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第33話 発電所 再出撃

前書き



武器の名前を変更します。氷結弾を「氷銃剣」に、水発射装置を「氷結エンジン」にします。


場所 地下鉄 ナナ視点



財閥、オーウェン家の会議から1週間後、


私達ハンターズは装備を整え地下鉄に乗り再度発電所に向かう事にした。


地下鉄の消毒の匂いが鼻にくすぶる。


久しぶりの出撃・・それまでハンターズの皆と訓練したとは言え、どうしようもない緊張感は変わらず拭えないままだ。



そんな事を思いながら今回の目的を振り返る。



・・目的は三つ、一つは発電所及びイロディアンの侵入を阻止する電磁ネットの機能の確認。


二つ目は内部に潜むイロディアンの残党の始末。


三つ目は創業家の財閥のメンバーから金銭支援の為のノルマを達成する為。




今回の出撃はトンネルの開拓だけではない。


イロディアンを倒して、今後の資金提供に価値があるかを見極めると言っていた。




トンネルのことはマリアさんから事前に聞いている。数年前から発電所の行き来のためにトンネルを建設していたことを。


毎回地上に出たらイロディアンの餌食になってしまう為、地下から発電所にたどり着けるようにしようとしたが、


発電所の内部にはイロディアンが沢山いることがわかり、侵入を懸念しトンネルの建設は中断され、数年間放置状態だった。




でも前回の戦いで私がイロディアンを倒したことで、この計画の成功の兆しが見え、


トンネルの建設を再度続行させる事を今回の会議で決定した。


前回の発電所の復活は、沢山の人を動かしたらしい。


今まで地上の開拓の意見にはあまりにも無茶で後ろめたい雰囲気が政治家、財閥の間で漂っていたと・・・。




私の力が加わった事により発電所は復活し、地下都市の頭上のゲートは開かれ、太陽が注がれた。


非現実的で甚だしいと思われたことが現実で起こった。きっと皆が密かに、でも大きく望んでいたのだろう。


狭い地下都市からでていつか地上でまた平和に住みたい。


その架け橋になるんじゃないかと・・私は思う。オーウェン家の人や


私達に期待を寄せた人達が今回の件で動いてくれるのなら・・・頑張ろう。皆の期待に答えることが出来るように



「頑張んないと。成功させよう・・・」


「お、」


あ・・隣で座っていた隊長が反応する。また思っていた事が口に出た・・悪い癖だ。


「気合い入ってるな、その意気だ。」


「ええ・・隊長は、足は大丈夫ですか?」




隊長の怪我はかなり大きかったはず。あのワニ型を一人で交戦して・・。


それでも負傷したのが足だけ、あんなに強いワニ型を戦って隊長は生き延びた。流石だ。


そう思ながら隊長の足を見ていると、


「ああ・・まだ若干痛みは残っているが大丈夫だ。あまりに素早い動きはできないが充分動ける。」


隊長はいたわるように脚を撫でる。



「そうですか。」


「それに休むわけにも行かない。ただでさえ人数はすくないもんな。」


「ええ・・」


「少なくなっちまったもんだぜ。見てみろ」



そう言って隊長は周囲に目を向ける。


私も流れで周囲を見ると、ハンターズの皆が座席に座っていた。



隊員と話しているマラシイさん。氷銃剣をぬいぐるみのように抱えて寝ているクラシア。


床で装備の調整をしているロバートさんとフラッサさん。そして新しく入った隊員が三人。


左は運転席。エリックさんが操縦している。


いつもは隊長が操縦しているが今回は脚を労わって交代していると。


全員合わせて15数名、すき具合が・・。スペースに余裕を感じる。一か月前に見た光景とは違う。




地下鉄に並列された30席ほどある座席。


その空きに余裕があるのだ。


一か月前に見た時はある程度埋まっていたのに・・・それだけ犠牲者が出たということか・・。


私の力を加えてもだめだった。半数の犠牲者が前回の戦いで出てしまった。


