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拉致られたら学園長になっていた  作者: 津山直太
北の方でちょっと暴れてくる

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22/27

第22話 つまみぐい

 月曜の朝から、オレとサッチャンは食文化研究室で冷蔵庫の中の詳細調査を始めた。


 星野と玄川は学生だから授業を受けるように言い、歩は総会長の仕事があるらしく部屋にこもっている。


「総ちゃん大変だよ! トリュフ、フォアグラ、キャビアがあるよ!」


「そうだな。こっちには、からすみ、このわた、塩うにがあるな。オレにしてみれば、ほぼ酒のあてだが」


「でも、さすがに世界と日本の三大珍味は数が少ないね」


「一度にたくさん食べるものでもないしな」


 キャビアの缶をひとつ取り出すと「ベルーガ」と書かれていた。最高級品じゃないか。


 というか、これを買った資金はどこから出ているんだ?


「サッチャン、学園の運営費は生徒会が管理しているんだろ?」


「8割はね。2割は研究費として、研究員へ渡されているよ」


「学園の規模を考えると、2割でも相当なもんだな」


「研究員の代表は前学園長で、どう配分されていたか私たちには知らされていない」


 クラッカーを探し出して、キャビアを乗せる。


 1枚をサッチャンへ渡し、オレもキャビアを味見する。んー、オレはイクラの塩漬けの方が好きだな。


「じゃあ、今の研究員代表は誰なんだ? 前学園長は更迭されたんだろ」


「さあ? 彼らの決めることだからね。歩なら何か知っているかも」


「なんにしろ、前学園長時代からここの食材費は潤沢だったってことだな」


「学園予算も使われてるだろうけど、ここの資金源はハイブランドの畜産資源だよ」


「ん? 肉が外に高く売れるってことか」


「ここの肉は幻の肉って言われている。陸路が寸断されてから、更に値が上がった」


 なるほど、内政は学生で外交は大人の仕事になっているのか。


「たしかに、ここの学食の肉って旨いもんな」


「輸出されているのは、もっとランクが上。学食へは残り物が提供されている」


「あれが残り物ね。まぁ、その事業は継続だな。サッチャン、研究員の中から適任者を選んでくれ」


「了解だよ、総ちゃん」


 食材の調査と称して、マグロの赤身を漬けにしていると研究室のドアが開き、歩が入ってきた。


「歩、お疲れ。仕事の方は済んだのか? 今日の昼はマグロの漬け丼だ」


「いただきます! じゃなくて、仕事は一段落したので、お手伝いに来ました」


「サンキュ。なんにしろ、昼飯を食ってからな。サッチャン、星野も呼んできてくれ」


 丼に炊きたてのご飯を盛り付けて、半面に刻んだ大葉、半面にちぎった海苔を敷き詰める。この海苔も高級品だ。


 その上に漬けマグロを円状に並べ、中央には細かく叩いた中トロを乗せて窪みを作る。その窪みに卵黄をそっと落とす。


 全体に漬けタレを回しかけて、仕上げにすりおろしたショウガとわさびを添えて、出来上がり。


「おにいちゃん、来たよ!」


「ナイスタイミングだ星野。って、玄川も来たのか」


 星野の後ろに学ランを着た巨体が付き添っていた。


「何度もまこうとしたのに……。意外とすばしっこいんだよ、でっかい体の癖に」


 サッチャンのつぶやきが聞こえたが、玄川の体に隠れて姿が見えない。


「大丈夫だよ、サッチャン。20人前くらいはあるから」


「さすが総ちゃん! 今日は特別だからね、玄川」


 玄川を押し込むと、サッチャンも入ってきて関係者が全員揃った。


 ナツキは屋上で日向ぼっこをしている。


「いただきます!」


「ああ、召し上がれ」


 全員が夢中になって、丼をかきこむ。


 歩までもが、2杯目の漬け丼に手を伸ばしていた。


「歩、あいつら。生徒会メンバーにも授業は受けさせろよ」


「大丈夫ですよ、総一郎さん。ネットを使ってリモート授業を受けさせています。課題も多めに出すよう教師陣にも通達しました」


「物流の方はどうするんだ、玄川?」


「寸断された道路を復旧する。学生を総動員すれば短期間で開通する」


「言うまでもないが、授業が優先だぞ。はぁ、オレも手伝うか」


「わかっている……って、学園長が手伝う? いや、現場監督はいらん」


「何言ってるんだ? オレは重機もひととおり使えるんだぞ、現場で働くに決まっているだろ」


「さすが総ちゃん、何でもできるね!」


「ほんとですよね、この漬け丼も美味しいですし」


「おにいちゃん、マジでリスペクト」


「……何者なんだよ」


「ニャン」


 いつの間にか屋上から戻ってきたナツキが頭に乗り、シッポでペシッと背中を叩く。


 昼飯を終えた星野と玄川は授業へ戻り、残ったサッチャンと歩と一緒に食材の調査を進める。


「総ちゃん。フレーバーは違うけど、アイスクリームのバルクは80個あったよ」


「アイスクリームは消費期限がないからいいが、多すぎだろ」


「頭を使うと甘いものが欲しくなるからとか?」


「だからって甘いものを食べると、血糖値が急上昇したあと急降下するから、逆効果になるとか聞いたけどな」


 ちまちまと、食材の種類と個数やグラム数をデータ化を進め、ようやく夜半に全てのデータ入力が終わった。入力は主に歩がやっていたが。


 ご褒美に、歩のリクエストでアクアパッツァを作ってやった。


 明日からは道路復旧にとりかかるか。

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