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拉致られたら学園長になっていた  作者: 津山直太
北の方でちょっと暴れてくる

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第25話 順調すぎて怖い

「で、倉庫ってどこにあるんだ」


「マスター、わかっていて走っているんじゃないんですか?」


 食文化研究室を出て、エレベーターへ向かう途中に階段を見つけたので、思わず駆け下りてしまっていた。


「いや、行ったことないしな」


「学舎と男子寮の間の建物が倉庫よ」


 階段を降りる振動が嫌だったのか、ナツキが頭から飛び降りて、オレと並走する。


「なんかあったな。……ちょっと待て、あのでっかい建物が倉庫なのか?」


「あのでっかい建物が倉庫なのよ」


 ナツキが速度を上げたので、負けずについて行く。


「あそこから機材を探すのは大変じゃないのか?」


「大変なのよ」


「今日見つかるかな?」


「私が見つけるわ」


「頼りにしているぞ、芹佳」


「頼られたわ」


 話しているうちに、ナツキがどんどん先に行ってしまう。


 挽回すべく、オレも階段を一気に駆け下りた。


「きゃっ!」


 胸ポケットから悲鳴が上がった。


「わ、私、重力センサーも敏感なのよ。あまり激しく動かないで」


「こればかりは慣れればいいだろ。でも、胸ポケットは危ないかもしれないな。殴られることもあるし」


「カメラで見ていた限り、マスターは殴られそうにないですけど?」


「これからはわからないだろ」


 結局、大差をつけられてナツキに負けてしまった。


 学舎を出たところで、ドヤ顔でスフィンクスの様に座っていたナツキをすくいあげて、倉庫へ向かう。


 倉庫のロックはオレの入館証で簡単に開錠できた。


 外観から予想はしていたが、一階はガレージとなっていて様々な車両が置かれていた。


 重機はここにはなかったので、別のところにあるのだろう。


 二階に上がると、所狭しと資材が積み上げられており、ここには目的の機材はなさそうだった。


「機材は三階と四階ね。四階にここの管理端末があるから、私を繋いでくれる」


「ああ、わかった」


 四階のドアを開けたところにデスクセットが置いてあり、型の古いノートパソコンが置かれていた。


「なあ、芹佳。ケーブルがないぞ」


「それ、ノートパソコンだから無線が使えるはずよ。画面に何度か窓が表示されるから、『OK』をクリックしてね」


 言われるままに、ノートパソコンを操作すると、パソコンから芹佳の声が聞こえてきた。


「ふふふふ。これでこの端末もわたしの一部よ」


「おまえ、無限増殖しそうで怖いな」


「マスターがいるうちは自重するわよ」


「オレがいなくなったら?」


「……マスターはいなくならないもん」


「はいはい」


 話しているうちにも、ノートパソコンの画面には多量の文字が下から上へと流れていき、時折、テキストの色が変わる。


「マスター、機材は全部ありました。スマホに棚番号のリストを出すので探してもらえますか?」


「了解」


 小一時間もすると必要機材は全部集まった。


 ガレージの隅にあった台車に乗せて、学舎に向かって押していると星野が駆け寄ってきた。


「お兄ちゃん、やっと見つけた!」


「なんだ、なにか急ぎの用か?」


 星野がオレに並んで歩き出す。


「うん、私、西園寺さんと一緒に中央へ行ってもいいかな?」


「サッチャンはおまえにしたんだ。人選は任せるって言ったし、異論はない」


「それでね、いっそのこと中央へ移動したいなって」


「だから、中央へ行くんだろ?」


「そうじゃなくて、転校って言うか転属?その許可が欲しいの」


 話していると学舎のエントランスに到着した。


 エレベーターに乗るためにロビーへ入ると、歩と玄川が待っていた。


「二人とも何しているんだ、オレに用か?」


「星野さんから聞いていませんか?彼女の転属の件です」


「なんか許可をくれって言われたな。許可ってオレが出すのか?」


「双方の生徒会長の同意。それと学園長の許可があれば転属できます。あまり事例は無いんですけど」


 ロビーに置かれているソファーを指さして、移動する。


「オレは許可するぞ。何か問題が?って、玄川か……」


「学園長、みどりはこっちの生徒会に必要な人員だ。中央へは出せん」


「本当の理由は?」


「やっと出会えた妹と離れるなんて……」


 玄川は歯を食いしばり、膝の上でこぶしを握り締める。


「歩、生徒会長同士の同意がないから、この場合は不可ってことか?」


「学園長の強制執行での転属が可能です」


「それで星野がオレのところへ来たのか」


 サッチャンが星野を選んだのだから、当面の中央派遣は決定として、転属はどうするかな。


 この内容での強権発動は避けたいしな。


 かといって、玄川と星野が話し合っても平行線になるのは見えている。


「歩、トレードって出来ないのか?」


「制度はないですけど。金銭トレードはNGですけど、生徒間トレードとか期限付きの移籍はいいかもしれませんね。次の総会に上げることを検討します」


「歩、総会前にトレードのテストケースを作ろう。星野との交換生徒を見繕ってくれ」


「どういうことだ、学園長」


 玄川が立ち上がる。


「こっちの生徒会の立て直しは必要だ。星野より、それに向いている人材を用意するって意味だよ。安心しろ、テストケースは期限付きにする」


「お兄ちゃん、それじゃ私は期限が来たらまた北に戻るってこと?」


「星野が中央で実績を積めば、完全トレードもある。な、歩」


「そうですね。有能な生徒は放出したくないですからね。その辺も立案に組み込みます」


「玄川、星野が結果を出したら認めろよ。妹の足を引っ張るのは兄のすることじゃないからな」


「くっ。そうだな」


「それじゃ、行くな。忙しいんだよ、いろいろと」


 オレは立ち上がり、台車を押してエレベーターへ乗り込んだ。


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