畜生・・私の力で皆を守らないといけないのに。


はぁ・・いつもの焦燥感が、この感情を消したい。


キャップを開け水を飲む。


ごく・・・


またワニ型とかロボットが出てしまったら対応出来るかな? わからない。


また犠牲者が出てしまったら・・・。



やっぱり戦場では犠牲無しに何か成し遂げるのは無理なのかな?。


マラシイさんの言う通り・・・



床・・・そんな感傷に浸り、銀色の床を見ていると肩に、暖かい感触がどっしりと置かれた。


「犠牲を生んだ事を悔やんでいるか?」


隊長の言葉で顔を上げると、隊長の拳がどっしりと私の肩に置かれている事に気が付く。



「だとしたらお前のせいじゃない。そもそもお前がいなかったら発電所も開拓は出来なかったし、


俺たちも生き残っていなかっただろう。」


「隊長もですか?」


「ああ・・、俺の強さは皆がいてこそだ。」



隊長は勝ち誇ったような笑顔でそう言った。


私はノースリーブで肩が出てるから隊長の手の暖かさが直に伝わる。


積み重なったような優しく、でも力強い。そんな暖かさだった。


「はい。」


「お前は、腕は大丈夫か?」


「ええ・・もうとっくに治ってます。大丈夫です。」



隊長は私の肩にぺちっと軽くパンチをした。でも鍛えられたその手はどしっと重くて少し痛かった。


「そっか。頼んだぞ。お前が切り札だからな。財閥の事も発電所の事も。」


「はい。了解です。」


私は静かに力を込めた口調で答えた。


そうだ。


私は負けない、何があろうと・・私は強い、イロディアンをぶっ殺す。




それから地下鉄をおり、外の扉が開かれ、広大な景色が広がった。


じめっとした蒸し暑さが辺りに漂う曇り空、乾いた砂煙が立ち込むコンビナートの中、


そして、蔓延る奴らの気配。今回は二度目・・もう大丈夫。



「よし、行くぞっ!」


「はい!!」


ブレス隊長の掛け声と共に一同、


背中にしょっている氷結エンジンから白い冷機が吹き出し、皆一斉に曇り空へと飛んだ。


私も触手を建物へと伸ばし、突き刺して縮ませ、進む。


建物の屋根まで飛び屋根の上を走り、また建物に絡ませ飛ぶと、


「距離40m前方から猛進型、イロディアンだ!!」


ロバートさんから通信、前方から這いよる数多の猛進型。


「よし、やるぞ・・」


私は意を決して、イロディアンとの戦闘が開始。


コンビナートの奥の発電所。


電磁ネットの青白い稲妻が包み込んでいる。


イロディアンを倒しつつ私たちはそこまで進み、


私達が電磁ネットの目前まで差し掛かった瞬間。


「電磁ネット解除するぞ。そこから入れ。」



監視室から通信が入る。同時に電磁ネットの電気の幕が一部解除された。


じわじわと青白い光が無くなり、一部分にほら穴のように開かれる。


私達はそこから電磁ネットの内側に入る。


ここにいるイロディアンの残党を片っ端から殺すのだ。


「総員、散開しろ!!ナナを軸にイロディアンを殺せ!」


「了解!!」


私達は散開する。


私は近づくイロディアンを葬りつつ周囲を見る。


マラシイさんが猛進型の爪の攻撃をよけ、腹に氷銃剣を突き刺す。奴は凍り、




「ナナやれっ!!」


イロディアンを突き刺したマラシイさんが私に言いつつ、エンジンを噴射させ私の後ろに下がる。


「総員一旦引け!」


マラシイさんの掛け声と共に、周りの隊員達が吹っ飛ぶかのように一斉にバックし私の後ろに下がる。


私は伸ばした触手を氷らせた奴らに向け、からだをひねり大きくフルスイング。


まるで巨大なナイフのように尖った三本の触手は奴らを水平に豪快に薙ぎ払い、爽快なほどに砕け散らせた。


態勢を直し、


「ふぅ・・」


大きく息を吐き出し自分の腕を整えると、前にいた隊員の後ろから奴が飛びがかり、覆いかぶさった。


やばい・・・


「まずい、援護だ!」


私は急いで走り腕を変形させる。


後ろでマラシイさんはイロディアンの頭にヘッドショットし、


