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第29話 アレックス研究所編 実験 その一

場所 ハンターズ 研究所 視点 ナナ




カリナの所に行き、マリアさんと夕食を済まし、車で研究所に向かった。


夜のビルの佇む街を眺めながら、車の中で流れている音楽を聴く。


マリアさんのお気に入りの・・・ジャズの音楽・・・・


ーーーーーーーーーーーーーーーー



「・・・ナナ、ついたわ。」


体が揺れる。霧のような視界。うっすらとマリアさんが私の肩を揺らしているのが見えた。


ああ・・・・私はいつの間にか寝ていた。食後だから眠くなっていたのか。目の前には研究所の大きな門があった。


周辺はすっかりくらい森に囲まれている。前方には大きな門の前で警備員が門を開け、私達の乗っている車を誘導していた。


着いたようだ。車はアスファルトの螺旋状のトンネルへと入る。


車のモニターを見ると乗ってから一時間立っていた。私は大きく背伸びをして、


「マリアさん、今回の実験は私を使うんだっけ?」


「ええそうよ。あなたの素材を活かした兵器を造ろうと思ってね。発電所に行く前はほとんど訓練と戦闘で出突っ張りだったし。


後はもう一つあるの。それは着いてから話すわ。」



「わかった。私の能力を活かした兵器・・出来るといいね。そうすれば地上の開拓にも大きく貢献できるし。」



「うん。あなたに熱意があって嬉しいわ。そう来なくっちゃ。」



マリアさんは私を見て頭に手を伸ばし、ぽんっと手を置いた。


「了解です。」


私は明るく元気よく答え前を見ると、


トンネルの壁がじわじわと目の前に迫る。マリアさんハンドル曲げてない。マリアさん余所見して気づかないやばいやばい。



「マリアさん!!前前!壁!」


「?・・あら;」


マリアさんは急いでハンドルを左に切り返し、


「うっ!」


慣性で体が一気に右に傾く。壁の衝突は免れた。



-----------



車から降り、うすら明るい廊下を歩く。



「ちょっとマリアさん、危ないじゃない!実験の前に死ぬ所だったよ。」



本当に目の前が壁だった。危うく事故に会うところだった。


歩きながら彼女の前に立って咎めると、私の怒った声が廊下に反響する。


マリアさんは申し訳ない顔で手を合わせ


「ごめんね。つい・・・反省してるから。」



「もう・・それで、今回の実験は私の能力を分析するんだっけ?せ、せちゅじょ手術。」



「言えてないわ。そうよ切除手術。医療のメンバーが麻酔を打ってあなたの左腕の皮膚を少しえぐらせてもらうわ。


あなたの細胞をサンプルにして、武器とかあなたの正体とか役に立てればとね。


従来の切除手術通りにやるからうまくいくはずよ。」



「わかりました。手術室もあるんだね、研究所なのに。」



「ええ、ウイルスの研究に必要なの。イロードのね。主に感染者の解剖とかして解析するためにあるのよ。」



「そうなんだ。死亡者の?」



「当然よ。生きている人を研究に使ったら人権侵害で私は今頃豚箱行き。


遺族にもちゃんとそう言う許可は取ってるわ。遺体を解剖や研究に回していいかって。」



「ふーん。それで何かわかった?イロードやイロディアンの事とか・・・」



「それは次の実験に合わせて話すわ。さぁ着いたわよ。」


扉の前で止まる。


目の前には堅牢とした銀の扉。上に赤く光ったランプ、そこには活字で手術室と表記されていた。



中に入り、マリアさんが電気を付けると、白い光が照らす。


中心に白いシーツの敷かれた台がある。周辺にはモニターや医療機器、机が並び立っている。


その後は裸になり台に寝そべった。医療のメンバーが集いマリアさんの指示の基、切除手術が開始する。


医者に麻酔を注射され、一度目覚めた私の意識は再び睡魔に包まれる。


最後にお医者さんが私の左腕にメスを入れようとしている所を見た後、私の視界は真っ暗になった。



-------------------------



・・・・・・・・にか・・・・何かが見える。何? 


