第20話 ;; 合流
ーー発電所 通路 第三者視点ーー
ブレス達がワニ型と交戦する少し前、ナナとクラシアは西エリアにいるメンバーのところに向かっていた。
すたすたと早歩きで、ナナは撤退の案をだしたスプリッドに連絡をする。
「こちらナナです。やっぱり隊長達を助けます。下水道エリアにいるはずなのでそちらに向かいます。」
「え?おっおい!」
スプリッドは飲んだいたコーラのペットボトル落としかけ驚き、あたふたと動揺した。
「バッばかっ!イロディアンも大量にいるかもしれないし、何が起きるかわからんぞ。
下水道には監視カメラが無いからこっちでサポート出来ないし。」
コーラを置き冷静さを取り戻すスプリッド。
「それでも私は隊長達を見捨てません。みんなで力を合わせて戦います。西エリアの人にもそう言います。」
「そうは言ってもなぁ・・」
不満げに言うスプリッドの肩に、そっとネイルのついた手が置かれる。マリアがスプリッドの肩に触れた。
「スプリッドさん、ここはあの子に任せましょう。ナナの助けたいと言う気持ちは本当だと思います。」
「マリア博士・・確かに君が一番彼女に寄り添っていたから、あの子の事はよく知ってるよな。けど・・」
「それもありますが、スプリッドさんも隊長達のことは気にしているのでしょう?、生きてて欲しいって・・
できれば救出に向かわせたいって。」
「・・・・・」
図星をつかれ、スプリッドははにかむ。
「ふっそうか・・・わかったよ。ナナ、下水道に向かって生存者を探してくれ。正し。」
「正し?」
「今いるメンバーと必ず生き残って帰る事。それが条件だ。
メンバーを自分の目標で動かすのだから、他人の命の背負うことになる。それを忘れるんじゃない。」
ナナはぐっとかみしめる。
「スプリッドさん・・わかりました。ありがとうございます。」
ナナはインカム越しで頭を下げた。
「ブレス達を頼む。西メンバーにはこっちで連絡する。」
スプリッドはそう言い、通信を切った。
ナナをクラシアは目を合わせお互いに笑う。
「じゃ、行こうナナ。隊長達を助けよう。」
「うん。」
ふたりが歩き出し、クラシアが前方に向かう。二人が曲がり角で警戒し止まったその時、
頭上から、擬態型が姿を現した。
「私だってやれる。」
擬態をとき、四つん這いで天井からクラシアに飛びがかる。
クラシアは事前に察知したので、飛びがかる体に連射。
擬態型は打ち尽くされ、床に落ちる。ナナは触手に変形し伸ばす。
一瞬後ろを見たクラシアはさっと横に交わし、触手は擬態型を貫き、蒸発した。
二人のコンビネーションでイロディアンを仕留めることに成功。
「やったね。」
ナナがクラシアにそう言った時、クラシアはナナの後ろを見ていた。
「ナナ、どいて!」
そこには真っ赤な口を開け、迫る擬態型がいた。
ナナを横にどかせ、クラシアは引き金を押し、氷の銃剣で擬態型の体に突き刺す。
氷の刃が銃から引き離され、クラシアは離れる。氷の刃から浸食するように擬態型の体を白く染まらせ、凍結した。
間髪いれずナナは触手でとどめをさし、擬態型は粉々に砕かれた。
「ナナ、周りも警戒したほうがいいよ。今みたいに後ろにもいるから。」
「う、うんわかった。」
「まぁ、私が言えたことじゃないんだけどね。」
自身なさげに呟くクラシア。
クラシアは森でナナの救出に向かったとき、自分の不注意で先輩を死なせてしまった。
まだそのことを深く根に持っていた。
二人は擬態型を突破し、引き続き向かおうとしたその時、
そう言ったとき、通路の奥から、かんっ、かんと缶を蹴ったような軽い金属音がなった。
「何!?」
はもる二人。キレよく振り向く。
即座に武器を構え、奥の曲がり角に慎重に距離を詰める。
ナナは左腕全体を大きなかぎ爪状態の触手で、クラシアは氷結弾を奥の通路に向ける。
曲がり角に差し掛かる直前で壁による。クラシアは下を見ると、
自分の人影とは別に向かい側に人影があることに気がつく。
誰かが鼻の先にいる。というよりふっ・・ふっ・・と人の息遣いが聞こえる。
確実に斜め向こうに誰かいると確信したクラシア。
強く息を吐き、バッ! と思い切って曲がり角の向こうに向けた。
「うわ!! クぅちゃん?」
「えっショウっ!?」
そこにはオレンジ黒髪のモヒカンで、悪そうな眼つきの男、ショウ・カラキッサが腕を上げていた。
あげた反動で氷結弾を落とし、装置につながっているケーブルでプラプラと揺れる。
「ああ~よかったぁ、二人でぇ。」
ショウは一気にへなへなと抜けた声を出し、膝をついた。クラシアも膝をつきショウに言う。
「よかった。あなたは無事なのね・・・そっちで何があったの?」
ショウとクラシアは同期のメンバーで、仲は悪くなく、気さくに話すクラシア。
「ああ・・もうすごい大変だったんだよ。クうちゃんとは別ルートで行ったじゃん?
