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第15話 妹はあの手を使う

「でもループしないとお姉様は死んじゃうわけでそんなもんしょうがないですよ!」

「それはまあそうよね。アンジェラちゃんの命が一番だわ」

「い、いや、そんなもん呼ばわりしていいものでは……」


 かなり衝撃的な事実だったはずだけど、妹は開き直ったように、特に驚きもせず強気な姿勢を見せている。

 妹にしてみれば、そもそもどれだけ不利な条件があろうとも、ループしない選択肢はないらしい。

 そう、私が死ぬ限りは。


「むしろループを重ねていけば最強お姉様が生まれるのではないですかね!」

「私を勝手に最強にしないで?」


 早速悪いこと考え始めているし!

 この妹、反則技が好きすぎる。


「どこかでアンジェラちゃんの魂がすり減って消えてしまう可能性のほうが高いと思うわ」

「ということは、ループには回数制限があるんですか?」


 いくらなんでも無茶だったかと私が考えるよりも先に、妹は次の情報を求めて質問を重ねる。

 魂がすり減る=無限ではないまで思いつく速度が早すぎる。


「そうなのよねぇ……できれば今回の周回で決めてしまいたいわ。次のループはちょっと危ないかも」


 10回も繰り返されると、ループも無限に続きそうな気がしてくるけれど、どうやらそれは違うらしい。

 いや、理屈として魔界神の力があれば何度だって時間を巻き戻すこと自体は可能なのだろう。

 けれど、それに私の魂が追いつかない。

 恐らく、妹の精神も。


 しかし、これでどうせループするからという思考で捨て鉢になる作戦は潰えてしまった!

 ここからは作戦変更でいのちだいじにでやっていかなくては。


「妹も覚悟を決めました。あの手を使ってでもこの周回で終わらせてみせます」

「あの手って?」

「ヤバい手です」

「ハナが言うと滅茶苦茶ヤバそうね」

 

 自重などせずにループ知識を躊躇なく活用しまくるのが妹だと思っていたけれど、なんとそんな妹でさえ使いたくない手段が存在しているらしい。

 ツバキ丸ちゃんを盾にしてゴリ押したり、サキュバスの服を着て潜入までした妹が使いたくない手段って一体どんな地獄なの?

 もう本当に信じられないほどヤバいことになりそうなので、なるべくなら私は見たくないけれど、しかし、時が来たらどんな手でも使ってしまうのが妹だ。

 その時は諦めて、その手段とやらを見守ろう。

 

「一番の安全策はもちろん交渉なのですが、妹の考えでは秩序の神には心というものはないんですよね」

「そういうものなの?」

「割と当たっているわね。秩序の神は世界の平衡を壊すものを消す。その行動に感情はないわ」

「じゃあ本当にもう戦うしかないのね……」


 悲しいことにそれが結論のようだった、

 けれど、妹は私の問いかけに少し難しそうな顔をしている。

 一も二もなくイエス!と言うかと思ったけれど、そんな簡単な話ではないらしい。


「普通に戦っても勝ち目はないんですよね……」

「アルテヴァさんがいても?」

「ママパワーで何とかしたいのも山々なんだけど、私一人いてもどうにもならないわねぇ」


 アルテヴァさんは残念そうに肩を落としていた。

 ママとしては全てから娘を守ってあげたかったらしい……娘という立場を私受け入れ始めてるな……。


 しかし、魔界神がいても厳しい相手か。

 考えてみれば、魔界神も神の1人。

 〝神々〟の内に入る存在だ。

 単純に多勢に無勢、勝ち目が薄いのも当然の話だった。


「神々についての知識は妹も薄いのですが、とにかく理不尽なやつで、一瞬で全てを消し去ります。だから、もうほとんど、出会った瞬間負けみたいなものです」

「どうしようもなくない?」

「どうしようもないことなんてありません! 不可能なんてこの世に存在しないんです! 妹は考えました! あいつらが世界の平衡を守るなら、こちらは世界の外からやっちまおうと!!!」

「そ、外から?」

「そうです! 妹の作戦を聞く前に、お姉様、正直に答えて欲しいのですが……お姉様は実は違う世界から来てますよね?」

「にぇっ!?」

 

 妹は私の瞳を、その大きな双眼でじっと見つめがら、とんでもないことを言い出した。

 思わず変な声が出てしまう。


 わ、私の前世のことを知っていたの!?

 妹がこの世界についてもう10ループによって深い深い知識を持っているのは周知のことだったけれど、まさかそこまで知っているなんて!

 妹,もしや全知では?


「……その顔はやっぱりそうだったんですか」

「えっ!? か、カマかけられた?」

「実は半信半疑でした」


 もう妹が真剣な顔で言うので、全て知られていると思い込んでしまったけれど、流石の妹でも絶対の自信はなかったらしい。

 見事に引っかかってしまった……。

 私の前世の話をすると、自動的にこの世界がゲーム内だという話までしなければならないので、徹底的に避けていたのに!


「お姉様は前々から全てが他人事のような雰囲気がありましたし、ループを繰り返す中でおかしな態度や言動を見せることもあったので、そこから推測しました」

「普通、別の世界から来たなんて推測できないわよ?」

「妹はもうループという非常識を知っているので。それにあの手も知ってますから……」

「だからあの手ってなんなの!?」


 妹のいうあの手とは、世界の常識を疑うものらしい。

 そのことから、私が他の世界を知っていると推測したとすれば、あの手の正体も少し見えてきた気がする。

 怖いからなるべく考えないようにするけれども。


「ちなみにママも知っているわよ!」

「ああ、やっぱり……」

「拙者も知っている感じあるかもしれんでござるよ?」

「なんでそこで対抗しようとするの」

「うちはミリも知んないけど、魔界もある意味別の世界じゃね?」

「それは、まあ、そうね……」

「ママが元気ならそれでいい」

「いい子ねベルンちゃん……l


 何故か知ったかぶりしようとするツバキ丸ちゃんと愛らしい娘は置いておくとして、魔界で過ごしたキュキュさんは別の世界程度で驚くことはないらしい。

 アルテヴァさんはまあ、そうでしょうねって感じ!


「それで世界の外側から攻めるってどう言うことなのハナ」


 話が横道に逸れ始めたところで、再度妹を問いただすと、妹はむんずと何かを掴んで私にそれを見せる。


「それはですね……ツバキ丸ちゃんを活用しようと思います」

「……何を活用するっていった?」

「ですから! ツバキ丸ちゃんです! これです!」

「えっ? 拙者!?」


 妹は襟首を掴んで子猫のようにツバキ丸ちゃんを見せつける。

 急に掴まれたツバキ丸ちゃんは虚をつかれて、まん丸な目で驚いていた。


 ……いや、み、見せられてもって感じだけど、えっ、ツバキ丸ちゃんをどう活用するつもり!?

 

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