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第19話   〃    使命

第19話 発電所開拓編  使命




ーーー下水道 第三者視点ーーー




蛍光灯の微かな光が照らす下水道。


ロボットが自爆し上部の天井や壁が崩れ、下水道に山のように積み重なったがれき。


下水道は奥まで縦長に広がっていおり、錆びたグレーのアスファルトのトンネルが建っている。


下水道の水はほとんど乾ききっており、地面は粘着してる黒いヘドロが、辺り一面に広がっていた。



そんな中でブレスは、がれきに半身が出た状態で気絶していた。


ブレスだけではない、他の隊員もがれきの中に閉じ込められている。



「・・・・・あ?」


その中ブレスはゆっくりと目を開け、意識を取り戻す。頭には破片があたり、血が垂れていた。


ブレスはその血が目に入り、瞬きを強める。


「ここは・・・」




朦朧とする意識と視界の中、砂と泥がこびりついた顔を払い、頭の血を拭き、自分に何があったか確認する。


「ああ・・自爆に巻き込まれて・・直前に壁に向かって・・・」


ブレスは思い出す。


爆発する直前。装置を使い全力で離れた。ロボットが白く熱い閃光を放つ。


辺りの通路がホワイトアウトするように光が、白く包み込む。


ダメだ、間に合わない。と悟った刹那、前方の壁に目が入る。


その壁はロボットが、ガトリングガンを打ち尽くした跡があった。



「ッ皆!! 入れ!!」


ブレスは土壇場で全力で叫びつつ壁に銃を打ち、さらに弾痕を増やす。


そのまま一か八か装置を全開に噴射し、壁にタックルした。


壁は張りぼてのように脆くなっており、タックルの衝撃で崩れ、ブレスは下の下水道に落下する。


マラシイ、ロバート、エリック、フラッサはブレスのルートの近くにいたので、


ブレスの声と共に駆けつけ、砕けた壁の向こうへと落下した。





「マラシイ・・フラッサ・・皆」


自分の目の先に、がれきに埋もれているマラシイとフラッサが見えた。


その奥にはロバートが、仰向けに大きいがれきに埋もれている。



ブレスは助けようとがれきをどかし、起き上がろうとするも、3メートルほど積み上がっている瓦をどかすのは容易ではなかった。


自分の上半身だけがしゃちほこのように反り返る。埋もれた下半身はびくともしなかった。


こうなったらとブレスは捻り、右手に持っている氷結弾でがれきに向かって連射。


22・・15・・8・・3とモニターに表示されている弾数が消えていく。


足に挟んでいるがれきが木端微塵になった瞬間足を出し、スッと立ち上がった瞬間


「ッーー!!」


ブレスは声にならない声をあげる。


電撃が走ったようなとんでもない痛みがブレスを襲う。地面に膝を突く。息をひいひいと荒げる。


「あぁいてぇ。」




脚を見ると、拳ほどのナイフのように尖った破片が、ブレスの脚に深く突き刺さっていた。


ブレスは腕のポケットから包帯を出す。


破片に手を伸ばし、フッ!と思い切って破片をぶちぬく。


「ーーーーあッ!」


痺れる痛みが何重にも襲ってきた。昇天しそうな


痛みで体をふるわせつつも我慢し、血に染まった破片を投げ、脚に包帯を巻き、ギュッと締め付け止血した。


ひと段落終え、腰を地面に下ろす。


足首を抑えつつ、氷結弾のスコープが目に入る。その下のモニターの弾数が0と表示されていた。


マガジンを交換しようと後ろに手を伸ばすが、マガジンの感触はない。


「弾切れか・・」




自分の腰をわしわしと触りつつ、ブレスは氷結弾を杖替わりにして立ち上がる。


「皆・・」


ブレスは周辺のがれきに目を通し、負傷した右足を引きずりつつ歩いた。


「マラシイ!、フラッサ!しっかりしろ!」


まずは一番近いマラシイとフラッサの上のがれきをどかす。


痛さが走る脚を我慢し、二人の積み重なっているがれきを次々にどかした。


「マラシイ! フラッサ!」


「・・・隊長?」


名前を呼びつけると、一番にマラシイが目覚めた。完全にがれきをどかした時、


「お前・・・」


マラシイの腕に破片が付いていることに気がつく。



「大丈夫か?、動くな。」


そう言ってブレスはマラシイ、に付いている破片をぶち抜いた。


「ーーーッ!!」


痛さをかみ締める。マラシイのジャケットを脱がし、血みどろの腕に包帯を巻ききつく縛った。



「隊長・・僕たちはどうなって。」



フラッサがよたよたと体を起こす。自爆の衝撃で意識がボーとしていた。


ブレスはもたれついたフラッサの体を支える。


「話は後だ。奥の二人を救出するぞ。お前らは休んでろ。」


「・・いえ、僕もやります。このくらいで。ね、少佐。」


フラッサは破片が体にかすった程度で、比較的軽傷だった。


