第26話 最終戦 その3
ナナっちが覚醒するよ。
自分の葛藤を克服し、前進するナナ。
扉の先は真っ赤な夕焼けに、がれきだらけの工業地帯が広がっていた。
レーダーを見てイロディアンのいる所を探り、皆のいる所に向かうため、建物の柵に触手を絡めると、
「うっ!!」
ナナが唸り、苦悶の表情が現れる。左腕からいつもより重い反動が襲ってきたからだ。
それもそのはず。
普段は三本だがもげた触手はまだ回復していない。一本だけだ。それなりの重さが彼女の身体に伝わって来ている。
「っふん!!」
それでも負けじと自分の重さに耐え、リールを巻いて行くように登っていき、空中で一回転し屋上に着く。
屋上を走ると、猛進型が二体下から現れ、赤い眼光を光らし牙を向ける。
じりじりとナナを食らおうと寄ってくる猛進型。
「ふぅ___」
ナナは止まり静かに深呼吸する。爪をたて飛びがかる猛進型。
触手を2メートルほどに調整し。
「はぁあああああっ!!」
ナナは叫び触手を伸ばし、飛びがかる奴らに体を回転させ、奴らの体を真っ二つに切り裂く。
ナナの体は奴のぶちまけた臓器と血がへばりつくが、ナナは顔を少し拭いただけで済ましポイントの所まで走る。
目標のポイントに差し掛かり下を見渡すと、クラシア達がイロディアンの大群と戦っているのが見えた。
右奥にはマラシイがワニ型と、その後ろではロバート達がロボットとワニ型と
「まずはクラシア達を・・・」
後方支援しているクラシア。
そのクラシアが弾切れを起こした。急いで装填しようとするが後ろから一体のイロディアンが。
不意にガラスを突き破り、クラシアは飛びがかられた。
「クラシアっ!!」
「ッくそ!手がだせねぇ」
隊員達は猛進型の迎え撃ちで手一杯だ。
ナナは屋上から飛び降り、真下でクラシアに這うイロディアンに向け、体を捻り、触手を横に大きく薙ぎ払った。
触手は猛進型に力強く当たり、血を飛ばし吹っ飛ぶ。そのまま混乱気味のクラシアの目の前で着地し、
「・・ナナ!?」
「大丈夫?」
ナナは右手を差し伸べ、クラシアは握り起き上がった。
「ありがとう・・大丈夫なの?」
クラシアは装填しながらナナの左腕を不安そうに見る。二本の触手が痛々しくもげているのを見ている。
「うんもう平気。まずは邪魔な猛進型を倒す。力を貸してくれる?」
「もちろん。援護するよ。」
クラシアは得意げに口角をあげ、ナナは前方で戦っている隊員達に走り、向かう。
「皆、避けてくださいっ!!」
隊員達はナナに気付き散開。
まずは粗方仕留める為に、触手を走りながら限界まで伸ばす。伸ばしきった所で
「ふんっ!!」
体を360度回転させ、重たい触手を前方の奴らに向け、薙ぎ払った。
切られたイロディアンは臓器や内部を血ごとぶちまけ、バタリと倒れるが、裁ききれなかったイロディアンが一斉にナナに向かい襲い掛かる。
「ナナ!下がってもう一度やれ!援護する。」
ナナが振り向くと空中で隊員達が撃つ構えをしていた。
長い触手を地面につけバウンスさせ、後ろに吹っ飛び、隊員達の後ろまで下がり、
「撃てぇい!!」
一斉に隊員が銃を放ち、猛進型の手足を破壊し、足止めをする。
奴らが回復している間にナナはもう一度触手を長くし、回転し横に薙ぎ払った。
粗方殲滅出来たが、残党がナナ達へと向かってきた。
「ッくそ!」
きりがない。そう思っていたナナ。すると横で迎撃していたクラシアが、
「ナナ。あなたはマラシイさん達の所に行って。」
「でも・・」
「行って! あなたは力を鼓舞する必要がある! ワニ型とロボットを倒して!!」
クラシアの言葉にナナは、
「・・わかった!死なないで。」
と答え、クラシアは
「うん。仕留めてきてナナ。」
と力強く頷いた
ナナは振り向き、建物に絡め、マラシイの所に向かった。
しばらく進み、曲がり角を曲がると、奥でマラシイさんがワニ型と交戦していた。
マラシイは壁に追い詰められていた。
「マラシイさん!」
ナナはバウンスし、ワニ型の後ろから上に飛び立ち、土壇場に触手を叩き付けた。
ワニ型はこっちに振り向き、触手で上から飛び、マラシイさんの所へと着地。
彼女は壁に当たって怯んでいた。
「・・ナナ!?回復は?」