シャッターが閉じられたから。」
「ええ・・」
「それで北エリアから入ったんだ。
そしたらワニ型が海から伝って駐車場から現れた、もう辺り一面がやばかったよ。水一面でさ。
ブレス隊長と先輩が囮にならなかったら死んでたよあれは多分・・あっはっは」
ショウは笑っていたが、疲弊と恐怖が垣間見えるような、無理矢理笑っている感じだ。
「とにかく一人じゃ危ない、一緒に行動しましょう。」
「はは・・そうしてくれるとありがたいよ。ありがとう。」
ナナはそう提案し、ショウは立ち上がる。
「ナナだっけ?、イロディアンを倒せる変な子。」
「ええ。」
「じゃ、ナナっちでいいか?よろしくね。」
ショウはにこやかにナナに握手をしようと手を伸ばす。
ナナは彼の距離感に少したじろいだが、手を伸ばし握手をした。
「よろしくお願いします。」
「いいよ。俺も新人だからそんなにかしこまんなくて。まだ弱いし・・」
ショウは一瞬冷めた表情をし、ナナの手を話す。
何か思うナナ。会話もそこそこに三人は西エリアの通路を進む。
慎重に辺りを見渡し、ショウが一人になった経緯を二人は聞く。。
「ワニ型から何とか巻くことができて、隊長達と合流して、
その道中、ロボットが置かれている部屋があったんだ。
そこで先輩達と待機してて・・、俺はトイレに行っていたんだ。そしたら・・」
ショウはその時の光景を思い出し、言い淀んみ、足を止める。
「周辺の電気がついて、発電所は開拓できたんだとその時思ったよ。トイレの中でガッツポーズをとったぐらい。
でも喜んだ束の間、外からなんかガガガガってなんかマシンガンを放った音がしたんだ。ガラスが割れる音も、
爆発したような音もなって。明らかに氷結弾のマシンガンじゃない。
もっと重々しくて・・やばかった。」
ショウは氷結弾のグリップを強く握った。
「そこからロボットが動いたわけね。」
ショウは早口気味に答えた。
「ああ・・、俺はトイレの中で震えてた。何が起きたかわからない。
いやわかってはいたんだ・・あのロボットが動き始めたっていうのは。脳みそでは理解してた。
・・ドレイク先輩がインカムで知らせてくれたんだ。
銃撃音でよく聞こえなかったけど、ロボットが動いて俺達を攻撃したって・・。
とにかくここから出ないとと思ってトイレの外に出たら、運が悪くてよ。
そのロボットが俺の目の前にいたんだ。巨大なキャタピラ、二丁のガトリングガン、パトカーのサイレンみたいな頭。
終わったと思った。」
ショウは歩みを止め、二人も止まる。
「そしたら、ドレイク先輩が横から駆けつけて連れてくれて、身を挺して囮になってくれた。
氷結弾で切りかかって、ロボットはガトリングガンで応戦してて、ガトリングガンの火薬まみれの中、俺は逃げ出したんだ。
ドレイク先輩はもう・・・」
「そんな・・」
「なんて酷い・・」
ナナとクラシアはあまりのむごさに絶句した。
「それで、隊長達がやったのか、周辺の氷漬けのイロディアンをかいくぐってここまでこれたんだ。」
「じゃあ、そこにいたメンバーはもう・・」
「ああ・・くぅちゃんも見たのか? あのロボットを?」
「いえ、私はナナと一緒に頑丈な動力室にいたの。
その時に爆発音がなって・・ロボットは自爆したって監視員から言われて。
爆発した現場に行ったらがれきまみれだった。
だから今いるメンバー全員と合流して、そこに埋もれている隊長達を助けようって。微かな希望を信じて・・」
「それは・・誰の指示なんだ?」
クラシアはナナを見る。
「・・私。」
「え?」
ボソッと言うナナにショウはあぜんとする。
「私が隊長達が救うって決めたの。」
ショウは小刻みに首を震わす。
「そんな、生きている保証もないのに、もう部隊も半分くらい削れている状態でボロボロなのに。
