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拉致られたら学園長になっていた  作者: 津山直太
北の方でちょっと暴れてくる

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第19話 絶対に許さないからな!

 今にも飛び掛かってきそうな勢いで玄川が立ち上がり、オレを睨みつける。


 対面にいるものの、テーブルを挟み距離があるため、伸ばした腕は届かない。


「……みどりの兄は俺だ」


 食いしばった玄川の口から、重い言葉がこぼれる。


「星野、どういうこと?」


「えっ? 私……会長と兄弟なの? 意味わからないんだけど……」


 額に血管を浮かべ、血走った目で震える玄川を、サッチャンがなだめている。


「あー。玄川、後で話は聞くから。まずは、目の前の問題を……な?」


「くっ! 後でボコボコにしてやる!」


 玄川が拳を振り下ろすと、テーブルが真っ二つに割れた。


 タイミングをうかがっていたのか、小松が部屋の奥へ走り出す。


 その後をサッチャンが追いかけ、玄川も続く。


「ナツキ、小松を足止めしておいてくれる? 星野、行くぞ」


 オレは放心している星野の手を取り、部屋の奥へ向かった。


 部屋の奥には広い厨房があり、その奥に開け放たれたドアがあった。


 ドアの先にあるスロープを、一気に駆け上がる。


 上を見上げると、四角く切り抜かれた空が見えた。


 屋上からの搬入路ってところか。


 屋上には、コンテナを抱えた巨大なドローンが鎮座していた。


 コンテナの前には、元の大きさに戻った三メートルサイズのナツキが、入り口を塞ぐように立っている。


 その手前に小松、取り囲むようにサッチャンと玄川。


「チェックメイトだろ。大人しく捕まったらどうだ? 小松」


「裏切り者め!」


「裏切るも何も――」


 小松がおもむろにスマホを操作すると、ドローンの上部から一閃の光がナツキに向かって放たれた。


 激しい衝撃波にナツキが吹き飛ばされ、サッチャンと玄川を巻き込みながら転がる。


 オレは星野を抱き上げ、後ろに飛び退きながら周囲に目を配り、遮蔽物を探すが――見つからない。


「星野、下に下がれ!」


 下ろした星野を、出てきたスロープの方へ押し出す。


「ナツキ、大丈夫か? 小さくなれ!」


 体勢を立て直したナツキを見て声をかけると、子猫サイズになってオレの足元に駆け寄ってきた。


 サッチャンと玄川は意識があるようだが、倒れ伏したまま動けないでいる。


 キンッと甲高い機械音が聞こえた瞬間、ナツキを抱えて横っ飛びした。


 さっきまでオレのいた場所が、ビームによって溶岩のようにドロドロに焼かれる。


 小松を見ると、狂ったようにスマホをタップしていた。


 自律攻撃ができない?


 いや、攻撃対象の指定が追いついていないのか。


「ナツキ、サッチャンのポーチからクナイを取ってくれ!」


「ニャン!」


 ナツキが風のように走る。


 オレはビームを間一髪で避けながら、小松との距離を詰めた。


「ちょこまかと! セミオートで攻撃しているというのに、何で避けられるんですか? 化け物ですか!」


「失礼な奴だな! だったら、フルオートにすればいいだろ?」


「ちょこまか動くから、設定ができないんですよ! 止まってくれませんか?」


「じゃあ、止まってやるよ」


 脚を止めた瞬間――。


「ニャン!」


 可愛い鳴き声とともに、背後から二本のクナイが飛んできた。


「ナイスタイミングだ、ナツキ!」


 一回転しながらクナイを両手にキャッチし、振り向きざまに一本をドローンへ投げつける。


 クナイは狙い通り、ビームの射出部を精密に破壊した。


 間髪入れずに小松の前へ駆け込み、もう一本のクナイを突きつける。


「今度こそ、チェックメイトだ。観念しろ、小松!」


 念のために小松のスマホを取り上げた瞬間、最悪な予感が肌を刺す。


 オレは即座にそれを放り投げた。


 宙を舞うスマホが激しい音とともに閃光を放ち、弾け飛ぶ。


「ちっ!」


 舌打ちと、駆け出す足音が光の向こうで聞こえた。


 キューン。


 甲高いモーター音が鳴り響き、強い風が吹き荒れる。


 なんとか目を開けて前を見ると、コンテナが屋上の床から離れていた。


 吹き飛ばされそうなほどの風圧を受け、ドローンが一気に上空へ急上昇する。


「まじかよ! 大型ドローンって、そんなに速く飛ぶの?」


 見る間に小さくなったドローンは、南の方へ音もなく飛び去ってしまった。


 空をいつまでも見ていても仕方がない。


 諦めて後ろを向くと、ようやくサッチャンと玄川が立ち上がっていた。


「ナツキ、怪我していないか? 見せてみろ!」


 ナツキを抱き上げて体を調べると、横っ腹に五百円玉ほどの黒焦げがついていた。


「くそっ! あいつ、絶対に許さないからな!」


「ニャー!」


「サッチャン、無理しなくていい。座っていろ」


「総ちゃん、ゴメン……」


 サッチャンがぺたりと座り込んでうなだれる。


「気にするなって言っても、あれか……。あいつの足取りはサッチャンに任せるから、リベンジするぞ!」


「わかった。絶対に見つける!」


「玄川は……大丈夫そうだな。って、なんでそんなに睨んでる?」


「……みどりを襲った奴を逃がすなんて。許せん!」


「それは悪かったよ。でもな、オレだって怒っているんだぞ」


「しかも『おにいちゃん』だと! ふざけるな!」


「いや、それはオレが呼ばせているわけじゃないし……」


「どっちが兄か、勝負だ!」


「血縁上の兄はお前で、オレは憧れのお兄ちゃんだから。それでよくない?」


「いいわけあるか!」

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