しい習慣になりつつあった。


 ――付き合い始めて一ヶ月ほど経った頃、「日曜日にデートしよう」と宮崎さんから誘われた。特別な用事もなく、断る理由なんてどこにもなかったので、俺は「いいよ」と承諾した。


 そして、デート前夜。


 ベッドに横になりながら、俺は自分の心がまったく弾んでいないことに気づいて、少し焦りを感じていた。


 ……楽しみ、だよな?  だって、初めてのデートだぞ?


 それとも、これが「普通」なのだろうか。初めての彼女だから、俺が感覚を分かっていないだけ?  

 みんなデートの前なんてこんな感じなのか?

 もっとウキウキして眠れなくなる……なんて展開を、漫画やドラマで見た気がするけれど。


 今の俺の感覚は、黒木と遊びに行く前日のテンションと何ひとつ変わらなかった。


 ……大丈夫だよな? 俺は、普通になってるよな……?


 闇の中で見えない天井を見つめながら、俺は誰に届くでもない問いを、静かに心の中で繰り返していた。




 翌朝、6時前に目が覚めてしまった。待ち合わせは10時。……だいぶ時間がある。


 どうにも落ち着かないため、ベッドの中でスマホを開き、適当な動画を流して時間を潰した。


 8時過ぎ、スマホから短い通知音が鳴った。


 ――もしかして宮崎さんから「体調が悪くなった」とか、ドタキャンの連絡だろうか。


 心なしか少しの期待と焦りを混ぜ合わせながら、慌てて画面を覗き込む。


 通知画面に表示されていたのは、黒木の名前だった。


『デートデビューいいなぁ〜!  俺も早く彼女欲しいわー』

『もしかして今日、チューとかしちゃうんじゃねえの!?  どうなったか後で教えろよー!』


 好き勝手なメッセージが、連投で送りつけられてきていた。


 それを見た瞬間、俺の頭に真っ先に浮かんだのは――


 あー……黒木と遊びにいきたいな。


という、あまりにも身も蓋もない本音だった。


 ……いや、違う。これはただ緊張しているだけだ。

女の子と二人で遊びに行くなんて、人生で初めてなんだから当然だ。別に宮崎さんと行くのが嫌なわけじゃない。嫌なわけがないんだ。


 頭の中で、誰も求めていない弁明を必死に組み立ててしまう。自分でも頭のどこかで分かっていた。俺はまた、自分の本音から必死に目を逸らそうとしていることに――




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。