「もう大丈夫です。私は戦います。人の為に・・」
「そうかい。満身創痍になってないか?」
「・・大丈夫です。」
「そっか・・」
見透かされてる。マラシイが立つとワニ型が吠え、獰猛に突っ込んできた。二人は散開し避ける。
ワニ型はナナが攻撃した脚と体以外は、完全に回復が完了している。着地し、
「マラシイさん・・」
「私が囮になって奴の口を開かす。その隙に中の顔を狙え。・・触手は一本か。」
マラシイはナナのもげた触手を見て不安げに言った。しかしナナはそれを覆すように、
「わかりました。一本でも大丈夫です。やります。」
「・・そうかい。ならあんたを信じるよ。」
マラシイはナナの背中をバシッと叩いた。マラシイはワニ型に装置で向かい、
ナナは後ろで構えながら口が開くのを待つ。マラシイは耐空し、銃撃しながらワニ型の正面ギリギリまで迫る。
紙一重とも呼べる距離で停まると、ワニ型は大きな口を開き突っ込む。マラシイさんは上に飛行し避け、
「今だ!!」
ワニ型のタックルは空振りし、口を開いたままナナの正面に入る。その隙に触手を伸ばし発射。
ワニ型の口の中の顔面にヒットし、顔面をえぐるが中の部位が硬いのか触手が貫き切れなかった。
ワニ型は触手をぶんぶんと振り払い、口を開けたままその場でもがいている。
「畜生・・・」
ナナはいらだっていた。
大きな口が開いている内に早く、ならばともう一度触手を中の顔面に向け、伸ばしたが回転し尻尾ではじかれた。
触手は大きく上に逸れる。
はじかれた振動が体まで伝わってくる。痺れるような痛みがナナを襲う。
「ダメか・・」
そう思ったその時、
「いや、ドンピシャだ!!」
上にはじかれた触手はマラシイの所に行った。
マラシイは空中で体を逆さにしはじかれた触手をオーバヘッドキック。軌道はワニ型の顔面へと向かって行き、顔面を切り裂いた。
顔面と体が真っ二つにわけられ、切断された所から流血しドバドバと溢れる。
ワニ型の動きは止まり力尽き、煙を上げ蒸発し、死んだ。
「やった・・・遂に・・」
「もたもたしている暇はないよ!! 次はロバート達のほうだ!」
「あ、はいっ!」
マラシイは装置で建物の路地裏を低空し向かい、ナナもそれに同行。
奥からガトリングガンの音とワニ型の咆哮が2人の耳に入る。
曲がり角を曲がろうとしたその時、角でマラシイが誰かとぶつかった。
「うわっ!」
「ッマラシイ!? ここは危ない!!」
ぶつかった相手はワニ型と戦っていたロバート達だった。ロバート達は慌てふためき路地裏へ入ったその時、
曲がり角から凄まじい銃撃が襲ってきた。横の壁が木端微塵になる。
「ロボットだ!もう来やがった。体勢を立て直す。」
ロバートとマラシイ達は路地裏を飛行し進む。
「ロバート、ワニ型はどうなった?」
「何とか氷漬けさせて今くたばってる。だがその瞬間ロボットが襲ってきやがった。猛進型もいるしな。」
「・・ロボットは私達がやろう。ナナはワニ型を仕留めるんだ。」
ナナのレーダーの反応からは動かない赤のポイントがあった。こいつがワニ型だ。
「・・わかりました。」
「俺とフラッサはナナの援護をする。」
「わかった。私達がロボットを引きよせる。その隙にナナ達は迂回してワニ型を倒せ。」
マラシイはナナに言葉を残し、マラシイ達はロボットの方向へ向かい、上へと飛んだ。
ロバート、フラッサとナナは右へと迂回し、ワニ型の所へ向かう。
工業地帯をジェットのように駆け抜けると
「ッ敵襲!!およそ五体ッ!」
建物に這っていた猛進型が牙を向いた。
「行くぞフラッサ。ナナは触手で援護しろ。」
「はい!」
ロバートとフラッサは氷の銃剣を精製し、二人は飛びがかり、爪を振りかざす猛進型を空中で切り裂いた。
奴らは真っ二つになり、ナナは着地し、下から触手を伸ばし、仕留める。
粗方片付け、ワニ型の所まで向かうと、
「あれだ!あんだけやったのにもう復活しかけてやがる・・」
奥に奴が見えた。氷の刃が体を貫き剣山のようになっていた。
それだけ刺しまくっていてもまだ動いており、
氷漬けでパきパきに漂白されているが、立ち上がりかけていた。
しかし一同その脅威的な生命力に動じず、
「ナナ、やるんだ。」
「はいッ!」