「伏せて下さい!!」


大きいガキ爪状態の触手で、奴にアッパーをかますと、奴の体が引き裂かれ、血塊と臓器をまき散らしふっとんだ。



「ナナっち・・ありがとう。」


このモヒカン刈りは、伏せていた隊員はショウさんだ。


「大丈夫?」


「おう。さすがだね。」


私は彼に手を差し伸べ、ショウさんは立ち上がると、



「ナナ、こっちのエリアも大丈夫、とどめをお願い。」


同時に通信が、クラシアだ。彼女は隊長の方にいる。


「わかった。そっちに行くよ。」




その後私達はクラシア達の所に向かい、外側のイロディアンを片っ端から片付けた。


発電所の周りをくまなく捜索し、イロディアンを仕留めるのを繰り返す。


腕のレーダーを見ると、周囲の赤いレーダーの反応は一匹も残らずロストした。


外側の駆除は無事成功。状況は中々好調、今の所誰ひとり犠牲は出ていない。





次は内部に侵入し、中に潜伏している擬態型を仕留める。


密集しないように三人ほどの少人数で別れ、



狭い廊下を歩き私達は武器を構え、慎重に前に進む。


奴らは厄介だ。擬態型は周囲に溶け込む・・気を付けないと。


そう思うと、


「擬態型だ・・・」


ブレス隊長が小声で上斜めに指を向ける。


私とクラシアは伏せる。


上を見上げると、壁にへばりついている擬態型が何匹もいた。


でも前回とは違ってそのフォルムが目視で確認できる。電力が回復しており廊下が明るい、


お陰でトカゲ人間が透明化してへばりついているのが見えるのだ。


「これで一網打尽にする。前回はワニ型の襲撃で使い果たしたからな・・」


隊長は腰につけてる閃光手榴弾を取り、


「目を閉じろ!」




隊長は閃光手榴弾を天井に投げ、眩い光が閉じた瞼の裏側まで浸透した。


閃光がおさまると同時に、天井にいる擬態型は擬態を解き、奇声を上げバタバタと床に倒れた。


奴らは瞬間の光に完全に目をやられ、うずくまっている。


「行くぞクラシア、奴らの四俣を破壊しろ。」


「了解。」



隊長とクラシアは氷銃剣を奴らに目掛け滅多打ち。蜂の巣にし、廊下は血の海と化した。


奴らは抵抗出来ないほどの負傷を負い、私が奴らを上から触手で叩き付け、討伐した。


血が回転させた触手の勢いで舞い上がり、私の体に奴らの血が付く。


その後も各エリアの擬態型を仕留め、各班の所に赴き、発電所の内部にいる奴らを仕留めまくった。



最後のエリアにいる擬態型を仕留めると、



「よし、これだけ周回したら擬態型も出し切っただろう。やったな。」



ブレス隊長が蒸発しながら消滅するイロディアンを背に、私にグッと拳を握り向けた。


「お疲れ様です。」


私は隊長の大きく逞しい拳に私の小さな拳を合わせた。


「これで発電所を修復出来てトンネルも通せて、オーウェン家にも金の提供の信頼関係を築ける。一石三鳥だ。」


私は隊長の言葉に口許を綻ばす。


イロディアンを一掃し私達は地下鉄に戻り、南区の駅に降りる。


すると降りた先に、


「皆、お疲れ様。」


とマリアさんが迎えに・・あれ?・・マリアさんの隣に二つの見慣れない顔が。


「ハンターズの皆さん。お疲れ様でした。」




そこには財閥家のエドワードさんと息子さんのアルスがいた。


「皆さんの勇士を監視室で見せていただきました。これは凄い・・本当に地上を開拓している部隊がいるというのを強く


実感しました。これでトンネルの建設はできますね。」


と目を輝かせながら拍手をするエドワードさん。


「じゃあ軍資金は・・・」


探るように隊長が言うと、エドワードさんは満面の笑みで、


「それは勿論提供致しますよ。喜んで差し上げます。


あなた達はヒーローだ。な、アルス、お前もそう思うだろ。」



息子のアルスが何か言おうと口を開いたその時、彼は顔を下げ、激しくせき込んだ。


「大丈夫か?」


激しい息遣い、座り込むアルス君にエドワードさんは優しく背中をさする。


そっか・・彼は喘息もち何だっけ?


