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第14話 妹は真実を知る

「この短期間で母と妹と娘を得るとはアンジェラ殿は流石でござるな」

「もうほとんどコンプリートじゃん!」

「母と妹は最初から得ているはずなんだけどね?」


 そもそも何をどうすればコンプリートなのかも分からないからね!

 母、妹、姉、娘が揃うと女系ボーナスみたいなのが入るの?

 だったらもう私、姉だから揃ったみたいなものだよ。


 現実逃避気味にアホな話をしていると、妹が背後から声をかけてくる。

 その声は少し真剣で、魔界神を前にして流石に緊張した雰囲気が伝わってくる。


「お姉様、魔界神は基本的には神らしく大らかな性格をしているのですが、怒ると一息で国を滅ぼせる存在です」

「もはや災害を超えているわね……」

「妹の初見時はもうぶちギレていて、お姉様を求めて世界滅ぼしていました……恐らく、封印の期間が長ければ長いほど怒りが溜まっているんだと思います。今回、速度を重視してた理由の一つです」

「魔界神を仲間にするために急いでたの? すごい考えね」


 妹が速度を求める理由は効率を追い求めた結果かと思っていたけれど、どうやらそれにはもっときちんとした理由があったらしい。

 全ては魔界神のためだったのか。

 つまり、妹は最初に私を仲間にしたあの瞬間から、魔界神に出会うまでの道筋を計画していたことになる。

 なんという計画性の高さか!

 言動は基本馬鹿っぽいのに!


「神々打倒には魔界神の協力は必須です! だから妹にとって、冒険はここからが本番と言えます。ここまでは見知った道を選んで来ましたが、ここからは完全に未知です」


 文字通り巨大な力を持つ魔界神。

 神々と戦うならば、確かに最低限彼女くらいの戦力は必要なのかもしれない。

 しかし、これは1つの賭け。

 魔界神を仲間にするなんて、どう足掻いても無茶苦茶なのだ。


 無茶なのだけど……私はこの事態で少し冷静になっていた。

 だって、時を繰り返すことが可能な妹がいるのだから、失敗してもダメージは少ない。

 私の仕事は、ならば次のループのために多くの情報を集めること。

 

「ま、魔界神さん? あの、私がアンジェラです!」


 意を決して魔界神に話しかけると、彼女は巨大な顔をズズッと動かし、私の方へ瞳ギョロリと向ける。

 どんなモノでもそうだけど、美人でも大きいものって怖い!


「あぁはぁー! そこにいたのね! アンジェラちゃん! 貴女のママのアルテヴァよ」

「アルテヴァさん……ど、どうもー」


 しっかり会話しなければならないのだけど、やっぱり気圧されてしまう。

 そもそも私は会話が苦手だからね!


 何十年も嫌われ令嬢やってたんだから、人と会話なんてほとんどまともになってこなかった。

 でも頑張らないと……!


「ママって呼んでちょうだいね! 口調ももっと砕けた感じで! 貴女のことはずっと見ていたのだけど、こうやって会うのは初めてだわ! ママ嬉しい!」

「み、見てたの!? いつから?」

「最初からよ!」


 最初からって……だからいつからですか!?

 赤ん坊の頃からってことなのか、それとも……それとも前世から?

 後者だとしたら恐怖の極みだけど、目の前の魔界神という存在ならあり得る。

 どう考えても常識が通じる相手ではないからだ。

 

「あっ、もしかしてママ大きすぎて怖い? ごめんなさいねぇ……今、小さくなるわ」


 顔を青くする私を見て、アルテヴァさんは慌てたようにそう言うや否や、シュルシュルと絹が解けるようにその身を縮めて行く。

 気が付けば目の前には2mほどの身長の女性が立っていいた。

 ……それでもでかい!