ロバートの指示のもとにナナは先に進む。
ワニ型に触手を伸ばして体に刺し、直線距離で進む。大きな口は丸開きで顔はむき出しだ。
触手を切り離し、ピンと立たせやりのような形にする。
そのまま動けないワニ型の上に急降下、上から触手を顔面にぶっさしとどめを刺した。
二体目のワニ型を仕留める事に成功。だが周辺からはガトリングガンの音が響き渡った。
「マラシイ達がまだロボット達と戦っている。行くぞ。」
「はい。」
ナナは左腕を抑えながら、少し息を荒げていた。
蒸発するワニ型の体から下り、俯き、膝を着いた。
これまで触手を一本で酷使した反動が襲って来たのか、疲労が溜まっている様子だった。
ロバートとフラッサが駆けつけ、
「大丈夫か?疲れたか?」
ロバートがナナに声を掛けた。ナナはグッと疲れと疲労をこらえ、立ち上がり、
「・・大丈夫です。行きましょう。」
「わかった。無理すんなよ。」
ロバートはそう言い、ナナの肩を叩いて、空中を飛んだ。
ナナも建物に絡めて付いていき、ロボットと戦っている所に向かった。
高い煙突が何本もそびえ立つコンビナート。その開いた場所でハンターズとロボットは戦っていた。
マラシイ達はロボットの放つ怒涛のガトリングガンとミサイルの弾幕を、装置で滑らかに交わしていく。
「こいつはドレイクをやった奴だな!絶対に仕留めてやる。」
最後のロボットはトイレでドレイクを殺した奴だった。
ロボットの装甲は半身ほど割れており配線がむき出しだった。
ドレイクがショウを庇う為に攻撃した時と思われる。
ロボットの弾幕は容赦なく周辺のコンビナートを蜂の巣にし、爆発を起こしていた。
隊員が空中でロボットを横から撃ち、ガトリングガンが一瞬横に向けられた。
「ぐわぁッ!」
隊員は肩に弾丸が当たってしまう。
マラシイはそれを逃さず、突っ込みに行く。
直前に彼女の後ろで撃たれたミサイルの爆風を利用し、勢いで氷結弾を振り下ろしガトリングガンを切り裂いた。
「ちッ!!そっちじゃない!」
マラシイは体を狙おうとしたが、爆風で逸れてしまった。
装置で大きく回り、肩を撃たれ落ちる隊員をキャッチしてロボットから離れるが、
「少佐ッ!ロボットの様子が変です!」
建物を盾に銃撃していた隊員が叫ぶ。ロボットの体は徐々に体が赤くなり、煙をあげていた。
「まさか自爆か!?ッくそ!こんな時に」
マラシイは負傷した隊員を担ぎ、ロボットから離れようとするがスピードが出ない。
「少佐ッ!!」
隊員達がマラシイを助けようと応戦しようとするが、
「近づくなッ!巻き込まれるぞ!!」
マラシイは出るなと拒否する。ロボットはキャタピラを高速回転し、砂煙をあげる。
マラシイを追いかけて爆発し、巻き込もうとしていた。
「畜生・・・こうなったらあたしが囮に・・」
マラシイは建物の窓をみる。負傷した隊員を放り投げ、自分だけ爆発の餌食になろうと考えていた。
ロボットは容赦なくキャタピラを回し、徐々にマラシイに迫っていく。
絶体絶命のその時だった。横から一本の触手がまるでドラゴンのように駆け抜け、ロボットの体を巻き付いた。
「ナナ!!」
そこには脚を地に踏ん張りつけているナナが。触手を長く伸ばし、ロボットを拘束した。
ナナはマラシイに向かうロボットを触手で食い止めるが、ロボットの力は尋常じゃなく、ナナが逆に前に引きずられていた。
ロバートとフラッサも駆けつけ、引きずられるナナを後ろから抱き、支えたが、
「っくそ・・」
ナナは引きずられ、愚痴る。
三人でもロボットの動きを食い止めるのがやっとだった。
ロバートが、
「このまま放り投げる!」
と案を出す。その答えにナナは喋れないほどに食いしばっていたが、
触手を思いっきり引っ張って彼方にロボットを投げようとしていた。
ロボットは円周に断続的に地面に擦られながらスイングされる。
三人はロボットの馬力に引っ張られ苦戦しているその時、マラシイが装置を飛ばし駆けつけに来た。
怪我人を建物に置いたマラシイは急いでナナの所に駆けつけ、2人と共にナナの左腕を支える。
「行くぞ!!」
マラシイの喝と同時にナナは力を出し切って、ロボットを人気のない所にスイングする。
ナナが振り回されないよう、三人は装置を使いナナの立ち位置をコントロールした。