視線の先に、暗闇の向こうに光が・・・どんどん迫ってくる。


トンネルから出るように視界が真っ白に染まる。


眩い光から出た先には空間が広がっている。何だろう?眩くてよく見えない。


光がおさまり、空間の正体が判明した。


真っ黒な地面。地面の隙間にはオレンジ色の・・・溶岩だ。それはどんどん溶岩の地面に密着し、


徐々に黒く染まり同化していく。青空が残る夕焼けの中、不規則でおうとつの激しい溶岩の地形が形成されていく。


そしてマグマは完全に冷え、空が昼と夜を繰り返す。早送りのように雲が形の崩しながら通り過ぎていった。


地面に変化が。



草が、色とりどりの華が太陽に導かれるように芽生える。


花が咲き、周りに大きな木が出来上がりって増えていき、苔が生えやがて一つの森になっていく。


私の視界は徐々に上へと上がる。まるで周りの伸びている木に共鳴するかのように。


視界は木を、森を易々と高さを通り越し、森の全ての周囲・・それどころか奥の山も見え始める。


さっきの火山だ。視界には緑の森がカーペットのように広がり、山を一望できる高さまで着く。


その後は何か辺りが爆発して・・・爆発で下の森が開き、中で何か起こっているのが見える。


視界がぼやけてるのと立ちこむ爆発の煙幕でよく見えないが、色別は出来る。



・・・緑色の裸の人間と人間が乱戦している。緑色の人間の目が怪しく光り、


長く伸びた爪で槍を持った人間を切り裂いていった。血が舞って、森を赤く染めていく。


その光景はまるで・・・・



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「まるで、イロディアンその物だったよ。」


「・・・・そう。二日間寝ている間そんな夢を見ていたのね。」



マリアさんが椅子に座り、私の見た夢の事をメモで記している。


私は手術した後、二日後に目覚めた。今私は病室のような部屋でベットに座っていて、マリアさんと見合わせている。


左腕は何事もなかったようにすっかり回復している。本当に切除したのか疑問なくらいだった。


メモを書き終えたマリアさんが顎に手をあてる。



「これはもしかしてあなたがコンコルドに行く前に、屋上で寝たときに見た壮大な記憶かしら?」


「あ・・」


はっとした。確かにそうかもしれない。


あの地球の神秘のような記憶と何か関係が・・・でも・・



「記憶・・でもこんなの見たことない。屋上に見た時も、今回見た夢も


目覚める前の記憶・・にしては見覚えのないというか・・違和感があるの。」



「そう。でも今までも見てたんでしょ?あの・・海とか火山とか・・」


「うん。時折ね・・」


あの壮大な夢は目覚めた時にはぼんやりとした形であったが、今までも見ていた。


マリアさんにはそのこと言っている。博士で知識が豊富なマリアさんだったら何かわかると思ったからだ。


「夢・・記憶・・ね。」


そう呟き、考え込んでいるマリアさんはハッと小さく口を開け、顔を上げた。



「ナナ、もしかしてこれは・・まぁちょっとオカルトじみてるけどね・・ふふ」


「何?何でもいいよ。何かわかったなら」


「その壮大な夢はもしかしたら前世の記憶かもしれないわ。」


「前世の記憶?」


彼女はにっこりと答え、


「そうよ。よく生まれてまだ間もない頃にあるって聞くの。私の子供はなかったけどね。


例えば行ったこともない景色の記憶とか、あった事もない人なのに面識がある感じとか、


違う国の言語を習ってもいないのに流暢に喋れるとか色々あるの。夢でもそれを見る事があるんですって。」


「へぇ~凄いね。」



前世の記憶・・か。確かにオカルトじみた話だけど有り得なくはなかった。


私は確かに目覚めたばっかだ。あの地下のカプセルから目覚めて・・まだ二ヶ月ちょっとくらいだ。


夢の景色が前世の私が見ていた物だとすれば、確かに納得できる。


でも、それで済ましたら結局は何もわからずじまいだ。


さっきの夢の景色や壮大な記憶も、私のこの力も・・・何もわからないままだ。


左腕を見つめる。こげ茶色で・・木のような色。


やるせない気持ち。もしわからないままだったら・・そんな恐怖が湧いてくる。


私は何で目覚めて、この力を・・・・




「ナナ」


思いに沈んだ私にマリアさんが呼びかける。彼女は椅子を引き近づき、

私のほっぺを優しく両方でつまむ。


「そんなに腕を見て思いにふけっててもしょうがないわ。」


頬が横に伸ばされる。その後ぐいぐいと上下に頬がいじられる。顔が、ぐらぐら脳が揺れる。


「ちょっと、やめてよ~マリアさん。」


「ふふ。」


マリアさんはいたずらに満足し小悪魔みたいに笑い、手を離した。