「ああ・・だな。」


「・・すまない。」




二人は負傷した体を起き上がらせ、痛みをこらえつつ、エリックとロバートを助けた。


幸い二人とも軽傷で助かったが、メグとマイケルは暫く探しても見つからなかった。


マイケル、メグは違うルートにいたため間に合わず、爆発に巻き込まれてしまったのだ。



5人は懸命に探し、周辺のがれきをどかしまくり、名前も呼んだが、二人は見つからなかった。


察した五人は二人の捜索を断念し、下水道の端のコンクリートに集まり、これからどうするか話し合う事にした。


下水道の漂う異臭をかみしめ、周辺に垂れる汚水の雫の音を聞きながら。



「まず、俺達はあのロボットの自爆に巻き込まれて、下水道に落ちた。


俺が咄嗟に壁に突っ込めと言ってお前らも落ちて、何とか助かった。


でもメグとマイケルは間に合わなかったんだな・・・。俺の指示がもっと早ければ。」



「隊長のせいじゃないですよ。あいつの情報があまりにも不足していましたから。」



「ロバート、なんであのロボットは俺達に攻撃するんだ?」


「え?、それはそういう風にプログラムされているからだと・・」


「だとしてもおかしいだろ。誰が何の為にあんなサイコパス兵器を作ったんだ。」


「それは・・・わからないです。」


「はぁ・・」


ブレスは肩を落とし落胆し、地面に尻をついた。



「・・あいつは止められそうか?」


「あいつがこの発電所の電波で動いているのは確かです。


ですがあのロボットにハッキングして近づいて・・近づくのはそう容易ではありません。」



「だよな、ガトリングガンに自爆機能付きだもんな。近づいた奴以前に爆発でこの発電所がやられたら


今までの努力と犠牲が水の泡だ。」


「くそッ!、せっかく発電所を開拓できたのに!」



ロバートは頭をかかえつつ乱暴に立ちあがる。


八つ当たりに落ちている破片を蹴った。かん、かんと欠片が下水道の向こうへとバウンスする。


「あんま大声だすな。レーダーに表示されてないとはいえ、ここにイロディアンがいないとは限らない。」


「すみません・・」


そういいつつ周辺を見渡していたブレス。上から水発射装置で行けるかと見上げた。


「・・・随分遠くから落ちたんだな。」



天井は、深い闇に覆われた巨大な穴が広がっていた。


周辺の壁は吹っ飛んでいて、装置でのし上がるのも厳しそうだ。


ブレスは自分で納得し、耳のインカムのスイッチを押した。だがノイズしかかからない。


「・・俺のインカムは壊れちまった。誰か使える奴はいないか?」


ブレスはマラシイを見る。マラシイの上半身は


グレーの薄いインナーだけの状態で、部隊のジャケットを腰に巻いている。


右腕に巻いてある包帯には血が滲んでいた。


「私のは吹っ飛びました。」


「ごめんなさい。僕のも・・・」


フラッサに続き、ロバートとエリックも壊れていると首を振るう。



「・・とにかく、この臭い所から出るぞ。ここにもロボットとイロディアンが攻めてこないとは限らない。


ここに蔓延るロボットを倒す。」



「そんな・・まだ戦うのですか。」


ブレスの意見にマラシイが不満そうに口を出す。



「隊長、私は撤退した方がいいと思います。私達も負傷していますしこれ以上部隊を危険にさらすのは・・」



「悪いがそれはできん。あのロボットがこの発電所を壊さないとは限らない。


あんな自爆する得体の知れないものをほっとくわけにいかない。


イロディアンも外の電磁ネットで多少は抑えているとはいえ、まだこの中にうじゃうじゃいる。ワニ野郎もいるだろうしな。


ああ・・もしかしたらナナ達は撤退しているかもな。ロボットの爆発を危惧して・・


いや、むしろそっちのほうがいい。俺達を助けるなんてバカな考えに至らなきゃいいが。」




「そしたら私達も引き上げたほうがいいのでは?これ以上犠牲をださないように。」


「いや、もしナナ達が撤退していたら、俺達五人で攻めてものロボットを倒す。」


「そんな・・・」


マラシイは不満気だった。


彼女は仲間の犠牲を見てきたので、肝心な時に考えが保守的な方向に進む癖があった。


それを覆すようにブレスが言う。


「マラシイ。わかっているのか? 今背を向けたらまた振り出しに戻るぞ。またイロディアンと工業地帯で戦って、


またワニ野郎も出るかもしれない。ロボットもまた何処かで起動するかもしれない。


そうなれば、また新たに犠牲者がでる。もうそんな悲しい事はごめんだ。」



淡々と語るブレスに一同は聞き入り、固唾を飲み込む。



「今俺達のいる所は10年間ほとんどたどり着けなかった所を、微かな犠牲でたどり着いているんだ。


こんな所で終わらせない。確実に俺達はこの発電所の開拓を成功させるんだ。人類の存続の為に。


