表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
29/39

第29話 姉は調査する

 瞬間移動を覚えた私がまず向かったのは、最初も最初の頃に、妹と共に訪れた『狼の口』だった。

 それは魔物が棲む洞窟のことで、その入り口も形がまさに狼が大きく口を開けたものと酷似しているからそう呼ばれているのだけど……何度見てもちょっと滑稽ではある。

 狼が住んでいるところが狼の形って、なんか変!

 ゲームだから仕方ないのだけど。


 入り口の両側には侵入者を防ぐために兵士が立っていて、厳しい目つきで固まっていた。

 この兵士を撒くためにすったもんだあったのも、今ではいい思い出だ。

 ……やっぱり悪い思い出かも。


「ここに経験値いっぱい貰えるアイテムがあるの?」

「はい、倒せるかは分かりませんが」


 私の顔を覗き込みながら、アルテヴァさんが不思議そうな顔する。

 そういえばアルテヴァさんが魔界から出てくるのはかなり珍しいことだった。

 珍しいというか、初めてかもしれない。


 魔界神であるから魔界から出られないという事情がアルテヴァさんにはあったのだけど、小さくなったことでその縛りが緩くなったのか、それとも時間が静止しているために、そもそも世界の縛りそのものが機能していないのかは分からないけれど、あっさりと外に出ることに成功している。

 アルテヴァさんは魔界に置いていくとプリプリ怒るので、これについてはラッキーだったと思う。


「じゃあ、ボスのところまでワープ!」


 私の手をぎゅっと握って、アルテヴァさんは元気よく手を振り上げる。

 ただしワープする気配はなく、そこは私にお任せだった。

 瞬間移動は既知の場所に限るため、私が魔法を使う必要性があって、アルテヴァさんはそれにくっつくことで一緒に移動する形だ。


 だから、狼の口の入り口をわざわざ見る必要もなかったのだけど……私の意識の問題で、何故か二段階右折のように中継地点を必要としてしまう。

 瞬間移動を覚えたとはいえ、まだまだ未熟な私だった。


「では、フェンリューのところまで」


 洞窟の中へとパッと移動すると、周囲は洞窟特有の暗がりに包まれる。

 そして、目の前には大きな狼がやすらかに眠っていた。

 瞬間移動大成功だ。


 前回はこの大狼フェンリューの状態異常耐性の弱さを利用して、ずっと睡眠状態にするというエゲツない戦法で倒したのだけど、今回はまあある程度鍛えたので殴れば倒せるはず……そもそもアルテヴァさんがいるしね。

 なので問題はやはり静止したこの世界で魔物を倒せるのかどうか。


「途中ですれ違った魔物を倒せば気軽に確認できたとママは思うわ」


 アルテヴァさんがど正論を言うので、私は誤魔化すように視線を逸らす。


「い、いや、なんか罪悪感があって……」

「優しい娘! 好き!」

「これは優しさではなく、優柔不断というんですよ」


 それに瞬間移動という手段を手に入れた現在では、その辺の魔物を倒すのも目の前の狼を倒すのもあまり違いはない。

 なのでいっぺんにやった方が早いだろうと思ったと言うのもある。

 それに、色んな場所に行くのも妹に指示されていたことの1つだったりもする。

 何か異変が起きている可能性があるからだとか。


「そこそこ強い魔物みたいだから、ママがやってあげるわ! えーい! ママビーム!」


 死ぬほど適当な技名から放たれたそのビームの威力は絶大で、大狼に命中した瞬間、大爆発を起こした。

 反響する轟音、揺れる地面。

 洞窟が崩れやしないかと心配になりつつ眺めていると、やがて土埃は消えて行き残ったのは……無傷で寝たままの姿勢を取るフェンリューの姿だった。


「やっぱり倒せないようですね」

「これって時が動き出した瞬間に吹っ飛んだりしないかしら?」

「……ちょっとありそうかも」


 どうやら世界が静止したままでは魔物を倒すことは出来ず、また、アイテムを落とすこともないらしい。

 ゲーム的に考えても、動作が停止しているのだから、確かに、アイテムドロップなんてするわけがなかったか。


 このあとフェンリューさんがこの洞窟の壁に埋まるように吹っ飛ぶ可能性だけを生み出して実験は終了した。

 大失敗だけど、失敗したという事実を得たのが大きいのだと私は思う。

 きっと妹もそんな感じでトライアンドエラーを重ねていたはずなのだから。


「次はベルンちゃんのアジトに行ってみます」

「あー、あの子供ね?」

「そこは孫ではないんですね」

「私の娘がアンジェラちゃんというだけで、娘の娘と関わりがあるわけではないの。そもそも娘の娘でもないし!」


 そこは現実的にものを見るアルテヴァさんだった。

 要するに結局私以外のものに興味はさほどないということらしい。

 まあ、うん、事実として娘じゃないものね……。


「ではアジトに移動します」


 パッと視界が切り替わり、ガラスの筒が置かれたベルンカステットのアジトに私は瞬間移動する。

 ただし、その筒は砕かれた状態だった。

 ベルンちゃんが出てくるために、破壊してしまったのかもしれない。


 それにしても、この魔法……本当に便利!

 移動時間の短縮だけでなく、面倒な入り口の暗号なんかもスルーすることができるのだから。

 それにこの魔法、私の考えではもっと変な使い方がある気もする。

 妹がやるような、裏技的活用方法が……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