そんな身勝手な発想で行動していいのか? わざわざ危険な選択を選んで。正気とは思えない・・・」
ショウは頭を抱え、ため息の連続。もう帰りたいと言わんばかりの表情だった。
「もう監視員の人達も納得してくれた。西側のエリアの人達にも
連絡がいったはずです。私の力で助けます。」
「そんなこといったって・・」
乗り気ではないショウにクラシアが入る。
「ショウ。確かに私もナナの案は正直、納得できない所があるよ。できれば私もこんなせまっくるしい
所から脱出したいよ。でも・・ナナは反発してもいいくらいの力があるの。イロディアンを倒す能力。あなたも見たでしょう。
あんなにイロディアンをコテンパンに出来るの、ナナくらいしかいない。」
「クラシア・・」
ナナはクラシアがフォローしてくれたことが嬉しく微笑んだ。
「・・・わかった。くぅちゃんがそこまで言うなら。くぅちゃんは洞察力が優れているから信じてもいいかな。
なんて言うか力の使い方が上手いというか、訓練生の頃からそう思っていたし。俺は・・自分に自身がないからさ。」
「そうなの私? そんなの初めて聞いた。」
「ああ、だってあの時クぅちゃんは・・」
「待って二人とも、静かに・・」
ナナが突発的に二人を制す。二人が黙りこむと、微かに聞こえる回転音。
奥からキャタピラを回す音がした。その音は静か過ぎて耳をすまさないと聞こえないほどだ。
三人は隠れると、案の定ショウの言ったロボットが現れた。
そのロボットは半壊しており、ボディにはギザギザに切られた跡があり、
右の半身が切断で、配線むき出しで体が垂れている。随所に骨組みが露出していて、バチバチと火花を散らしていた。
「あれはドレイク先輩を殺した奴だ・・俺をかばって氷結弾で身を挺して・・・」
ショウは憎しみで目をかっぴらき、歯を食いしばる。
「・・迂回しましょう。あれは自爆もあり得る。」
「そうか自爆か・・わかった。」
ナナとショウは頷き、三人は迂回した。
そして、何とか西のエリアに辿り着き、西のメンバーのいる駐車場の分厚いドアにたどり着く。
二人は周囲を警戒し、ナナがドアノブをノックすると、隊員がドアを開け、
「早く入れ。」
と言い、三人は駐車場の中に入る。
駐車場の中には負傷者含め、6人のメンバーがいた。
「話はスプリッドさんから聞いた。色々聞きたいことはあるんだが、隊長達を助けるんだろう。新人」
ナナは屈強な先輩の隊員にそう言われ。
「はい、そうです。まだ死んでいる保証はないですし、それに精鋭の人達は一人でも多くいた方がいいかと。」
「俺達も話してはいたんだ。このまま撤退するかどうかってな。負傷者があそこで寝ているわけだしな。」
右腕を無くしたジョンは、貧血で死んだように眠っていた。顔色も悪い。
ナナは視線を先輩からジョンに向け心配そうに眺める。先輩はその視線の動きに気付き、
「まぁ、今の所は死んではいない。死ぬほど痛いだろうが。」
「・・そうですか。」
ナナは隊員に視線を戻す。先輩は頭をかき、
「ま、当然このままロボットとか色々手放していこうかという意見もあったが。なんて言うか・・・
目をそれしてはいけないなと思ってさ。俺達も隊長達の救出に協力するよ。あとあのロボットもほっておけない。」
「あ、ありがとうございます。」
「いいさ、なら行こう。ここから下水道に行くには・・」
そう言い隊員は腕のモニターに立体地図を表示し、三人は見る。
隊員は立体地図を動かしながら三人に行き方を説明する。
「えっと・・こっから右に進んで、そんな遠くない。
右奥に進んだ後、ここから地下の階段に入ったら。下水道に行けるはずだ。」
「わかりました。」
「君たちと俺含めこの三人で行く。いいな?二人は残れ、終わったら撤退を知らせる。」