そうしなきゃ国民にも、ここで死んだ奴らにも、病院にいる負傷兵たちに申し訳ない。」


そう言い、フッと鼻で笑うブレス。



「隊長・・・」


「だからあのロボットは何としてでも食い止める。出来ればイロディアンも。特にワニは危険だ。


だけどロボットを仕留めるが最優先だ。まだ、開拓は終わってない。俺達を犠牲にしてまでもこの発電所は守る。」


ブレスは右足を抑えつつ立ち上がり、


「お前たちの命をここで使わせてくれ。」


ブレスの鋭く真剣な眼差し、歴戦をくぐり抜けた黒人の眼つき。


一同はその眼差しを見て覚悟を決め、頷いた。


「わかりました。やりましょう私達五人で。」


マラシイは撤退の考えを捨て、戦う事を決めた。




「ありがとう。お前ら・・ごめん・・」


最初は嬉しい反応だったが、自分達の犠牲の選択を決めた一同。とても喜べる状態ではなかった。


「あいつらが撤退してたらやりやすい。これ以上犠牲を出さずに済むからな。行くぞ。」


4人は負傷した部分を抑え、重たい腰を立ち上がせ、下水道のトンネルの向こうへと歩いた。


この後、絶望の脅威が襲ってくることを一同は知らずに。




蒸し暑く、暗い下水道のトンネルを、氷結弾のスコープに搭載されているライトを照らし進む。


サビとヘドロで塗り固められた地面を踏み、出口を探した。


濁った足元に張った水、乾きかけた真っ暗なヘドロを踏むたびに、ねちょねちょと気持ち悪い音がなった。




「隊長・・脚大丈夫ですか?」


ブレスは氷結弾を杖替わりに、右足をかくかくと震わせ、ぎこちなく進んでいた。


それを見て心配するマラシイ。


「ああ、大丈夫だ。こんなの食われた奴らに比べたらどうってこと・・・」


「・・ですね。」


「それとナナだが、もし俺達を助けるなんて考えていたらビンタでも交わすつもりだ。


あいつは弱い人を助けたいという思いで行動している。それじゃ今の俺達は弱いってことだからな。」


「とんだ皮肉ですね。」


「ま、実際今の俺達はボロボロだが、まだやれるつもりだ。


それにナナが死んだら地上の開拓は不可能だ。それは勘弁してほしいぜ。」


「ええ、それにナナが何者かもわからないままになりますしね。」


マラシイは腕を抑えつつ氷結弾を脇に挟み、照らしていくと、先が二つに分岐している。



「あれは・・」


その左方向の奥の頭上に、柵に囲まれた橋があるのが見えた。


その橋の左右には道が続いている。




「あそこが出口か?」


その距離は200mほど、一同はほっと安堵し、向かおうとしたその時、


一同の腕のレーダーが赤く反応した。マラシイは液晶の割れたレーダーを見る、


「イロディアンだ!! 距離80m!」


「で、でも少佐何も来てませんよ。」


フラッサの言う通り、正面は下水道のトンネルしかなかった。


しかし、レーダーに表示されている赤いポイントは、確実な真っ直ぐこちらに向かって来る。


「隊長、これって・・」


ブレスとエリックはすぐに察する。


「ああ・・最悪だ・・」


ポイント50mに差し掛かった瞬間、目の前の地面に亀裂が入り、


爆発するように何かが飛び出す。


巨大な灰色の四つん這いの体が、地面から轟音と共に現れた。



「ワニ野郎・・」



飛び出した衝撃で、破片と水しぶきが飛び散り、下水の黒い雨を5人は浴びる。


着地したワニ型は横についてるワニの口を開き、


バイオリンの低音のような叫びを上げた。


ワニ型の口の中の張り付いた人面がむき出しになり、人面の口から激しい吐息がでた。



「隊長、こいつが・・」


マラシイは目の前の巨大なモンスターに立ち尽くす。


「ああ・・しかもさっきあった時よりでかい。5m・・もっとか・・」



その体の大きさは、下水道のトンネルに埋まりかけるほど。


ワニ型はトンネルの壁に両手を食い込ませ、火花を爪痕を残す。


こいつを突破しないと地上にはたどり着けない。


ブレスは負傷した足を踏ん張らせ、氷結弾を起動する。


パきパきと乾いた音と共に、銃口の下のパーツから氷の刃が現れる。


1メートルの氷の刃の銃剣を生成した。



「総員ッ!! 戦闘用意だ!!」


一同も怪我の痛みをかみしめつつ氷結弾を起動した。


ワニ型はハンターズに吠え、獰猛に走りこむ。力任せに進み、水しぶきが豪快に飛び散った。



「ふぅ・・目標ワニ型ァッ!! 必ず生き残り、開拓するぞ!!」


「了解!!」


五人は耐空し、スピードを上げ、ワニ型に向かい銃剣を構える。



「うおおぉぉおおおおおおお!!」



5人は気力を奮い立たせ叫び、ワニ型の頭上に氷結弾を振りかざす。


絶望的な戦いが、暗い下水道の中で始まった。




ーーーー第20話に続くーーー

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