「すいません、お姉様の妹なのですが、私は娘には当たりませんか?」


 妹は割と革新的な質問をアルテヴァさんに投げかける。

 常識的に考えれば娘の妹も娘のはずなのだけど……。


「あら? 貴女はハナね? 娘のために色々とありがとうねぇ。娘ではないけれど、感謝するわ」

「娘ではないんですね! 了解しました!」


 やはり魔界神の考えは常識とは違うようだった。

 妹も分かってはいただろうけれど、私の血縁であっても娘ではないらしい。

 本当に魂だけで見ているんだなこの人。


「それで秩序側の神々がアンジェラちゃんを消しにくるのよね?」


 アルテヴァさんは最初から見ていたと言うだけあってこちらの事情にも詳しい。

 それ自体は普通にありがたい話だ。

 全て知られているのは、まあ、怖いんだけど……。


「神は話が早いでござるな」

「マジ神って感じだわ」

 

 ツバキ丸ちゃんとキュキュさんは他人事のように適当を言っていた。

 神に対して神って褒め言葉を使う人は初めて見たかも。


「はい、妹の予想では3年目を過ぎると神々が降りてくる感じです」

「あと3年近く猶予はあるってこと?」

「……もっと早くやってくる可能性もあるので、何とも言えないんです。特にこうやって魔界神と接触してると、神々がやってくる可能性が高まる気もします」


 その言葉は妹にしては珍しく歯切れの悪いものだった。

 神々の動向は妹をもってしても完全に把握できるものではないらしい。

 まあ、9ループ目で神々と初接触したような話だから、そもそも情報収集する時間もなかったかもしれない。

 

 けれど、突貫の考えにしては3年目というのは分かる話ではある。

 要するにゲームが終了した後、常に私が神々に消されていると思えば、だいたいそんな感じになるだろう。


「その前にアンジェラちゃんに言っておかなきゃいけないことがあるの」

「なんですか?」


 ずっと自信満々、喜色満面で話していたアルテヴァさんの顔が曇る。

 魔界神が顔を曇らせると、なんかすごいヤバいことを言いそうで滅茶苦茶不安になる自分がいた。

 もう何もかもスケールがデカそうだもの。


「ハナにも聞いて欲しいのだけど……この世界の時を巻き戻していたのは私なの」

「えっ、ええ!?」

「……やっぱりそうでしたか」


 驚愕する私に対して、妹は落ち着いた表情で頷いている。

 ループの元凶は何とこの目の前にいる自称ママこと魔界神アルテヴァさんの仕業らしい。


 確かに、時を戻す存在なんて神以外に思いつかないし、私に協力してくれる神なんて、魔界神くらいだろう。

 考えてみれば当然の理屈なので、妹はあたりがついていたらしい。

 私はもうループしているのは理由とかなくそういうものだとばかり思っていた。

 流石に頭が悪すぎたかも……。


「で、でも、単純に私の記憶を残したまま巻き戻せば良かったのでは?」

「それはねアンジェラちゃん、時を何度も何度も繰り返したら普通は精神が壊れちゃうの。だから一番心の強いであろうハナに全て託したのよ」

「な、なるほどー……」


 私の心ではループで心が持たないと判断されたらしい。

 そしてその考えは正しいと言わざるを得ない。

 私では到底、妹のようにたった9回のループで魔界神まで辿り着くようなプレイは不可能だ。

 その前に全てを諦めてしまうだろう。


「そして最大の問題は、ループを繰り返すうちに、アンジェラちゃん、貴女の悪魂が強力に成長してしまっていること」

「どういうことですか?」

「つまりループすると普通は全て元に戻るはずなのだけど、悪魂はその強固な性質から戻らずにこの10ループの間、ずっと成長し続けてしまったの。そのせいで、貴女は神々に目を付けられる羽目になったわ」

「神々が来るのはループのせいなんですか!?」


 つ、つまり、私の魂は巻き戻ることはせずにずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと成長し続けて、だから神に危険視されたということ!?

 最初からすごい魂だったんじゃなくて、10ループ目の今だからとんでもない悪魂になっていたなんて。

 それはなかなか盲点な話だった。



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