「・・・大丈夫だよお父さん。ちょっとここ酸素が薄いというか・・・」


「確かにここは地下だから少し冷えたのかもな・・無理をしたな。」


アルスにエドワードさんに抱えてもらいながら立ち上がり、


「ハンターズの皆さん。僕もあなた達が地上を開拓している様子を見て感銘を受けました。」


と発汗し、息を荒げながらも私達に話す。。


「かっこよかったです。僕が外に出るのも夢じゃないなって・・・」


すると隊長が何かいいたげなそうにアルス君に近づいた。




「ありがとうアルス君。それと言いたかった事だが一応俺達は君を外に連れていく。


交渉人の前で言うのもあれだが正直納得は行かないけどな。


だが俺達が政府から煙たがられてる貧乏組織である以上、資金提供の条件であるなら全力で遂行する。


今後、送られたお金で地上の開拓が出来るようにな。」




隊長の言葉にアルス君は口をかみしめ、エドワードさんの手から離れ姿勢を正す。



「・・・隊長さん。わがままなお願いですが、やっぱり僕は外に出て歩いてみたいのです。


装甲車の中なんてやだ・・じっくりと大地を踏み下ろしたいのです。」


アルス君の息を荒げながら語る必死な願望・・・


「駄目だ。」


それを隊長は即座に折るように言った。


「君の言っている事がどれだけ危険なのかわかっているのか。


会議の時にもいっただろう。辺りは枯れた大地とイロディアンしかないって・・


喘息以前に足を食われて歩けなくなるかもしれない。それでも君は足を踏み入れたいのか?」



・・・・何だかまずいことに、地下のじめっとした暑さが体中に沁みる。



「構いません。僕は体が丈夫じゃない。将来も満足に歩けるという保障はないって医者から言われました。


それにあなた達が将来も残って活動しているなんて保障はないじゃないですか。」


「何だと・・」


しびれを切らした口調。


後ろ姿から見てもわかった。隊長はムカついている。


「細い体の割に度胸のいいガキだね。」


右にいるマラシイさんがそう呟いた。


まぁ確かに・・・無茶だがそうなのかもしれない。


この子、このとんでもないほど外に出たいという欲求・・そう言えばカリナ同じ事を言ってたっけ?。


私が知らないだけで外に出たいという子達は結構いるのかもしれない。


未曾有の災害の罪はそれ程大きいということか・・。


「とにかくお前は大人しく待機していろ。外に出すことは許さん、わかったな?」


「・・・・・僕、じいじからライフルの打ち方を学んでいます。腕はある程度自身はあります。


力になれないでしょうか?」


アルス君は隊長に媚びを売り始めた。



「残念ながら間に合っている。


イロディアンは普通のライフル如きじゃ即座に回復する。一体なら目くらましにはなるかもしれないが・・・


まぁ・・・お前が外に出たい気持ちは痛い程わかった。だがお前が外に出る手段はない、諦めろ。


わざわざ連れていくだけでも有難く思え。わかったな?」


隊長は強い口調で訴えた。彼の反応は、


「・・・・・」


アルス君は黙り込んでる。悔しそうにかみしめていた。


「それで宜しいですか?エドワードさん?」




隊長は不満で頭がいっぱいのアルス君をよそに、エドワードさんに話を向けた。


「ええ・・・すみません、家の息子ちょっとわがままで、」


「本当ですね。まぁ、嫌いではありませんけど。


ですが外に出る以上、常に死と隣り合わせだというのを彼に叩き込んでおきたいのです。


少しでもトラブルを抑え、最善を尽くすために。」


「・・わかりました。」


言葉に間があった。何だかエドワードさんも何処か不満気な気がする。


そう見えた。親子って感じだ。


でも・・・またわかってしまった。


イロードのパンデミックは多くの人を狂わせたと。




狭い地下都市から出たいという欲に溺れて・・・でもそれを叶えることはとても難しい。


いや・・・出来ないのかもしれない。


地上に蔓延るイロディアンは私の攻撃意外は何度攻撃しても再生するし、殲滅はほぼ不可能に等しい。


地上は焼け、放射能で数か月も滞在出来ない。


こんな大きな災害・・世の中の理不尽・・・私一人じゃとても覆えせない。


でも、でも


左手を眺めグッと思いを込め握る。


私のこの力で何としても、弱い人を助ける・・・と。


ハンターズやオーウェン家、支えてくれる皆と力を合わせて。



ーーー第34話に続くーー-



今回は久々の発電所の出撃でした。再出撃ですので、戦闘はだいぶダイジェストにして、

後はオーウェン家の掘り下げをしました。息子のアルスの願いやナナの思いなどを重点にして

今回の話は作りました。

せっかくの新キャラですからね。次回はハンターズの特訓を書きたいなと思います。

お楽しみに~

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