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第19話 妹はエラーする

 キュキュさんの手によって無人となった鬼ヶ島。

 岩場ばかりで角張った地面に苦戦しながらも、島の奥へと進んでいくと、光り輝く宝物庫が見えてくる。

 そう、鬼ヶ島と言えば鬼と宝物。

 この鬼ヶ島も例外ではないらしい。

 ……今は鬼、いなくなっちゃったけどね。


 宝物庫には小判や宝石、飾り付けられた小槌や金の屏風など如何にも高そうな物たちに囲まれて、1つの刀がぽつんと孤立した場所に置かれていた。

 謎のお札の数々が貼り付けられたその刀は、一目で危険な存在だと認識できる。


「ハナ、もしかしてあれ……」

「はい、名刀ムラマサブレードです!」

「名刀っていうより妖刀じゃない!」


 冷静に考えてみれば、持ち主の元に動いていく刀がマトモなはずがなかった!

 どう考えても妖怪とかの系列だもんねそんな刀は。


「ではツバキ丸ちゃん一同、お入りください!」

「ヤバい予感しかせんでござるよ」

「拙者、ムラマサは持ち主を不幸にする刀と聞いた覚えが……」

「それは大量生産の結果、頭のおかしい奴も村正を使う確率が高かっただけでござるよ!」

「そうそう、人気商品故の僻みというやつでござるな」


 ツバキ丸ちゃんたちがぞろぞろと騒がしく宝物庫に入ってくる。

 これでおかしなことが起きれば実験は成功。

 逆にただ刀が32人を順番に斬り殺すみたいなことになれば、実験は大失敗だ。

 ……後者がおかしなことではないという認識こそがおかしいのだけど、今回はそういう目的だから!


 ツバキ丸ちゃんたちの入室に反応して、ムラマサがカチャッと音を立てる。

 ちゃんと反応はあった。

 問題はここからで、果たしてどうなるのか。


 ムラマサはゆっくりと立ち上がり、一本の棒のようにピタリとその場で停止する。

 私はそれを刀が停止したのだと思った。

 しかし、勘違いだったことを数十秒後に思い知る。


 刀が停止してしばらく、私はじっと刀を眺めていたのだけど、痺れを切らして、横に視線を逸らした。

 するとどうだろう、ツバキ丸ちゃんたちもまた停止していたのだ。

 それだけではない……妹もキュキュさんも完全に停止している。

 まるで時が止まったかのように。


「みんな? どうしたの!?」

 

 呼びかけても返事はない。

 ただ岩に染み入るだけだった。


 えっ……あっ! これ、フリーズ!?

 処理できない事態によって、世界が停止してしまった感じかな!?


 私は慌ててて、みんなの肩を揺さぶるけれど、石のように硬いその体はまるで動く気配を見せない。

 むしろ、私は何故動けているのだろうか。

 そして、ここからどうすればいいのか!?


「ピコーン エラーコードXXXX」


 急に背後から機械的な音が響く。

 私は驚きのあまり、飛び上がりながら振り向いた。


「ひゃっ!? だ、誰!?」

「要求されたタスク中にエラーが発生しました。処理を実行できません」


 停止した世界は完全な静寂を生み出していたのだけど、そこに謎の声が響く。

 私の頭上からやってきたそれは真っ白な四角い何かだった。

 しゃ、しゃべってるのこれであってるよね?

 作りが簡素すぎて発生してるかどうかも分からない!


「あの、ど、どなたでしょうか?」

「この問題を 秩序の神 に報告しますか?」

「秩序の神ですか!?」


 私の質問に答えたわけではないだろうけれど、奇跡的に欲しかった情報は知れた。

 私の悪魂による混乱を防ぐために消滅させようとする存在、それは魔界神からすると秩序の神々と呼ばれる存在らしい。

 そして、今、まさに私の目の前にいるそれが秩序の神……?


 いや、報告しますだから、秩序の神への連絡手段?

 というかこれ人間じゃなくて、エラーの時のメッセージみたいなやつだよね!?


「エラー報告を送信する(S) 送信しない(D)」


 謎の四角はそんな文章をその身に映している。

 無機質に書かれたその文字には謎の迫力があった。


 これPCで見たことあるやつだ!

 ということは、これを押すと秩序の神とやらにエラー報告が行くということ?

 それは……もしかしたらマズイかも。

 

 秩序の神に私の存在がバレたらその瞬間に私は消されるはずで、これを押すというのは、私への死刑宣告に近い可能性がある。

 まるで消しに来てと言っているようなものだ。

 けれど、押さないことにはこの世界が停止したままかもしれない。


 まあ、なら押すしかないか!

 私の命なんて、世界に比べればちっぽけだ。


「Sっと」


 私は送信するを選択する。

 すると謎の四角はパッと消えて、後にはまた静寂が戻ってきた。

 世界はまだ停止したままだ。


 妹にも相談なく決めてしまったけれど、果たしてこれで良かったのだろうか……。

 いや、これ以外手段が無かったんだけどさ!

 

 多分、このエラーは神々の元へ届けられたのだろうけれど、まだ世界の停止が直る気配はない。

 だ、大丈夫かな……。


「こんにちわー! こちらエラーのあった場所で合ってますかー!」

「うわっ! びっくりした!?」


 不安になりながら待つこと数分、またしても急に現れたのは謎のお姉さんだった。

 黒髪ロングで美人な見た目は良いものの、更になんと、キッチリとスーツとパンツを着こなしている。

 キャリアウーマン!?

 ここファンタジーな世界なのですが!?


「驚かせてすいません! 秩序の神です……って貴女! 探してた困ったさん!」

「えっ、あっ、はい、そんな感じかもしれません」

「探してたんですよー! ん? えっ!? ツバキ丸ちゃんなんか増殖してますね!?」

「すいませんうちの妹がやっちゃって……」

「なるほどこれが原因ですねー」


 お姉さんは私の存在と目の前の光景に驚きつつも、すぐに冷静さを取り戻す。

 そして、エラーメッセージを私に知らせた謎の四角いやつを虚空に呼び出し、何か操作を始めた。

 

「えっと、元の数に戻すのはちょっと問題がありますか……じゃあ、ここのイベントの方をちょっといじります!」

「な、なんとかなりそうですか?」

「はい! ちょっと時を戻しますね!」

「はい? と、時を?」


 その発言の直後、一瞬視界が暗くなる。

 そして気付いた時には……静寂は薄れ騒がしい光景が目の前に広がっていた。

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