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第22話 妹は企む

「あの、すいません妹が話したいそうです」

「えっ!? 私とですか!?」


 お姉さんは妹からの申し出を素直に驚いていた。

 まあ、さもありなんというか、普通キャラと運営とでは話なんてするわけないものね。


「はい……というか、まずこちらのスタンスとか、これまでの事情を話したいのですが」

「あっ、それは私も聞きたかったところです!」


 10ループしてこの世界のキャラ的視点とメタ的視点の2つを持つ妹と、運営ではあるがループによって記憶がリセットされているというお姉さんの認識にはさまざまなズレがある。

 まずはそれを正さなければ話も何もないだろう。


 私はここ二ヶ月あまりの話をお姉さんに話す。

 ……えっ、二ヶ月!?

 もう3年くらいやってる気がしたんだけど、まだそれくらいだったの!?


「めちゃくちゃな二ヶ月を過ごしてますね……」

「はい、それは、はい」

「まあでも、RTAと一緒で短い期間に見えても、それは長い長い努力があってこそだとは思いますが」


 それはお姉さんのいう通りで、私にとっては二ヶ月だけど、妹にとってはループを繰り返し続けた結果の最短なのだ。

 きっとそこには長い苦労があったはずで、だからこそ、その執着の元である私への愛は強く重い……。


「運営さんだか知りませんがね! うちのお姉様をそちらの世界にくれてやるつもりは毛頭ありませんのでそのつもりで!!!」

「と、言っています」

「あらぁ……まさかそんな愛されているとは!」

「ですが、魔界神が世界を滅ぼしかねない事情もあるので、一度は協力してあげますよ!!!!」

「と、言っています」

「なるほど、双方の最終目的は違えど、その過程で邪魔になるものは排除しようという話ですね?」


 この世界が滅べば当然私も消えるわけで、妹としてはそれは看過できない。

 そしてお姉さんも運営なので、当然、そんな事態は許せない……両者の意思は魔界神打倒という旗印で一致してはいる。


 最後に私がこの世界に残るか離れるかの違いはあるけれど、それは魔界神を倒してからでないと、取らぬ狸の皮算用で今の段階で話し合っても無意味だ。

 そう、世界の滅びの前では、全てが手を取り合わなければならない。

 それは運営とキャラでさえもそうなのである。

 

「了解しました! 魔界神への対応に協力させてもらいます!」

「だってさ」

「チョロい人で助かりましたね……では、私の考えた魔界神退治の方法を説明します!」


 聞き分けの良いお姉さんをよそに、妹はつい先程思いついたばかりであろう作戦を話し始める。

 果たしてあの魔界神相手に、どんな手段が取れるというのか。


「まず、真正面から倒すのは不可能だと思います」

「それはそうよね」


 とんでもない巨体ってだけでもう勝機がないのに、時を巻き戻すことすら可能な文字通り神である。

 運営にすら適用されるその力は、現段階では運営に勝っているとすら言えるほどだ。


「しかーし! 妹は魔界神を倒した経験もあります! それは封印されしツボを破壊するというものでした」

「魔王を倒す前に封印元を壊せば、召喚されないって話よね?」

「はい! ただあれはもしかすると倒せてはいなかったのかもしれません。表に出てこれなくなっただけで、時は戻せてたわけですから」

「ああ、確かに」


 ツボを割ることで、魔界神を封印されたままに殺害することが可能ならば、その時にループも停止していたはずだ。

 しかし、事実として今もループは続いているし、魔界神は生きている。

 つまりツボの破壊は魔界神を倒しているのではなく、その力を大きく削いでいるに過ぎない……?

 

「あるいは不完全な状態で生き延びていたのかも……言ってしまえば魔界神は多くの力を持った状態で復活したいってだけで、力が全然なくていいなら、多分、魔王の死なんてなくても復活はできるはずなんです」

「えっと、つまり、ベルンちゃんみたいに子供みたいな身体で復活はしていた可能性があるの?」

「ママー、プリンー」

「ママはプリンじゃありません」


 そしてママでもありません!

 私の影の中からにょきっと頭を生やすベルンちゃんはご存知の通り元々悪の魔術師であり、一度は世界を闇に沈めた……みたいな設定があるすごい魔術師だ。


 その後、何らかの原因で死亡、もしくは弱体化したが、学院の地下で培養液みたいなものに浸かって復活の日を待っていた。

 考えてみると、魔界神とベルンちゃんはどこか似ている。


「子供だとかものすごくちっさくなって復活してたのを妹が見逃した可能性は高いです……ベルンちゃんと少し似ているのは、ベルンちゃん側が似せたのだと思います。恐らく、魔界神の信奉者だったのではないでしょうか」

「なるほど、そういう信仰なのかもね」

「そんなわけで、魔界神を倒すなら、やはり封印状態で、ツボで、倒すしかないと思います!」

「復活してないならそれもアリだったと思うけれど……」


 復活前ならば、まだ色々手段はあったはずだ。

 けれど、今はもう復活してしまっている。

 それは魔界神にも協力を取り付けるために必要なことだったのだけど、今は大きな足枷となってしまっていた。


「何を言っているんですかお姉様。だったら戻せばいいだけですよ」

「も、戻すって、まさか」

「そう! あと1回はギリギリループ可能だというのが魔界神の意見です! ならば、頼んで巻き戻して貰えば、そのまま自分で自分を封印されていた頃に戻すはず!l

「お、驚きで声も出ないわ……」

 

 妹の考えはいつも通りぶっ飛んでいた。

 まさか魔界神自身に魔界神を封印させようとしていたとは!

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