ロボットは空中に飛ばされ、同時に絡みついた触手は力が尽きたようにするりとほどかれる。
四人はよたれ、尻餅をついた。
「伏せろっ!!爆発する!!」
ロボットは空中でオーバーヒートし、遂に爆発。真っ赤な炎と轟音が巻き起こる
四人は伏せ、何とか爆風と高速に飛び散る破片から守った。
「やったか?」
マラシイは呟く。
4人は空中で爆発の煙が舞い上がるのを見る。完全にロボットは爆発し、跡形も残っていなかった。
ロボットの戦いが終わったのだと、4人は溜まった疲労が一気にでて地べたに着く。
ナナも触手を元の腕に戻さず、そのまま地面に尻餅を着いた。
しかし、まだ戦いは終わっていない。4人が立ち上がろうとしたその時、ブレスレットから警告音が発された。
3人は目が覚めるようにスッと立ち上がる。
「何処からだ!?」
一つの赤いポイントが正面から4人に迫る。しかしその姿は見当たらない。
「この反応、まさか・・・」
マラシイは直ぐに察した。
「ああ、そうだなマラシイ。」
正面の地面に亀裂が走り、灰色のごつごつした巨体が地面を砕きながら現れた。
「ワニ型だ・・」
最後のワニ型が巨大な口を開き、4人に向かって吠える。
そのワニ型は随所に氷結弾の氷の刃の欠片が刺さっており、半身ほど漂白に染まっていた。
マラシイ「こいつ、下水道の時のか?」
ロバート「ああ、恐らく。」
フラッサ「じゃあ、隊長はもう・・・」
マラシイ「っくそ・・ナナ!」
ナナは立ち上がろうとしたが、がくっと膝を着いてしまう。ロボットの戦いでナナの体力は限界だった。
気合でまた立ち上がろうとしたが駄目だった。
マラシイ「あたしたちでやるぞ・・」
3人はナナを背に前に出る。しかし3人も目が虚ろになっており疲弊しきっている様子。
まるでめまいをしているかのように歩きもぎこちない。それでも諦めないとマラシイは腕の痛みをこらえ氷結弾をだす。
2人も構え、戦闘態勢に入る。
ワニ型が猛威を振るい、砂煙をあげドタバタと走りかかる。
疲弊した3人に食い掛ろうとしたその時、4人の上から何か投げ出された。
ワニ型の口の中の顔面に突き刺さり、仰向けにふっと飛ばされる。
それは氷の刃の銃剣、氷結弾だった。氷結弾はワニ型の顔面を突き刺した。
4人が誰が投げたのかと、後ろを振り向くと一人の黒人が装置で耐空していた。
「ブレス隊長!!」
4人は驚くのと同時にブレスは水発射装置を起動。噴射し即行動に移る。
「ナナ!!お前の触手借りるぞ!」
ブレスはナナの触手の先端部分を掴み、ワニ型の方へと飛ぶ。
ワニ型は体勢を立て直し、顔面に引っ付いた氷結弾を振り払う。だが視力は回復していない。
のたうち回るワニ型。
ブレスはまず下に潜り込み、ナナの触手で右前足を切断し、態勢を崩させる。
ケガしていない脚で地面をステップし、上へと飛び、むき出しの弱点の顔に向け、
「じゃあなッ!」
ナナの触手を上から顔面にぶっさした。
ワニ型の顔はミンチの状態で飛び散り、ナナの能力で回復も出来ない。
最後の一体となるワニ型は倒れ、絶命した。
隊長のブレスとも合流し、ワニ型を仕留め、ロボットを倒す事に成功したハンターズ。
それからナナ達は交代で休憩しつつ、クラシア達と合流し内部にいる残党の猛進型を仕留め、
スプリッドは監視室でハンターズが
外に出れるよう電磁ネットの一部分を一時的に遮断。遮断した電磁ネットをくぐり抜け、
怪我人を背負いながらハンターズは地下鉄まで飛行し帰還する事に成功する。
今回のワニ型とロボットはもとい、
たどり着くことでさえ関の山だった発電所の開拓は、新兵器とナナの力、そしてここまでの多くの隊員達の犠牲を払い、
10年の時を経て遂に成功を果たした。
ーーーー第26話に続く
今回はナナが自分の弱さを克服して前に進む話でした。序盤の最終戦にふさわしい展開だと思います。
ワニ型やロボットはもといイロディアンもいるので、展開の多さに少し戸惑いましたが何とか締めくくる事が出来ました。天才かぁ俺w。
やっぱ主人公は成長してなんぼですね。フィニッシュはブレス隊長になりましたが。
次回は戦闘は控えてコンコルドのゲートを開かせてようと思います。




