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第31話 姉は思い出す

 私を子供のように思っているアルテヴァさんは、その私が本当に子供になるかもしれない事態に大興奮している。

 こ、この反応はちょっと予想外だったかも……大丈夫かな。


「ま、まず説明させてください! あの、私って前世の?外の?記憶があるんですけど、昔はもっと鮮明な記憶を持っていた気がするんです。けど、今はほとんど覚えていません。それってもしかすると、成長とループを重ねたことで、どんどん記憶が古くなったからじゃないかと思いまして」


 この世界は何度も繰り返されており、実際の年月とはまた異なる時間の経過がなされているはず。

 そのせいで私の記憶がどんどん霞んでしまったのではないかと思ったのだけど、この推理はかなり微妙かもしれない。


 何故なら、記憶はループ毎にリセットされているのだから、古いも新しいもないはずだからだ。

 では、ループでリセットが掛かりすぎて、どんどん記憶に問題が生まれたという説はどうだろう。

 こちらはそれなりにあり得そうな不具合に思えるけれど……結局は憶測にすぎないか。


「理屈はどうでもいいから、はやく子供になって! こーどーも! こーどーも!」


 手を叩きながら子供コールを繰り返すアルテヴァさん。

 もう完全に暴走状態になってしまわれた……。

 ただそれを言うアルテヴァさんのその姿もまた子供なわけで、なんというか、シュールすぎる!


「ベルンちゃんの姿を見てると記憶も消えそうでちょっと怖いんですよね……」

「いえ、それは子供の状態の時だけだと思うわ。そうじゃないと、大人になった時、ベルンカステットは目的を果たせなくなるでしょう? つまり、若返り液は時間巻き戻し液で、成長促進液は時間先送り液なのだと思うのよ! だから、ねっ? 子供になりましょう? ならないなら申し訳ないのだけど、突き落とすことになりかねないわ……ママ、そんなことしたくない!」


 じゃあしないでくださいとは言えないほどの熱量がアルテヴァさんから発せられている。

 もはや彼女の頭の中は私を子供にするということ一色に染まってしまっているようだった。


 迂闊に口に出したのは悪手すぎた!

 すっかり忘れていたけど、この人は、いやこの神は、超超超危険な神なのだから、十分に注意すべきだったのに……。

 まあ、やってしまったものは仕方ない。

 これはもう避けようがないものとして、こ、怖いけどやるしかないだろう。

 えーい! どうせ手掛かりを得るためには必要な作業なんだ! やってやるー!


「分かりました入ります……! 何かあったらアルテヴァさん、お願いしますね!」

「強引にでも時を戻して何とかするから安心してね!l

「……えっ、まだ戻せるの!?」


 もう使用不可だと思われていた時間巻き戻しが突然話題に上がってきて、私は虚をつかれてなんだか素で反応してしまう。

 それに対してアルテヴァさんの反応は微妙なものだった。


「ううーん、ギリギリね……数時間程度なら戻せるかもくらい」


 なるほど、時間を巻き戻す力は回数制限というより容量制限だったらしい。

 なら、一度の失敗はなんとか取り直せるということ?

 だったらほんのちょっとだけ安心して若返り液に入れるかも……入れるかなぁ!?

 結局不安!


「え、えーい!」


 若返り薬の入ったガラスの筒。

 そこに空いた穴の中をくぐり抜けて、覚悟を決めて私は液体に体を浸す。

 冷たい感触が全身を包み込むと共に、自分でもわかるほどに、体がどんどん縮んでいった。


 瞬間、脳内をよぎる謎の場面。

 殺風景な空間で、私は誰かと話していた。



 ★



「こんにちわ×××様、キャラクリエイトお疲れ様でした」

「すいません時間かかってしまって」

 

 どこか空の上のような、不思議な場所で私は天使と会話していた。

 羽の生えた彼女はニコニコと笑顔を私に見せている。

 けれどその笑みはどこか無機質で、機械的な印象がしてならない。


 私は彼女に謝っているけれど、おそらくその謝罪に意味はなく、天使は何も気にせず説明を始めた。


「これからの流れを説明させて頂きます。×××様はこれよりエデンへと転送されます。その際、キャラクリエイトした容姿で始まりますが、立場はランダムとなりますのでお気をつけください。また、ゲーム内の時間は細かい短縮が入ることで、実際の時間とのズレが発生します。例としては修行パートではゲーム内で2時間ほどが経過しますが、実際に修行をするわけではなく、その間にカットが入ることで実際には数秒程度の時間経過になるわけです。エデンに到着しますとあとは×××様の自由です。規約に反しない限り運営が関わることはありません。楽しくお過ごしください。また、プレイヤー様からは誰がプレイヤー様であるか分かりませんので、NPCかと思ったらプレイヤー様であるということも起こり得ます。よって、個人情報などについては十分に注意を払って頂けますようお願い致します。ゲーム内での人間関係のトラブルに関しましては、当社は責任を負いかねます。その他、プレイヤー様同士の時間のすり合わせなどにつきましては――」


 

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