「まぁ、前世は一つの憶測だと思うのがいいわ。

私も知識から適当に挙げただけだしそんなに深く考えるものじゃない、いいね?」


「・・はい。わかりました。」


「うん。それでよし。」


そうだ、今回の切除の成果・・・



「そういえば、私の切除手術・・何かわかった?」


「・・そうね。わかったことはあったわ。」



そういって彼女は足と腕を組む。


マリアさんは溜息混じりで、どこか不満気というか・・期待しすぎた、とそんな顔をしていた。



「あなたのその左腕、切除はしたの。」


「うん、なんかちょっとズキズキ感はある。」


「でもあなたのその細胞、切り離した細胞は10分後に蒸発して消滅したわ。」


「え?」



「普通の人間の細胞なら、こんなに早く細胞が死ぬなんて有り得ないの。それに気化してね。」


「そんな・・」



「どうやらあなたのその左半身は、宿主が切り離された瞬間に消滅するのでしょうね。まぁ、それがわかればいいわ。」



マリアさんは平静を装ってるが、どこか残念じみた感じがした。



「そうなんだ・・・ごめんねマリアさん。私の細胞、役に立たなかったみたいだね。」



「いいのよ。あなたが謝る事じゃないわ。」



「でも・・・」



「あなたがこうやって私達の研究に協力してくれるだけでも、非常にありがたいのよ。


それにあなたの細胞はとてつもなく強力だという事もわかったし。」



「え?でも消滅するんでしょ?」



「結果的にはね。あなたの細胞をどうにか保とうと冷却したりコーティングしたりしたわ。10分以内だから大変だった。


まぁ・・・結局どれも消滅したけどね。」



「ほらやっぱり。消滅したらなんも」


そう言うと、マリアさんは食い気味に


「よく聞いて、がちがちに冷却してもよ。絶対零度の液体窒素で凍らせたにも関わらず・・ね。」



「・・・え?」



「普通絶対零度で凍らせたら細胞は機能を停止するわ。でもあなたのそれは凍った状態でも蒸発し、消滅した。


塵一つ残らずね。」


いまいちピンと来ない・・でもマリアさんの神妙な表情から察するに、


「・・それは凄いことなの?」


マリアさんは膝に手を置き、頬を付いて答えた。



「ええ、凄いことよ。絶対零度という過酷な環境に落としてもなお、消えるという使命を果たそうと消滅したのだから。」


「・・でも消えたらサンプルに使えないじゃん。」



「まぁ、それもそうね。実はあなたの体ごと冷凍させるという方法も考えたの。切除したら消えるからってね。


でもあなたの体の負担がでかすぎるし、かなり長期的な実験になるから今は出来ない。そのプランは却下したわ。」



「そんな・・いいんだよ私の体を凍らせたって。私のことよりハンターズや兵器の発展を優先してよ。」



私の体なんて人の役に立てるのならどうなっても・・なんなら命だって捧げてもいい。そんな思いを込めていった。


するとマリアさんは鼻息を漏らし、頬付きから姿勢を正し、私を流し目で見つめる。



「・・あのねナナ。あなたはハンターズだけではなくこの国の未来なの。イロディアンを確実に倒せるのはあなただけ。


地上の開拓の為にあなたは死んではならない。それもたかが実験でね。


あなたが死ぬということはこの国の未来を消し去る事と同じなの。


選択は慎重に、的確にするのよ。だから今あなたを冷凍保存は出来ない。追々ハンターズの出撃もあるしね。」



「うん。発電所の開拓にまた近いうちに出る。まだイロディアンの残党がいるからそいつらを倒すために。」



「でしょ。だから冷凍保存は後回し。今はハンターズの皆と協力して少しでも地上の開拓に勤しんだ方がいいわ。」



「・・はい。」



「うん。わかればよし。」


マリアさんはニコッと笑う。その表情は大人の色気が漂った。彼女は立ち上がり、



「もう動ける?この後街に行って食事するけどナナも行く?」


白衣のポケットから車のキーを出して、くるくる回している。元々手術の痛みもあんまりないし、お腹もすいてきた。


「うん行く。今日はどこに行くの?」


「ふふん♪それは行ってからのお楽しみ♪」


その後一緒に食事をし、午後も実験に付き合うことにした。




----------第30話に続くーーーーーー


今回はマリアさん×ナナで話を進めました。

ナナが前回(3話)に見た夢、そして今回見た夢、伏線も作れましたし満足です。

マリアさんは大人のポジションなので、セリフに冷静さと落ち着きさを出せるように拘りました。

次回もマリアさんの実験の話になります。イロディアンの実験のストーリーにしたいと思います。


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