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拉致られたら学園長になっていた  作者: 津山直太
就職活動中に拉致される

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第7話 ナツキとお風呂と闖入者

 門の前に立ち、その全容を改めて眺める。

 20mほどの高い城壁の一部が、高さ10m、幅20mの横長の長方形で切り抜かれている。

 門と言ってはいるが柱も梁もなく、ただ切り抜かれた空白だ。


 門の向こうは4車線道路がまっすぐに伸びており、遠くに住宅街が見える。

 霞んでよく見えないが、5本の塔のようなものが建っていた。

 太陽の位置を鑑みると、4本の塔は東西南北に、ひときわ高い塔は中心に建てられているのだろう。


 門の内側に入ると、歩がスマホを操作し、どこかへ連絡をしていた。

 しばらくすると、低いモーター音がして、門の下から扉がせり上がってきた。

 扉は地下に格納されていたのか。一瞬で扉が開いたのはこの仕掛けのせいか。


「歩、待っていればいいのか?」


「はい。迎えを呼んだので、少し待っていてください」


 左に立った歩がチラチラとこっちを見ながら答える。

 少しずつ近づいてきているのは気のせいだろうか。


「ねえ、総ちゃん? なんで総会長を『歩』って呼んでるのさ」


 右前にいたサッチャンが振り向き、下から見上げるように話しかけてきた。

 片眉を上げて訝しげな表情が少し憎らしい。


「だって、この顔だぞ? 『町田』って呼ぶより『歩』って感じだろ?」


「そこは『アーチャン』とか『ムーチャン』じゃないの?」


「初対面でそんな呼び方をさせるのはサッチャンくらいだぞ。歩は『町田』って呼んだ方がいいか?」


 歩に顔を向けると、いつの間にか肩が触れるくらい近くにいて、体がピクリと震えた。

 目の高さから、オレより少しだけ背が低いくらいなので、女の子にしては長身であることを再認識した。


「え? あの、『歩』がいいです」


 目をキョロキョロさせて、耳を赤くしているところを見ると照れ屋なのだろう。

 歳を聞いてもいいものなのか?


「サッチャンって、何歳?」


「唐突だね! 私はピチピチの20歳だよ。学園を卒業して3年目」


 サッチャンが指を3本立てた右手と2本立てた左手を突き出してくる。


「学園って高校までしかないのか?」


「卒業しても学園で働けるけど、学園生は高校までだよ」


「じゃあ、歩は今年で18歳とかか?」


「私は今年17歳です。高2なので」


 歩は恥ずかしそうにうつむいたまま答える。


「町田さんは高1で総会長になった逸材なんだよ!」


「西園寺さんだって総会長だったじゃないですか!」


「へー、二人とも優秀なんだな」


「あ、総一郎さん来たみたいです」


 ようやく、ワゴン車らしき影が道路の向こうに見えた。


 ***


 案内された学園長室は中央の高層ビルの最上階にあった。

 高層ビルの近くには天を貫くような塔が立てられている。

 驚いたことに、最上階の1フロアすべてが学園長の部屋であり、住処であった。


「いくらなんでも広すぎないか?」


「広いですね。私の部屋は入り口に近い方でいいよ」


 デスクに置かれた間取り図をサッチャンが指さす。


「ん? なんでサッチャンがこのフロアに住むのかな?」


「学園長と補佐は一心同体でしょ! 私は学園長の影。一緒にいるのが当たり前!」


「じゃあ、サッチャンの部屋はそこで決定と」


「あれ? なにかツッコミは! 若い男女が同じ部屋に住むなんて――とかさ!」


「ルームシェアみたいなもんだろ。鍵も別だし問題なし」


「ふん。学園長が同じフロアに女を囲っているって噂をたててやるから」


 デイパックを肩にかけ、サッチャンは自分で選んだ部屋へ入っていった。

 部屋は分かれているけど、バスルームは一緒なんだよな……。


「さて、ナツキ! 風呂に入るか?」


「ニャー!」


 デスクの上で香箱座りしていたナツキが胸元に飛びついてきたので、抱きとめる。

 野生の匂いというか、獣の匂いが鼻をつく。


 バスルームと書かれた一室に入ると、8畳ほどの脱衣場があり洗面台が3つ並んでいた。

 脱衣場から浴室へ続くドアを開けると、浴槽が3つ見えた。

 ……これ、誰が掃除するんだ?


 手早く服を脱ぎ、浴室へ入るとナツキもすぐ後ろからついてきた。

 湯気で煙る浴室は清潔で、ほんのりとシトラスの香りがした。

 さっきは見えなかったが奥にはサウナルームもあり、ちょっとしたスーパー銭湯といってもいいくらいだ。


「風呂に浸かるのは体を洗ってからな」


「ブー!」


「洗ってからな!」


「……パフ」

 

 洗面所から持ってきたブラシでナツキの毛をとかすと、ごっそりと毛がついてきた。

 元の大きさを考えると、そういうものかと何度もとかしていると、毛の山が出来た。

 これ何かに使えるのか?とりあえずゴミ袋に入れておくことにした。


「ナツキ、シャンプーするぞ。お湯をかけるからな」


 膝の上に乗ったナツキにシャワーでお湯をかけると、ギュッと目をつぶって耐えていた。

 シャンプーを泡立てナツキの毛を洗っていくが、最初はなかなか泡立たない。

 結局、3度のシャンプーを施して、ようやく泡にまみれたナツキが出来上がった。


 泡だらけのナツキがあまりに可愛く、オレは脱衣所からスマホを持ってきて写真を撮っていた。

 するとそのとき、浴室のドアが開いた。


「総ちゃん? いる?」


「いるぞ。いま、ナツキを洗い終わったところだ」


「一緒に入っていいかな?」


「いや、サッチャン? 何言ってるの?」


「早くご飯食べたいんだよ! いいでしょ?」


 バスタオルを巻きつけたサッチャンが、お構いなしに入ってきた!

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