残る二人と三人は納得し6人は行動に向かった。体を伏せ、ドアを慎重に誰もいないのを確認し、右奥へと進む。
縦に並ぶ点滅する蛍光灯、冷ややかな銀色のステンレスが並ぶ通路。
見ているだけで不穏な雰囲気を感じる。背中をかがめ、忍び足で素早く壁の端まで歩く。
ナナはまだハンターズの連携に慣れてないのか、ワンテンポ遅くかがみで後ろについていく。
「スプリッドさん、ロボットは今どこにいます?」
先輩の隊員はスプリッドにインカムをかける。
現場の隊員と監視で連携を測る。
「今君たちのいる所から、前方左にいる。もう一体は東エリアでぶっ壊れ寸前でうろついている。」
「確かに。左から小さく回転音が聞こえます。」
「俺達は発電所の土地勘がない。マップの情報があるとはいえ、さっき鉢合わせしてやりずらい事がわかった。
だから監視からの選択はあてにするな。そっちの選択に委ねる。」
「わかりました。」
「あ、そっちの方向に向かっている。右方向に隠れろ。」
6人は移動し、右の向かい側に隠れた。
隠れた方向からロボットがこっちをみる。サイレンのような顔から、赤く細長いレーダーを照らす。
通路をなめまわすように細長いレーダーを照射し、標的を探す。
「出るなよ・・」
それを隠れて固唾を飲んで見る6人。
標的がいない事がわかり、レーダーはメジャーを戻すかのように引っ込み、ロボットは奥へと通りすぎていった。
息を止めていた6人は安堵し周りこむ。先へと進み、ついに下水道に繋がる扉が見えてきた。
「あれだ。」
先輩の隊員が扉を指す。
下水道の扉にはバルブが付いており、そこから鉄線が蜘蛛の巣のように張り巡らされた頑丈な扉。
「あそこに行って隊長達を・・」
ナナはそう呟き覚悟を決める。5人もこくりと頷き、一同は進む。
先輩が先頭で、前傾姿勢でイロディアンにの攻撃を警戒する。
先輩が後ろの隊員達に止まれとサインし、右の曲がり角を見た。
そこ通路は破片や、機械の残骸、ゴミ、缶などが色んな物が落ちており、とっ散らかっていた
目の前には花壇が割れ、土ごと豪快に飛び散った観葉植物があった。先輩は何か察したようにその観葉植物を眺める。
土が動いたようなそんな気配を感じたからだ。それをじっと眺めていると、パきっと花壇の破片が踏まれたように割れる。
「ビンゴ。」
先輩は氷結弾の引き金を引く。予想は的中し、擬態型が周囲にカモフラージュをしていた。
何十発の銃弾を受け、黄土色の体が浮かび上がり、血と肉片を飛び散らせ、すさまじくゴロゴロと床に転がる。
ナナは先輩の後ろからスライドするように現れ、左腕を抑え標準を合わせ、立ち上がりかける擬態型に
触手でとどめをさし、擬態型が天高く吹っ飛ぶ。
「あ・・・」
しかしその行為が間違いだとナナが思った時には遅かった。
ナナだけではない、監視室で見ているスプリッドもナナの前にいる先輩も、不安と焦燥が一瞬でよぎる。
吹っ飛ぶ先には、いくつもの缶と二つのテーブルが置かれていた。
そこに死に絶えた擬態型が豪快にぶつかり、缶やテーブルが崩れ、甲高い落下の音が周囲に響きだす。
ロボットはその音の鳴った方向にむかい、キャタピラを加速。一気に迫る。
「ヤバい・・早く入るぞ下水道に!!」
先輩は呆然するナナの腕を引っ張り、前方の下水道に向かった。
先輩がバルブに手をかけた時、スプリッドが連絡。
「ダメだ!! 下水道に行くな間に合わない、右からくる避けろ!!」
スプリッドが声を荒げながら告げた瞬間、右からロボットが通りすぎるように現れる。
「まずい! 後ろ下がれ!!」
刹那、顔の赤いレーダーを一同に照らし、上半身を回しガトリングガンを一同に合わせ、
金具を叩いたような音がなん十発も発射された。
ーーー第21話に続くーーー




